アメリカ特許制度を学ぶ

MPEPの法規範性、ファイナル

連載『米国特許法解説』を更新しました。

第6回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性(その3)~

第6回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性(その3)~

前々回と前回に続いて、今回もMPEPの法規範性について解説されています。いくつかの翻訳会社で講演を予定されている小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)が、来日準備などでお忙しいなか執筆して下さいました。MPEPの法規範性についてこれだけ詳しく書かれている日本語の記事はないと思います。特許翻訳者にとっては、仕事に直結するような内容ではないかも知れませんが(例えば『四則演算に関する特許英語表現』のような即効性のある記事とは違うかも知れませんが)、米国特許制度を理解する上で必要な知識として、当社では何度も読み返すことを業務の一環としています。

ミーンズ・プラス・ファンクションクレームの歴史を概観する

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第5回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性(その2)~

第5回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性(その2)~

小野康英先生が、第4回に続いてMPEPの法規範性について解説して下さっています。解説を通して、ミーンズ・プラス・ファンクションクレームの歴史を概観できるようになっています。また、Federal Circuitの「en banc」についても分かりやすく解説されています。通常、3人の判事から構成されるパネルによって審理が行われるFederal Circuitにおいて、どのような場合に所属判事全員が参加するen bancによって審理が行われるかについて詳しく知ることができます。私も含めた米国特許法の学習者にとってまた一つ貴重な資料が増えました。

MPEPを盲信してはいけない

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第4回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性~

第4回:米国特許法の基本~MPEPの法規範性~

昨年末にWesterman Hattori Daniels & Adrian, LLPに移籍された小野康英先生が、渡米準備などで非常にお忙しいなか原稿を書いてくださいました。以前小野先生に、MPEPは特許翻訳者を含む特許実務家にとって非常に有益な資料であるものの、MPEPの内容を盲信することは危険だ、と教えていただいたことがありました。今回の記事では、これについて詳しく解説されています。

Alice判決や英語表現などについて

米国用の英文明細書に関する興味深い記事を読みました。“Changes in Patent Language to Ensure Eligibility Under Alice”という記事で、米国最高裁のAlice判決以降、独立クレームの文字数が顕著に増加しているという内容です。Alice判決以降、独立クレームをそれまでより詳細に書き、また明細書本文(Description)において効果(benefit statements)もより詳細に書く傾向が強まったということです。しかも、独立クレームでは、単に似たような表現を繰り返して文字数を増やしているのではなく、表現の1つ1つが意味のある限定になっている、と記事では分析しています。こういった傾向を知っておくことも、特許翻訳者にとって無駄ではないと思っています。こういう知識の積み重ねが、適切な判断の手助けとなり、いい翻訳へと繋がっていくのでしょう。

http://www.ipwatchdog.com/2017/12/06/changes-patent-language-ensure-eligibility-alice/id=90721/

Changes in Patent Language to Ensure Eligibility Under Alice

 

ちなみに、この記事で、特許翻訳者にとって非常に参考になりそうな次の英語表現を見つけました。

In other words, a repeated word would only count a single time in our analysis.

「同じワードは1ワードとしてカウントする」というような意味だと思いますが、“a repeated … count a single time”は特許翻訳で非常に応用が効きそうな表現です。この文章は、直前の文章の最後“by unique word count”を言い換えたものになっていますが、上記文章を“unique word count”の3ワードで表現できるというのも非常に勉強になりました。

Alice判決とは、『Federal Circuitで最も多く引用された判例』でも書いたeligibility(特許主題適格性)に関する判決で、本来特許を受けることのできない(ineligibleな)抽象概念などをコンピュータなどの特定の技術環境で実現しても、ineligibleであることに変わりはない、と米国最高裁が判断したものです。Alice判決はビジネス方法に関するeligibility判決で、病気の治療方法に関するeligibility判決であるMayo判決(101条(eligibility)の判断には102条(novelty)の判断が必要なときがあるとした判決)とともに、Mayo/Aliceテスト(2014 Interim Eligibility Guidance Quick Reference Sheet)というeligibilityの判断基準が確立され、この2つの判決はeligibilityに関して現在最も影響力のある判例とされています。その影響力は、クレームを打ち込むことによってAIによるeligibility予想が受けられるサイト(“Automated Analysis of 101 Eligibility”)が出現したことからも分かります。

Federal Circuitで最も多く引用された判例

http://alice.cebollita.org:8000/predict

Ask Alice!

