アメリカ法を学ぶ

ハーバード・ロースクールのソクラティック・メソッドが見れる映画『ペーパーチェイス』

丸田隆著『現代アメリカ法入門 アメリカ法の考え方』(http://beikokupat.com/blog/?p=703)に、何とも興味をそそられる映画が紹介されていました。「毎年の恒例行事のようにキャンパスで上映され、新入生は、新しく始まるロースクールの授業に何ともいえない不安を抱く」(p. 18)。ハーバード・ロースクールを描いた映画『ペーパーチェイス』がそれで、早速DVDを注文して観てみました。

この映画でいちばん印象に残ったのは、キングスフィールドという強烈なキャラクターをもった教授で、実際、この映画はキングスフィールド教授と彼が行うソクラティック・メソッドで非常に有名とのことです(ソクラティック・メソッド:「教員は、事案(case)について批判的な思索を刺激する一連の質問を学生に矢継ぎ早に発して、多様な争点について自分の考えを瞬時に組み立て、同時に返答することを学生に求める」『現代アメリカ法入門』p. 18)。キングスフィールド教授が学生を指名し、ブリティッシュ・アクセントで次々と質問を投げかけていくシーンが映画の多くを占めます。すごく面白いので是非観てくださいとは決して言えませんが、ハーバード・ロースクールの壮絶な授業と試験の様子を見てみたい人にはオススメです。

ハーバード・ロースクールの関連でいうと、『推定無罪』の著者Scott Turowがハーバード・ロースクールで過ごした1年間を描いた『One L: The Turbulent True Story of a First Year at Harvard Law School』というノンフィクション作品があります。

また、学生がロースクールで格闘する様子を生々しく描いた作品としては、服部健一先生の『日米特許戦争の狭間で―米国特許弁護士・パートナーへの3000日』は上記作品群に負けていないと思います。

コッポラ監督『レインメーカー』

先日ご紹介した『現代アメリカ法入門 アメリカ法の考え方』(http://beikokupat.com/blog/?p=703)には、法律にまつわる映画がいくつか紹介されています。そのうちの1つである『レインメーカー』という法廷映画を週末に見ました。原作ジョン・グリシャム、監督フランシス・フォード・コッポラ、主演マット・デイモンという、面白くないわけがないだろうと思わせるような組み合わせですが、本当に面白い映画でした。コッポラ監督ということで、ちょっとクセがあるのではと予想していましたが、意外にも(?)感動的な内容でした。マット・デイモン演じる若き弁護士が社会的弱者のために保険会社を相手に民事訴訟を起こし奮闘します。相棒役のダニー・デヴィートもいい味を出しています。

また映画を通して、アメリカの裁判制度の勉強にもなりました。具体的には、『現代アメリカ法入門 アメリカ法の考え方』で解説されている民事陪審制度、陪審選任手続き、デポジション(ディスカバリの一種で、「関係者に対して直接質問し、回答を得ることにより、その供述記録を書面、あるいは映像で残すという方法」p.131)、懲罰的賠償制度などが実際にどのように行われるかを確認することができました。当たり前ですが、これらのことを視聴者が理解できるように作中誰かが説明するというようなことは一切ないので、『現代アメリカ法入門 アメリカ法の考え方』を一通り読んでから映画を観ると話の流れがよく分かってより楽しめました。なお、レインメーカーとは、「お札を雨に例え、雨が降るように大金を稼ぐ弁護士のことを意味する」(p.13)そうです。

この『レインメーカー』が2017年3~4月に洋画専門チャンネル「ザ・シネマ」で何度か放送されます。
https://www.thecinema.jp/detail/index.php?cinema_id=03476

『現代アメリカ法入門 アメリカ法の考え方』

今年初めにワシントンDCを訪問し(http://beikokupat.com/blog/?p=595)、帰国してから阿川尚之著『憲法で読むアメリカ史(全)』(http://beikokupat.com/blog/?p=662)を読んでから、アメリカの法制度について俄然興味が湧いてきました。また、以前から、米国特許翻訳社という社名で活動しているのだからアメリカの特許制度だけでなく法制度全体についてもきちんと勉強して精通しておくのは義務だろうとも思っていました。これまで忙しさにかまけてあまり勉強できていませんでしたが、冒頭の出来事が契機となって、これから少しずつでも研究していこうと決心した次第です。

