明確に、簡潔に

米国特許翻訳社が守る7つの「C」(3) Clear、(4) Concise

明確に、簡潔に。


米国特許翻訳社では、技術的な正確性(clearness)に加えて、良い英文のための基本である、「明確である(clearness)」ことと「簡潔である(conciseness)」ことを次のようなやり方で実践しています。

  1. 原則として時系列で書く(「古い情報→新しい情報」とする。文章が定冠詞“The”で始まるようにする)。更に詳しく。
  2. 代名詞をできるだけ使用しない。使用する時は、それが何を示すのかが100%明確に分かる場合だけにする。更に詳しく。
  3. 文の構造をシンプルにする。更に詳しく。
  4. 冗長な表現をできるだけ避ける。更に詳しく。
  5. 関係代名詞は先行詞の直後に置く。何が先行詞かが100%明確に分かるようにする。

 

明確性(Clearness)と簡潔性(Conciseness)のためのポリシー(1)
―原則として時系列で書く―


米国特許翻訳社では、原則として、「古い情報→新しい情報」の順番になるように英文を構成しています。

「古い情報」とは、明細書中で既に記載(説明)した情報で、作成者と読者の間で共通の認識となっているものです。これは定冠詞“the”で始められることが多いものです。

「新しい情報」とはその逆で、明細書の現段階でまだ記載(説明)されておらず、これから説明しようとしている事柄です。

定冠詞“the”を使った「古い情報」で文章を始めて、それから「新しい情報」に入っていった方が文章として自然で、読者(審査官)が理解しやすいことは明らかなため、当社ではこの方針を常に念頭に置きつつ英文明細書作りをしています。

日本語明細書の原文をそのまま何気なく英訳すると、次の例のように「新しい情報→古い情報」という英文構成になってしまうことがよくあります。

原文例1:
ここで、上記第1リンク26にはボス22を初期位置に移動するためのバネ34が取り付けられている。

ありがちな「新しい情報→古い情報」の訳例::
Here, a spring 34 that moves the boss 22 to an initial position is attached to the first link 26.

“a spring 34”という新しい情報が、“the first link 26”という古い情報の前にきてしまっています。これで悪いというわけではないですが、次のように「古い情報→新しい情報」にした方が理解しやすく、読者 である審査官が受ける印象もいいと思います。

米国特許翻訳社訳例:
The first link 26 has a spring 34 to move the boss 22 to its initial position.

この当社の訳例では、“The first link 26”という古い、既知の情報が先にきています。

同じように、次のような請求項(クレーム)も「古→新」の考え方で訳します。

原文例2:
前記Aの温度が100~150℃であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。(注:「温度」は初出)

ありがちな「新→古」の訳例:
The device according to claim 1, wherein a (the) temperature of the A is 100 to 150℃.

これも「新→古」の訳例と言えますが、「新」の部分が「温度」という、ある要素に潜在的に備わっているもの(inherent characteristic)になっています。このような場合は、初出であっても定冠詞”the”を使って”the temperature”のようにしてもよいとされています(MPEP2173.05(e))。

しかし、初出で”the temperature”とすると、審査官によってはこの”the”がLack of Antecedent Basisとされる場合があり、オブジェクションの対象となる可能性があるため、当社では次のように「古→新」の原則にしたがって訳しています。

米国特許翻訳社訳例:
The device according to claim 1, wherein the A comprises a temperature of 100℃ to 150℃.

ただし、「古→新」の原則にはもちろん例外もあって、すべてに適用できるわけではないので、次の例のように臨機応変に対応しています。

原文例3:
次に、前記混合物に有機溶媒を加える。

無理に「古→新」にした訳例:
Next, the mixture is added with a solvent.

当社の知る限り、”be added with”という表現は存在しません。このような場合は、「古→新」ではなく、次のように「新→古」でも違和感はないのではないかと思います。

米国特許翻訳社訳例:
An organic solvent is then added to the mixture.

 

明確性(Clearness)と簡潔性(Conciseness)のためのポリシー(2)
―代名詞をできるだけ使用しない―


米国特許翻訳社では、明確な表現をとことん追求しています。そのために、次のように請求項(クレーム)では代名詞を絶対に使用せず、明細書本文においても代名詞を極力使用しない、というルールを作っています。

原文例1(クレーム):
前記クローラ本体内に埋入されたクローラ幅方向に一対の翼部

少し分かりづらいかも知れませんが、クローラ(ショベルカーなどの走行装置のベルト部分)の本体内に、一対の翼部が、クローラの幅方向に延びるように設けられている、という構造です。

blades

一般的な翻訳者(翻訳会社)は、大体次のように訳します。

実際に「プロ」が訳した例:
a pair of blade portions buried in the crawler main body such that it is extended in the width direction of the crawler.

この訳では、”it is extended”の“it”が“a pair of blade portions”と“the crawler main body”のうちどちらを指すのかが不明確になっています。

当社では、代名詞を使わずに、例えば次のように書きます。

米国特許翻訳社訳例:
a pair of blades, in the crawler main body, oriented along a width of the crawler

原文例2:
走行枠11の前後の駆動輪12と従動輪13とに跨がって弾性クローラ14が巻き掛けられている。

これは明細書本文の実施形態の記載で、ここでは、「走行枠11」のみが既出で、その他の要素12、13、14は初出とします。

実際に「プロ」が訳した例:
An elastic crawler 14 is wound around a driving wheel 12 and a driven wheel 13 located on front and rear ends of the traveling frame 11 such that it is stretched therebetween.

