当社にしかできないことをやる

先日、会社の第6期決算が終わりました。決算書は会社の1年間の通知表のようなものだと思いますが、新しい決算書を見る度にいちばん感じることは、ずっと仕事を依頼し続けてくれているクライアントへの感謝です。世の中には、優秀な翻訳者はたくさんいると思います。実際、私が過去に行った特許翻訳セミナーの受講者のなかにも、非常に上手い特許翻訳をする人が何人もいました。当社は特許翻訳がもっともっと上手くなりたいと思い日々研究していますが、それは他の会社も同じだと思います。そういったなかで、当社を選んで依頼してくれるクライアントには感謝しかありません。

正直に言って、現在のクライアントから当社のどこが評価されているのかははっきりとは分かりません。ただ、これまで、当社にしかできないことをやりたいと思いながら活動してきました。特許翻訳のサービスを行う会社が世の中に既に氾濫していたなかで創業した当社にとって、他との差別化こそが生きる道だと思ったからです。これからは、この差別化をもっと進めていくとともに、当社を支えてくれる「米国特許翻訳者」の育成にこれまで以上に力を入れていこうと思っています。

メールを送るときは一番伝えたいことをタイトルにする

methodbusinesswriting

『ABSTRACTを150ワード以内にまとめる』(http://beikokupat.com/blog/?p=1051)において、一番重要なことを見極めて短くまとめるということを書きました。この作業の練習を兼ねて日頃からできることがあります。それは、メールを送るときに、一番伝えたいことをタイトルにすることを心がけて実践することです。これは、私が過去に行ったセミナーでも紹介したことがあります。メールのタイトル部分を短く書くということは誰でも実践していることだと思いますが、多くのメールはタイトルに件名だけが書かれていて具体的な内容は本文を見なければ分からなくなっており、忙しい人への配慮のないものになっています。これを、短いのはそのままにして、一番伝えたいこと(結論とも言えます)をタイトル部分に書くようにします。これにより、メールの受け手はタイトルを見るだけで本文の大体の内容を掴める上、上記のように、一番重要なことを見極めて短くまとめるという、米国出願用の明細書翻訳を行う人にとって必要なスキルを身につける練習にもなります。

非常にシンプルな例を見てみます。仕事で取引先の担当者に会いに行くことになり、その日時を担当者にメールで伝える際、メールのタイトル部分に例えば「11月10日14時に御社に伺います」と書きます。これを、「御社訪問の件」などと書くと、担当者は本文を見なければ相手がいつ来社するのか分からない状態になります。また例えば、私の会社のトライアルを受けてくれた人がいて、その人に審査結果をメールで伝えるとすると、タイトル部分に「トライアル審査結果のご連絡」などと書いて勿体ぶらずに、「トライアル合格のご連絡」のようにストレートに書くかも知れません。

これをもっと複雑なサンプルを使って、しかも英文で練習できるという素晴らしい本があります。『メソッド方式 英文ビジネスライティング完全マニュアル』という本で、この本には、一番重要なことを見極めて短くまとめる方法の説明と、英文で行う練習問題が載っています。また、この本はエンジニア向けに書かれたものらしく、工学系の題材がふんだんに使われており、特許翻訳者や知財関係者にとっては馴染みやすいのではないかと思います。その他にも、この本には関係代名詞のthatとwhichの使い分けや三段論法など、英文ライティングの基本が詰め込まれています。

ABSTRACTを150ワード以内にまとめる

日本語で書かれた基礎明細書に添付されている要約書を米国出願用のABSTRACTに翻訳する際、私の会社では、クレーム1の内容をABSTRACT用の形式に書き直したものをABSTRACTに記載しています。ABSTRACT用の形式の基本的なルールは『要約書の書き方』(https://goo.gl/n8GhBJ)に書いてある通りですが、そのなかでも「150ワード以内」というルールが最も有名だと思います。私の会社でも、もちろんこの150ワードルールを守りつつ上記作業を行っていますが、クレーム1の長さによっては、150ワード以内にまとめるのがなかなか難しいときがあります。つまり、クレーム1の長さが150ワードを大幅に超えているような場合、これをどのように150ワード以内にまとめるのか、という問題に直面します。このような場合でも、私の会社では必ず150ワード以内にまとめています。

