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BRI基準及びPhillips基準のいずれを用いても同じ結論になるとしたPower Integrations事件

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

第16回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その4)~

http://beikokupat.com/us-patent/number16/

「BRI基準及びPhillips基準のいずれの基準を用いても同じ結論になる」という前回とは逆の内容です。今回の記事も、BRI基準とPhillips基準に関する、数少ない有益な情報源になると思います。

BRI基準及びPhillips基準のいずれを用いるかにより結論が異なると明言したPPC Broadband事件

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

第15回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その3)~

第15回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その3)~(2020年1月20日)

「BRI基準及びPhillips基準のいずれの基準を用いるかにより結論が異なると明言したPPC Broadband事件」という非常に面白い内容です。また、次のような事態が起こり得るとも解説されており、非常に興味深く読みました。

特許侵害事件においては、まず、連邦地裁で特許侵害訴訟が提起され、その後、USPTOで当事者系再審査(EPR: Ex Parte Reexamination)(35 U.S.C. 302-307)又はIPRの開始申請がなされるというケースがある。その場合、同一のクレーム中の同一の用語について、連邦地裁はその用語をPhillips基準に基づき解釈し、USPTOのPTABはその用語をBRI基準に基づき解釈するという事態が生じ得る。
「(2)連邦地裁におけるクレーム解釈及びUSPTOにおけるクレーム解釈」より

特許翻訳者は判例を知っておくべき

特許翻訳者にとって、判例を知っておくことは重要だと思っています。例えば、米国においてなぜミーンズクレームを避ける出願人と逆に積極的に使用する出願人がいるのか、あるいはなぜプログラムクレームを記録媒体クレームとして書かなければいけないのか、などは判例を知ることで理由が分かってくることが多く、クライアントの指示の意図を汲み取ることができます。

私自身の判例の勉強を兼ねて、米国の主要な判例の概要を数行でまとめ、『米国特許用語集』に加えていくことにしました。まずは、特許対象(特許適格性、patentable subject matter; 35 U.S.C.§101)に関する以下の3つの判例についてまとめました。

・Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303 (1980)
http://beikokupat.com/uspatent_glossary/diamond-v-chakrabarty/

・Mayo v. Prometheus, 566 U.S. 66 (2012)
http://beikokupat.com/uspatent_glossary/mayo-prometheus/

・Alice Corp. v. CLS Bank International, 573 U.S. 208 (2014)
http://beikokupat.com/uspatent_glossary/alice-cls/

特許図面の英訳に役立つ本

特許図面の英訳に役立ちそうな本を見つけました。

写真で見る 看板・標識・ラベル・パッケージの英語表現』という本で、アメリカの空港、電車、バス、ホテル、スーパー、レストランなどで目にする看板・標識・ラベル・パッケージなどに書かれている英語が写真とともに紹介されています。

もっと具体的には、カーナビの画面、クレジットカードの決済端末の画面、電子レンジ、空調、電話、洗濯機、自動販売機、コーヒーメーカー、食品ラベルなど、日常生活で見かけるものに書かれた英語が網羅的に記載されています。

こういった類の本としては、『Ultimate Visual Dictionary』という非常に有名な辞書がありますが、上記のような細かい部分の英語に関しては、『写真で見る』の方が詳しく、例も圧倒的に多いという印象です。

紹介されている英語は、商品上で記載スペースが限られていることから、非常に簡潔な表現になっている一方、伝えるべきことはきちんと伝わっているという特徴があると思います。これは、記載スペースが極端に限られていることが多い特許図面の英訳をする際に参考になるのではないかと思います。

BRIを理解するための良い例、Morris事件(In re Morris, 127 F.3d 1048 (Fed. Cir. 1997))

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

第14回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その2)~

第14回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その2)~(2019年6月17日)

前回のBRI (Broadest Reasonable Interpretation)を理解するための例としてMorris事件(In re Morris, 127 F.3d 1048 (Fed. Cir. 1997))が紹介されています。クレームが何回か補正されており、その遍歴から出願人の苦労が伝わってくるようで、非常に興味深く読みました。

USPTOのクレーム解釈基準はBRI (Broadest Reasonable Interpretation)

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

第13回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈~

第13回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈~(2019年3月19日)

前回は、裁判所におけるクレームの解釈基準であるPhillips基準についての解説でしたが、今回はUSPTOのクレーム解釈基準であるBRI (Broadest Reasonable Interpretation)についての解説です。裁判所はPhillips基準、USPTOはBRI基準でクレームが解釈されることを翻訳者は知っておきたいところです。

Phillips事件

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

第12回:米国特許法の判例~裁判所におけるクレーム解釈-Phillips事件~

第12回:米国特許法の判例~裁判所におけるクレーム解釈-Phillips事件~(2018年12月31日)

明細書、クレーム(米国では明細書の一部)、出願経過(prosecution history)を内部証拠(intrinsic evidence)といい、辞書や専門家による証言などを外部証拠(extrinsic evidence)といい、クレーム解釈においては内部証拠が優先して参照されるというルールについて解説されています。翻訳者は、内部証拠を作るという重要な役割を果たしている、という責任を改めて感じます。

米国特許法の基本~クレーム-特許前及び特許後における法的位置づけ~

小野康英先生(Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP)による連載『米国特許法解説』を更新しました。

