アメリカ特許制度を学ぶ

米国特許出願手続きのポイントと情報開示義務対策

米国特許弁護士の山口洋一郎氏によるセミナー『米国特許出願手続きのポイントと情報開示義務対策』を受講してきました。特許庁の主催で毎年東京、愛知、大阪で開かれており、米国特許実務者だけでなく、米国出願用特許を行う翻訳者にとっても非常に有益な情報を得ることができるセミナーです。私は今年、大阪開催日にちょうど夜大阪で大事な用事があったので、大阪セミナーに申し込み、当日朝早くに新幹線で大阪入りしました。

10時から17時までみっちりと勉強したなかで、翻訳の観点から特に有益と思ったことがありましたのでシェアしたいと思います。「米国の新規性欠如の拒絶例と応答」というセクションで、タイトル通り、米国で新規性欠如により拒絶されるクレームの例と、この拒絶への応答例が紹介されました。前提として、米国と日本の新規性・進歩性制度の大きな相違点がいくつかあり、例として次のような点があります。

・クレームの前文(用途)は、限定にならない。
・物クレームの機能的限定は無視される(限定にならない)。

新規性欠如で拒絶されたクレーム例が次です。

1. An electric cleaner comprising:
a guide plate that comprises a first area and a second area, the first area guides an exhaust downwardly and the second area guides the exhaust upwardly.

このような掃除機に係るクレーム1に対し、米国審査官が引用した引用例はエアコン・ダクトで分野が違います。両者を比較した図がこれです。

novelty
図を見ると両者は異なっているように見えますが、上記前提に従うと、この拒絶は妥当ということになります。すなわち、クレーム1の掃除機は引用例のエアコン・ダクトと用途が異なっているものの、用途の相違は限定にならない。同様に、クレーム1の機能的限定“the first area guides an exhaust downwardly and the second area guides the exhaust upwardly”も限定にならない。よって、クレーム1と引用例は同じだ、ということです。

次に、この拒絶に対してどのように応答すべきかについて、ここでは機能的限定が意味なかったことを考慮して、構造的限定を記載することによって引用例との違いを出すという解説がされました。具体的には、図面のfirst areaとsecond areaが傾斜しているため、各areaがguide plateの厚み方向に対して0より大きい角度で傾斜している、という限定を加えます。セミナーでは具体的な補正例は示されませんでしたので、私なりの補正例を作ってみました。

(補正例)
1. An electric cleaner comprising a guide plate, the guide plate comprising:
a thickness direction;
a first area inclined by more than zero degrees relative to the thickness direction to guide an exhaust downwardly; and
a second area inclined by more than zero degrees relative to the thickness direction to guide the exhaust upwardly.

物クレームの機能的限定は意味がないため、“to guide an exhaust downwardly”と“to guide the exhaust upwardly”は必要ないかも知れません。

翻訳の段階で補正例のような対応ができていれば、クライアントにとって時間、労力、コストの削減になることがあると思います。

Patently-O

私の会社のホームページには、
フロントページに『日英知財ニュース』という
コーナーがあります。
http://beikokupat.com/

ここでは、主に海外(多くは米国)の
知財に関する最新情報が分かるようになっています。

以下のサイトを始め、海外の有名な英語知財サイトは
ほとんど網羅しています。

Patently-O
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All Things Pros
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もともと、私自身が知財の最新情報を
仕入れるために個人的に作っていた
ニュースサイトを当社のHPに移したものです。

特に、Patently-Oの更新情報を見逃したくなくて作りました。
Patently-Oはもう何年も読んでいます。
米国特許事務所に勤めていた際、
特許弁護士の多くがPatently-Oを読んでいるのを知って
私も読み始めました。

最初は難しく感じるかも知れませんが、
米国特許の制度などを勉強しながら
読み続けると書いてあることが分かるようになり、
だんだんと面白くなってきます。