具体的な方法としては、当たり前かもしれませんが、クレーム1のなかで一番重要と思われる限定を残し、これとは直接関係ないと思われる限定を削除してワード数を減らす、という方法を採用しています。この作業は、何が一番重要なのかを見極めることが必要になってくるため、発明の本質を理解できていることが前提となり、作業者の腕の見せどころとも言えます。また、どの限定を中心にまとめたのかを納品時にコメントするようにもしています。また、当たり前ですが、このようにまとめたABSTRACTの内容がクレーム1の内容と矛盾するようなことがないように注意しています。ABSTRACTは、クレーム解釈の際に重要視される内部証拠として参酌される可能性があるためです。そういう意味では、ABSTRACTを150ワード以内にまとめるという作業は責任重大な作業と言えます。

なお、「150ワード以内」であっても、例えば149ワードなどの150ワードに近いぎりぎりのワード数にはせず、できれば140ワード前後にしています。これは、方式審査に一貫性がないことを想定して、149ワードなどが目視で150ワードを超えているように判断され、いわれのないオブジェクションが発せられるのを避けるためです。

「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」の英訳は意外と難しい

複数の実施形態が記載されている特許明細書において、「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」といった説明が書かれていることがよくあります。この表現には様々なパターンがありますが、どれも英訳するとなると意外と難しく、時間がかかることがあります。私はこのような場合、多くの特許翻訳者がそうしているように、例えば以下のようにインターネットから英文例を拾ってきて、使えそうな表現の断片同士を組み合わせて意味の通る英文に再構築するという作業をしています。英作文上達の王道は英借文と言われますが、この場合はまさにそうだと思います。

It is to be noted that like reference numerals designate identical or corresponding components throughout the drawings.
https://www.google.com/patents/US9747982

… in which identical reference numerals are used to denote identical or substantially identical components between the first and second embodiments.
https://www.google.com/patents/US7267112

It should be noted that in the detailed description that follows, identical components have the same reference numerals, regardless of whether they are shown in different embodiments of the present invention.
http://www.freepatentsonline.com/y2017/0309416.html

The use of the same reference numerals indicates similar, but not necessarily, the same or identical components.
https://goo.gl/L7Fifb

Referring now to the drawings, wherein like reference numerals designate identical or corresponding parts throughout the several views, FIG. 1 illustrates an embodiment of a monitor system 100.
https://www.google.com/patents/US9699958

「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」などは、翻訳者にとって英訳にあまり時間をかけたくない部分かも知れません(【図面の簡単な説明】などもそうかも知れません)。しかしそのようなところであっても、しっかりと調べ考えて英訳したいと私は思っています。また、このように心がけているため、他の翻訳者が英訳したものを見ると、重要度が低いと思われる部分であってもしっかりと調べ考えて英訳されているかが分かり、その人の力量や仕事への姿勢が分かります。

なお、「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」は、「重複する説明を省略する」や「更なる説明を省略する」などの表現とセットになっていることがありますが、英語では、これらをセットにすることはあまりないようです。私は「説明を省略する」にピッタリの英文は”… will not be elaborated upon (here)”だと思っていますが、これは、「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」の文脈で使われるよりも、「この技術は周知のため詳述しない」といった文脈で使われるのをよく見ます。

Such interfaces are well known in the art and therefore will not be elaborated upon here.
http://www.google.com.pg/patents/CA2331221A1

Details of disk 10 will not be elaborated upon, as they are well known in the art.
http://www.google.tm/patents/US6771588?cl=en

All other components in the circuitry illustrated in FIG. 2 should be relatively obvious to one skilled in the art and will not be elaborated upon.
https://www.google.ch/patents/US4101844

ちなみに、以下は、日本語で書かれた基礎明細書を英訳したものと思われますが、2文目冒頭の”Therefore”に強烈な違和感を覚えます。

The overview and internal structure of the digital camera according to the present embodiment are identical to those of the digital camera according to the first embodiment. Therefore, they will not be elaborated upon further here.
http://www.google.sr/patents/US20080088733