『第11回:米国特許法の基本~クレーム-特許前及び特許後における法的位置づけ~』

第11回:米国特許法の基本~クレーム-特許前及び特許後における法的位置づけ~

今年の5月と9月に当社が主催した小野先生のセミナーにおいて、米国特許法ではクレームは明細書の一部という位置づけであるのに対し、日本国特許法では特許請求の範囲と明細書は別個の書類という位置づけであることが取り上げられました。今回の記事では、このことがさらに深く解説されています。

『突破せよ 最強特許網 新コピー機誕生』

突破せよ 最強特許網 新コピー機誕生』という本を読みました。かつてNHKで放送されていたドキュメント番組『プロジェクトX』を書籍化したシリーズの一つです。1960年代、日本のキャノン社が、当時売り上げの大部分を占めていたカメラ事業への依存から脱却すべく、新たにコピー機の製造に参入し、世界シェアNo.1になるまでの紆余曲折が描かれています。

当時、コピー機といえばアメリカ企業ゼロックス社が絶対王者で、シェア100パーセント、鉄壁の特許網を張って新規参入者を阻んでおり、あのIBMでさえコピー機を開発しようとしてゼロックス社に訴えられ、2500万ドルもの和解金を支払わされたということです。ゼロックス社の特許網の完璧さが次のように説明されています。

一つひとつの技術が、二重三重の特許によってプロテクトされていた。

「事業を独占するためには特許はこう使うんだ、と。そのお手本といっていいような、理想的な活用術でした。特許というものが、ここまで奥深いものだとは、ゼロックスの特許を知るまでは私には想像もできなかった」

キャノン社は苦労に苦労を重ね、ゼロックス社のこの完璧な特許網をかいくぐる「NPシステム」という独自の技術を開発し、世界中で特許を取得して製品化します。ところが、王者ゼロックスが、キャノン社が取得したNPシステムに関する特許の取り消し申請をイギリスとオーストラリアの特許庁に提出するという対抗措置をとってきました。

NPシステムの特徴は、コピー機の感光体に絶縁フィルムを巻きつける点にあり、ゼロックス社は自社の特許に「additionally comprises an insulating film(追加的に絶縁フィルムを含む)」という記載があることを主張し、特許取り消し申請の根拠とします。

このままでは勝てないと悟ったキャノン社の特許マンは、別のアプローチで対抗できないか鋭意検討します。その結果、NPシステムでは「同時」に行う2つのステップが、ゼロックス社の特許技術では「同時」にはできず、「順次」にしかできないことを突き止め、実験により証明することに成功。これがもとになって、取り消し申請は軒並み却下され、キャノン社はNPシステムが独自の技術であることを自分たちの力で証明しました。

ざっとこういう内容の本ですが、特許に関わる人間ならば一度は読んでおいた方がいい非常に面白い本だと思います(私も、ある方からそう言われてこの本を薦められました)。特許翻訳者にとっても、コピー機の勉強になり、また用語の勉強になるのではないかと思います。例えば、ともに「技術」を表す「テクニック」「テクノロジー」の使い分け方が、次の一文から分かります。

日本の「技術」は「テクニック」であり、「テクノロジー」は欧米のモノまねでしかないという批判がつきまとっていた。

それにしても、ゼロックス社の周到さには驚かされました。上記の「同時」がキャノン社によって不可能であることが実証されましたが、もしキャノン社が実験をしていなければ不可能とは分らなかったわけで、そんな不可能なオプションについてもゼロックス社の特許にはしっかりと“simultaneous”と付記されていたということです。特許の奥深さを知ることができる良い本を教えていただきました。

下町ロケット「ヤタガラス」(一部ネタバレあり)

『下町ロケット』の「ゴースト」に続く新作「ヤタガラス」を読みました。「ゴースト」が続編を期待させるような終わり方だったので、「ヤタガラス」が出ると知ったときは、やっぱりなと思い、発売日に買いました。

「ヤタガラス」を読んで、「ゴースト」で気になっていたことがすべて解消されました。「ゴースト」で伏線を散りばめて読者をモヤモヤさせ、「ヤタガラス」でスカッとさせるという仕組みになっていると思います。おそらく、今月から始まるテレビドラマの新シリーズの内容も、前半が「ゴースト」で、後半が「ヤタガラス」になるに違いありません。

「ヤタガラス」の中心テーマは、意外にも農業です。ヤタガラスとは、帝国重工が開発し、佃製作所がエンジンのバルブシステムを供給している宇宙ロケットの名前です。ヤタガラスで打ち上げた衛星を使って地上の農業用トラクターの位置を追跡し、人間がその位置をPC上で確認しながらトラクターを遠隔操作して無人の状態で農作業を行うというICT農業が今回のテーマです。

「ゴースト」「ヤタガラス」を読んで、農業トラクターのエンジンとトランスミッションの勉強になりました。また、特許を企業の活動を通して見ることができ、これも勉強になりました。「ゴースト」では、フィクションながら、新規性の世界公知により特許が無効になる例も見ることができます。

テレビドラマでは、また小説とは違った面白さがあると思います。特に、トランスミッション開発で非常に重要な役割を果たす天才エンジニアの役を有名芸人さんが演じるということで、今から見るのを楽しみにしています。