まず入門書として、『現代アメリカ法入門—アメリカ法の考え方』(丸田隆著)という本を読んでみました。アメリカ法について、個人的に普段新聞やテレビドラマなどで耳にしたことはあるが詳しくは知らなかったことが丁寧に書かれており、「Law & Orderで言っていたことはそういうことだったのか!」というような発見がいくつもありました。例えば次のようなことが詳しく説明されています。

・コモンロー(アメリカ法の基本となっており、12世紀にイングランドで始まった王立裁判所を起源とする、判例を重視する主義)、
・判例主義(Case Law、「アメリカのコモンロー・システムの基礎である」p.69、「先例と、現在直面している事案の法律問題に共通性があるかどうか決定するために、裁判官は審判対象事件について判断を下す際に、法的争点に関する先例の決定を考慮しなければならない。」p.70)
・ロースクールで行われるソクラティック・メソッド(「教員は、事案(case)について批判的な思索を刺激する一連の質問を学生に矢継ぎ早に発して、多様な争点について自分の考えを瞬時に組み立て、同時に返答することを学生に求める」p. 18)、
・法律事務所の運営について(経営に参加できるのはエクイティ・パートナーからで、その上にマネージング・パートナー、シニア・パートナーがいる)、
・サーシオレイライ(州最高裁判所の判断に不服の場合に連邦最高裁判所に再審理を求めること)、
・特許権・著作権に関する訴訟は(州裁判所ではなく)連邦裁判所の管轄であること、
・クラスアクション(集団代表訴訟。これに参加することをopt-in、参加しないことをopt-outという)、
・ディスカバリ制度(民事訴訟で正式な審理に入る前に当事者同士で情報や証拠を開示し合うこと)、
・ミランダ警告(警察が被疑者を逮捕する際に言う「あなたには黙秘する権利があります」などのおなじみの文言)が導入されるに至った経緯。

また、この本には参考文献の紹介が多く、次にどの本を読んで研究を進めるべきかの参考になります。特に、洋書の参考文献が多く紹介されているのは有り難いです。

『憲法で読むアメリカ史(全)』

憲法で読むアメリカ史(全)』(阿川尚之著)という本を薦められ、このところずっと仕事の合間に読んでいました。タイトル通り、アメリカ史を憲法との関係から概観できるようになっている本です。建国から二百数十年の間、アメリカでは様々な出来事(例えば、南北戦争、第1次2次世界大戦、公民権法制定、ウォーターゲート事件など)が起こり、それに関連して多くの訴訟が提起されています。そして、いくつかが連邦最高裁判所まで到達し、連邦最高裁で憲法解釈が行われ、その時々でどのような憲法解釈がなされたかが解説されています。また、解説を通して、なぜアメリカには州裁判所と連邦裁判所があるのか、両者はどのように役割分担しているのか、デュープロセスとは何か、議会の上院と下院はどう違うか、アファーマティブ・アクション(少数民族と優遇して採用や昇進を行うことによって結果の平等を人為的に実現する積極的差別是正策)が採用されるに至った経緯など、アメリカの司法、行政、立法の基本的な事項をおさえられるようになっています。

私がアメリカの知財法律事務所に勤めていたとき、所長がよくこんなことを言っていました。米国特許を本当の意味で理解するためには、特許法やMPEPを読むだけでは不十分だ。まず、アメリカ社会とその土台となっている合衆国憲法を理解しなければならないと。当時、一体どのようにすれば合衆国憲法を理解できるんだろうと思っていましたが、合衆国憲法理解への取っ掛かりとして良い本に出会ったと思っています。

DC滞在最終日

ワシントンDC滞在の最終日は、午前中に米国最高裁判所の口頭弁論を傍聴しました。Lynch v. Dimayaという移民法に関係する事件で、知財とは関係のない事件でしたが、米国最高裁判所の口頭弁論を生で見れるという貴重な経験となりました。傍聴には整理券が必要で、整理券をもらうために朝早くから最高裁判所の前に並びます。私は、アテンドして下さった特許弁護士の方と一緒に朝6時頃から並びました。整理券を受け取ると、厳重な荷物チェックを受けて裁判所内に入り、口頭弁論の開始時間まで裁判所内で待ちます。私たちは裁判所内のカフェテリアで朝食を取りながら待ちました(最高裁判所内にカフェテリアがあるとは驚きでした!)。法廷に入り、最高裁判事8人(本来は9人だが現在は1人欠員している)が登壇すると口頭弁論が始まります。当事者双方の弁護団がそれぞれ30分ずつ意見を述べ、その間判事から頻繁に質問を受けて回答するという形で進行しました。時折、笑いが起きる場面がありましたが、正直、私にはなぜ皆が笑っているのか聞き取れませんでした。自分のヒアリング力のなさを再確認しましたが、最高裁判所のHPでは口頭弁論の内容がスクリプトと音声で公開されており、後で復習したり、法廷に行かなくても内容を確認できるようになっています。