この訳も、“it”と“therebetween”が何を指すのかが不明確になっています。

当社では代名詞を排除して、次のようにします。

米国特許翻訳社訳例:
The traveling frame 11 includes a driving wheel 12 and a driven wheel 13. The driving wheel 12 is disposed at the front end of the traveling frame 11, while the driven wheel 13 is disposed at the rear end of the traveling frame 11. An elastic crawler 14 is looped across the driving wheel 12 and the driven wheel 13.

この当社の訳例のように、明確な表現を追求すると、原文が一文であっても、その訳文は複数文になる場合がよくあります。こうなると当然、訳文の量が増えるという現象が起きます。

しかし、訳文が複数文になったとしても、訳文の一文一文が簡潔・明快に記載してあれば、全体として非常に読みやすい英文明細書となると思います。

 

明確性(Clearness)と簡潔性(Conciseness)のためのポリシー(3)
―文の構造をシンプルにする―


日本語の特許明細書は、一文が大変長くなる場合があります。これをそのまま英訳すると、とてつもなく長い英文になって、読んでいる途中で意味が分からなくなり(読む気がなくなり)、日本語原文と照らし合わせながらでないと理解できないことがよくあります。

米国特許翻訳社では、このように「文章の長さ」まで忠実に英訳するのではなく、日本語の意味を正確に噛み砕いて、短くシンプルな構造の英文にし ています。こうすることで、明確で読みやすい英文となり、読者(チェック担当者)が日本語と照らし合わさなくても、英文だけで明確なイメージがつかめるよ うになることを目指しています。

さらに言うと、同じ発明でも、日本語明細書よりも英文明細書で読んだ方が理解しやすくなることを目指しています。

実際、米国特許庁(USPTO)の審査官は英文の明細書しか読まない(読めない)ため、審査官が読んではっきりと意味がつかめる英文明細書を作ることが、翻訳会社として当然の仕事ではないかと米国特許翻訳社は考えています。

また、欧州特許庁(EPO)では、英語を母国語としない審査官の割合が高いといわれており、このような状況を考えても、シンプルな構造の英文を使用することが重要ではないかと思われます。

具体的には、次の例のようにシンプルな構造の英文を心がけています。

原文例:
プラグインハイブリッド車1には、ハイブリッドビークルECU2、エンジンECU4、ブレーキECU9、防盗ECU6等の複数のECUが搭載されている。

これは複雑な文章ではありませんが、一般的な翻訳会社に翻訳を依頼すると、大体次のように翻訳されてきます。

実際に「プロ」が訳した例:
In the plug-in hybrid vehicle 1, a plurality of ECUs, such as a hybrid vehicle ECU 2, an engine ECU 4, a brake ECU 9, a theft prevention ECU 6, and the like, are mounted.

文章の最後の最後にやっと動詞“are”がきて非常に分かりにくい訳文となっています。また、「防盗ECU6等」の「等」につられて、 “such as”の最後に“and the like”や“or the like”をつけることは正しい用法ではないとされています。

当社は例えば次のように訳します。

米国特許翻訳社訳例:
The plug-in hybrid vehicle 1 includes a plurality of ECUs such as a hybrid vehicle ECU 2, an engine ECU 4, a brake ECU 9, and a theft prevention ECU 6.

翻訳会社は、新規性(米国特許法第102条)や進歩性(第103条)に関してどうこうすることは難しいと思います。しかし、明確性(definiteness)に関する第112条第2段落に基づく拒絶理由は、翻訳会社の努力次第で回避することができると考えています。

米国特許翻訳社では、この第112条第2段落に基づく拒絶理由を出さないことを一つの理念として英文クレームを作成しています。

 

明確性(Clearness)と簡潔性(Conciseness)のためのポリシー(4)
―冗長な表現をできるだけ避ける―


米国特許翻訳社では、スッキリとして読みやすい英文明細書づくりをしています。このような英文明細書は審査官への印象もよく、迅速な特許付与につながる、という信念を持っています。この信念のもと、冗長な表現や回りくどい表現はできるだけ避けるようにしています。

原文例:
紡糸パック本体は、その内部を洗浄する等のメンテナンスを行うため、加熱箱体に取り付けられる連結部材から取り外しできる構成となっている。

これを訳した次の例は、10年以上プロとして特許翻訳をしているある訳者が実際に訳した例です。

実際に「プロ」が訳した例:
The spinning pack body is configured to be able to remove the spinning pack body from the link member attached to the heating barrel so that the maintenance of washing the inside of the spinning pack body and the like is performed.

この訳は、原文と照らし合わせてみると特に誤訳もないため、一般的な翻訳会社でのチェックでは問題ないとされて「素通り」し、クライアントに納品されるかもしれません。

しかし、英文だけをよく読んでみると、“spinning pack body”が無駄に2回登場したり、何から続いているのか分かりづらい”and the like”が添えてあったりして、大切な読者である審査官に非常にストレスを感じさせるのではないでしょうか。

当社なら、例えば次のように訳します。

米国特許翻訳社訳例:
The spinning pack body is removable from the connector attached to the heating barrel in view of maintenance such as washing the interior of the spinning pack body.

このように当社では、英文明細書作成の際に「無駄」は徹底的に省いてスリム化し、原文作成者のが言いたいことを的確に「ズバッ」と表現できるように努めています。

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