1文目には、本実施形態のdigital cameraの概要と内部構造は第1実施形態のdigital cameraと同じだ、と書いてあります。2文目には、両者は同じだから、本実施形態での説明は省略する、と書いてあります。しかし、両者は同じだから後の方の説明を省略する、は意味が通らず(両者が同じだとなぜ後の方の説明を省略するのか?)、2文目を”Therefore”で始めるのは不自然だと思います。これが仮に「既出だから説明を省略する」なら意味が通るかと思いますが。「同一の構成要素には同一符号を付し・・・」から話が逸れますが、上記”Therefore”は、日本語の「したがって、」や「~のため、」をそのまま英語にしたものかも知れません。「そのまま英語にする」ことの弊害が分かる一例です。

『下町ロケット』のTBS版とWOWOW版

shitamachi

テレビドラマ『下町ロケット』は、“Flash of Genius”(http://beikokupat.com/blog/?p=848)とともに、特許が重要テーマになっている数少ないドラマの1つで、TBS版とWOWOW版とがあります。先日、WOWOW版を初めて観ました。数年前に放送されたTBS版を観てハマり、WOWOW版も観たいとずっと思っていました。TSUTAYAでDVDを全話分借り、先週のバリ島旅行のときに移動中の飛行機内で観ました。TBS版は、演技や演出を大げさにしてエンターテイメント性を出しているような印象でしたが(これはこれで面白かったですが)、WOWOW版は、よりシリアスな社会派ドラマとなっています。主人公の社長・佃航平の性格も対照的で、TBS版では熱血漢であるのに対し、WOWOW版では内省的な印象を受けました。本来根暗な私にとっては、どちらかというと後者の佃航平の方が親しみがもてたように思います。また、WOWOW版は、TBS版と違い、ロケットエンジンのバルブシステムを開発するロケット編のみが描かれ、心臓弁を開発するガウディ編は描かれていません。私が知る限り、WOWOW版はAmazonビデオで視聴でき、TBS版はhuluで視聴できます。

shitamachihulu

同じホテルチェーンに泊まり続ける

IMG_20171008_111051

バリ島に行ってきました。島内にあるアグン山という火山が噴火するかも知れないという外務省からの注意喚起があり(http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C201.html)、旅行のキャンセルが相次いだようですが(https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092700891&g=int)、旅行者が減って穴場になれば喜ばしく、また噴火したらしたで面白い経験になるだろうと思い、自己責任で旅行を強行しました。幸い滞在中の噴火はありませんでしたが、初日は空港周辺が悪天候で、乗っていた飛行機がなかなか着陸できず、空港上空を1時間以上旋回するという別の面白い経験をすることができました。

私は、海外旅行するとき、週末に連泊すると1泊分が無料になるという、いくつかのメジャーなホテルチェーンが採用している制度を利用しています。今回もこの制度を利用しました。以前は、ホテルの宿泊代を比較できるサイトをチェックしてできるだけ安く泊まれるホテルを探していました。しかし今は、気に入ったホテルの会員になり、国内・海外を問わず、どこに行ってもこのホテルチェーンを利用しています。会員になることで上記制度を利用できる上、泊まれば泊まるほどロイヤルティーが評価されてポイントの還元率が高くなり、長期的に見て安上がりになることが分かりました。

IMG_20171008_112215

IMG_20171008_160218

IMG_20171008_081929

IMG_20171008_175122

IMG_20171008_084528

IMG_20171008_084647-EFFECTS

米国特許法の学習者は持っておきたい辞書

eibeihou

『第3回:米国特許法の基本~事実問題及び法律問題~』(http://beikokupat.com/us-patent/number3/)において、『英米法辞典』(東京大学出版会、田中英夫編集)を使って「コモン・ロー」などの法律用語が解説されています。『英米法辞典』は、米国特許法の学習者向けに推奨されることが多い辞典の1つで、私も1冊持っています。「コモン・ロー」「エクイティ」など、普通の辞書の定義ではよく分からないような法律用語が非常に詳しく解説されており、この辞典を持っていると、日々の仕事をやっていく上で頼れるものがあるという安心感があります。