Federal Circuitで最も多く引用された判例

Patently-Oに掲載された“Most Cited Federal Circuit Decisions 2014-2017”という記事に、2014年から2017年の間にFederal Circuit(米国連邦巡回区控訴裁判所)で最も多く引用された12の判例が載っていました。

https://patentlyo.com/patent/2017/10/cited-federal-circuit-decisions.html

Most Cited Federal Circuit Decisions 2014-2017

ここに書いてあるように、12の判例のうち、実に8もの判例がeligibilityに関する判例だったということです。eligibilityとは、米国特許法第101条の特許主題適格性のことを指し、101条に挙げられている4つのカテゴリー(process, machine, manufacture, composition of matter)に当てはまる発明のみが特許を取得することができるというものです。

35 U.S. Code §101 – Inventions patentable
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
新規かつ有用なプロセス、機械、製造物若しくは組成物、又はそれらについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は、本特許法の定める条件及び要件に従って、それらについて特許を取得することができる。(『新米国特許法 増補版』より)

eligibilityに関する判例がFederal Circuitで頻繁に引用されたということは、一度特許になった発明が、そもそも特許を取得できるカテゴリーの発明であったのか?ということが、Federal Circuitで頻繁に争点になったということを示していると思います。こういう現実は、普段、出願用の翻訳ばかりを行っている翻訳者にはなかなか気づきにくいところかも知れません。また、eligibilityは、翻訳者の力量で解決できる問題ではないと言えるため、翻訳者はただ翻訳しろといわれたものをそのまま翻訳するしかない、という考え方もあります(この考え方が大多数です)。ただ、翻訳者は、英文明細書という内部証拠(intrinsic evidence)を作るという非常に重要な役割を果たす人々です。自分が翻訳者として関わる発明が、将来どのような問題に直面する可能性があるかについて知っておくことは重要だと思っています。

米国特許法の学習者は持っておきたい辞書

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『第3回:米国特許法の基本~事実問題及び法律問題~』(http://beikokupat.com/us-patent/number3/)において、『英米法辞典』(東京大学出版会、田中英夫編集)を使って「コモン・ロー」などの法律用語が解説されています。『英米法辞典』は、米国特許法の学習者向けに推奨されることが多い辞典の1つで、私も1冊持っています。「コモン・ロー」「エクイティ」など、普通の辞書の定義ではよく分からないような法律用語が非常に詳しく解説されており、この辞典を持っていると、日々の仕事をやっていく上で頼れるものがあるという安心感があります。

法律について「知らないことを英語で知る」ために、英語で書かれた法律辞典も手元に置いています。私が持っているのは、「Black’s Law Dictionary」という辞典の卓上版です。これも『英米法辞典』同様に解説が詳しく、定義をさっと調べるというよりも、じっくりと読む類いのものです。カバーする用語の範囲も広く、例えば、pre-AIAの§102(b)などに対して使われる”statutory bar”が載っている辞典は、私が知る限り「Black’s Law Dictionary」(卓上版)だけです。

第3回:米国特許法の基本~事実問題及び法律問題~

連載・米国特許法解説_03

連載『米国特許法解説』を更新しました。
http://beikokupat.com/us-patent/number3/

この前の週末に著者の小野康英先生から原稿を受け取り、日曜日の大半を使って読みました。事実問題(matter of fact)、法律問題(matter of law)についてここまで詳しく解説している書籍やサイトは他にないのではないかと思うくらいの詳しい解説になっています。

『米国特許法解説』は、英文明細書マニュアルに関する記事のような「即効性」のある記事と違い、じっくりと何度も読み返したい解説だと思います。そのため、ブログ形式ではなく、専用のページを設けて公開しています。

連載『米国特許法解説』を更新しました

連載・米国特許法解説_03

連載『米国特許法解説』を更新しました。

第2回:米国特許法の基本~米国特許法の法源~
http://beikokupat.com/us-patent/number2/

今回も濃い内容になっており、何度も読み返して勉強したいと思います。なお、以前ご紹介した阿川尚之著『憲法で読むアメリカ史(全)』(http://beikokupat.com/blog/?p=662)を読むと、この連載をより楽しむことができます。

新連載『米国特許法解説』

連載・米国特許法解説_03

当社のウェブサイトにおいて、『米国特許法解説』という連載が新しく始まりました。米国特許法を中心に、市販の本には書かれていない情報を含む様々な情報を紹介していく予定です。執筆を担当するのは、弁理士であり米国弁護士である小野康英先生です。小野先生は、当社のアドバイザー的存在で、日頃から様々な助言をいただいています。当社は、米国特許法などについて自分たちで日々研究していますが、やはりそれだけでは足らず、専門家による助言や情報提供が必要です。小野先生には、こういった役割を担っていただいており、非常にお世話になっています。今回、米国特許法に関する連載の執筆を依頼したところ、ご多忙にもかかわらず快く引き受けて下さいました。私は一読者として、毎回記事を読むのを非常に楽しみにしています。

連載『米国特許法解説』
http://beikokupat.com/us-patent/
第1回:米国特許の基本~米国特許法及び米国憲法の関係~
http://beikokupat.com/us-patent/number1/

米国特許の入門書

patents

本棚を整理していたら、『The Pocket Idiot’s Guide to Patents』という本が出てきました。この本は、新規性や非自明性、仮出願などの米国特許の基本が分かりやすく解説されている本です。書かれている英語も平易で理解しやすく、簡単に読み進められます。”Idiot’s Guide”シリーズは、著者によっては英語ネイティブでないと理解し難いようなユーモア表現などが散りばめられており、著者のノリについていけなくなることがありますが、『The Pocket Idiot’s Guide to Patents』の英語はクセがなく、こんな分かりやすい英語を仕事でも書きたいと思わせるものです。10年以上前に出版された本で、古くて参考にならない(してはいけない)情報も含まれていますが、特許の考え方の基本は変わらないと思われるので、現在でも米国特許の入門書として十分に役に立つと思います。