米国最高裁判所HP:
https://www.supremecourt.gov/

午後は、キャピトル・ヒル近くにある特許弁護士の事務所に行き、米国用特許クレーム作成の留意点などについて話し合いました。今回のワシントンDC滞在で、ここで話し合ったことが一番大きな収穫でした。私は、翻訳という商売柄、英文法や形式といった、特許においては比較的重要度の低い事柄にこだわり過ぎるきらいがあると思っています。今後は、全体最適(http://beikokupat.com/blog/?p=526)のために特許法や判例をもっと深く研究していく必要があることを再認識しました。

今回のワシントンDC滞在で強く印象に残ったことがあります。それは、現地の日本人特許弁護士は皆たくましいということです。猛勉強の末にロースクールを出て弁護士資格を取り、専門知識と英語を操って米国社会をたくましく生きているように私に映りました。苦労も多いでしょうが、それからくる悲壮感のようなものはないか表に出さず、フレンドリーな方が多いように思いました。また、アテンドして下さった特許弁護士が家族を非常に大切にしておられるのも印象に残りました。家族を大切にしつつ一流の仕事をする、ということを目指そうと改めて決心した旅でもありました。

米国最高裁判所

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キャピトルヒル

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途中で立ち寄ったジョージタウン大学ローセンター

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服部健一弁護士の母校ジョージ・メイソン大学ロースクール(現在はスカーリア・ロースクール)

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服部健一弁護士との会食

ワシントンDC近郊にある日本食レストランにて、Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLPの服部健一先生と夕食をご一緒しました。服部先生のことは、私が日本の特許事務所に勤めていた10年以上前から存じ上げていましたが、お会いするのは今回が初めてです。和食とお酒をいただきながら、米国特許の話や、法律事務所を運営する立場からの意見、非常にプライベートな話など、普段は絶対に聞くことができないような貴重なお話をしていただき、時間があっという間に過ぎていきました。

また、服部先生の著書『日米特許戦争の狭間で―米国特許弁護士・パートナーへの3000日』と『新米国特許法 増補版』にサインをしてプレゼントして下さいました。私は服部先生にお会いする前にこの2冊を既に読んでいましたが、サイン本が欲しかったので喜んで受け取りました。『日米特許戦争の狭間で』を読むまでは、私は服部先生が非常にスマートな生き方をして米国法律事務所(ザ・ファーム)のパートナーに登り詰められたと思っていました。しかし実際は、今の地位を築くまでに様々な苦労を経験されており、『日米特許戦争の狭間で』では様々な苦労が非常にリアルに、時にユーモアをもって描かれています。

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DC訪問

ワシントンDCに来ています。日頃お世話になっている特許弁護士の方と一緒に、連邦巡回区控訴裁判所(Federal Circuit, CAFC)やジョージ・ワシントン大学ロースクールなど、知財に関係の深い場所を訪れました。キャピトル・ヒル周辺では、今週末に行われる新大統領の就任式の準備が行われていました。明日はUSPTOにいく予定です。

CAFC
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ジョージ・ワシントン大学ロースクール
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アドミッション・オフィス
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模擬裁判が行われるmoot court
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パレード(?)の予行練習

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ハウス・オブ・カード

私は普段テレビをあまり見ませんが、
久々にハマっているドラマがあります。

『ハウス・オブ・カード』という
ホワイトハウスが舞台の政治ドラマです。
http://house-of-cards.jp/

主演がケヴィン・スペイシー、ロビン・ライト、
監督がデヴィッド・フィンチャーという
映画のような豪華な顔ぶれになっています。

キャスト、スタッフが豪華なだけでなく、
悪役の主人公を中心としたストーリーが
非常にユニークで面白いと思います。

また、映像が奇麗でドラマ全体になんとも言えない
クールな雰囲気が漂っています。

デヴィッド・フィンチャーの
『ドラゴンタトゥーの女』という映画も
同じく独特の雰囲気のある好きな映画です。
https://youtu.be/b-gXYvWUa4w

『ハウス・オブ・カード』新シーズンが
Netflixで始まりました。

まだ観ていませんが、
Netflixは一気に全話観れてしまうので
仕事に支障が出ないように気をつけたいと思います。

シーズン1の第1話が無料で視聴できます。
http://house-of-cards.jp/movie.php