法律について「知らないことを英語で知る」ために、英語で書かれた法律辞典も手元に置いています。私が持っているのは、「Black’s Law Dictionary」という辞典の卓上版です。これも『英米法辞典』同様に解説が詳しく、定義をさっと調べるというよりも、じっくりと読む類いのものです。カバーする用語の範囲も広く、例えば、pre-AIAの§102(b)などに対して使われる”statutory bar”が載っている辞典は、私が知る限り「Black’s Law Dictionary」(卓上版)だけです。

メールを送るときは自分宛てにBccする

mail-1454731_640

私は、誰かにメールを送るとき、必ず自分宛てにBccをする(Bccのところに自分のメールアドレスを入れる)ことにしています。こうすると、自分が送ったメールが自分の受信トレイにも届きます。そして、同じ相手に続きとなるメールを送るときに、Bccで届いた自分のメールから「全員に返信」で送ります。こうすると、このメールは相手に届き、自分にもまたBccで届きます。そして、相手に届くメールの下には、1つ前の自分が送ったメールが履歴として残っている状態になります。こうすることで、自分と相手とのメールのやり取りをすべて残すことができ、相手が書いたメールはもちろん自分が書いたメールも1通も漏れることなく完全な履歴を残すことができます。このような完璧な履歴を残すことの最大のメリットは、メールのやり取りの途中から第三者が加わったときに、その第三者が完璧な履歴を最初から読むことで、これまでの状況を把握しやすくなることだと思います。また、何年か前のメールのやり取りを読み返すようなときには、自分が書いたメール内容を覚えていないこともよくあり、そんなときに完璧な履歴があれば助かります。

自分のメールアドレスを毎回Bcc欄に記入するのは面倒なので、自動的に自分宛てにBccされるように設定しています。私が使っているメールソフトThunderbirdで説明すると、「メニュー→ツール→アカウント設定」と進み、「送信控えと特別なフォルダ」画面を表示します。この画面の中にある「次のメールアドレスをBccに追加する」にチェックを入れ、自分のメールアドレスを記入してOKをクリックします。これで設定完了です。「次のメールアドレスをBccに追加する」ではなく、その上にある「次のメールアドレスをCcに追加する」にしてもいいと思います。

第3回:米国特許法の基本~事実問題及び法律問題~

連載・米国特許法解説_03

連載『米国特許法解説』を更新しました。
http://beikokupat.com/us-patent/number3/

この前の週末に著者の小野康英先生から原稿を受け取り、日曜日の大半を使って読みました。事実問題(matter of fact)、法律問題(matter of law)についてここまで詳しく解説している書籍やサイトは他にないのではないかと思うくらいの詳しい解説になっています。

『米国特許法解説』は、英文明細書マニュアルに関する記事のような「即効性」のある記事と違い、じっくりと何度も読み返したい解説だと思います。そのため、ブログ形式ではなく、専用のページを設けて公開しています。

やる気の出る映像

coffee-2351440_640

朝の情報番組で、司会をしている女優さんが高卒資格の取得を目指し、高卒認定試験の受験勉強をして合格するまでを追った特集が放送されていました。この方は、宝塚音楽学校から宝塚歌劇団を経て女優になり、その間、高卒資格がないことで自分の中で穴が開いているように感じていたそうです。そして53歳になったいま、その穴を埋めようと思い立ったということでした。毎朝の番組司会やドラマ撮影などで超多忙ななか時間を見つけて塾に通い、漫画喫茶で自習をする姿が非常に印象的でした。高卒資格に必要な8科目のうち、今回は5科目を受け、すべて合格されていました。手を抜けない本業をこなしながらの受験準備は並大抵のことではなかったと想像されます。結果通知を見て「すごくないですか」と自分で言っておられましたが、私もそう思います。いい根性を見ることができました。やる気の出る映像として録画しておけばよかったと後悔しています。