一流の特許翻訳者になる

「等」を英訳する際の1アイデア

特許明細書では、「等」という表現が頻出します。そして、「等」をどのように英訳するかについての私の考え方を、30日間無料メール講座『米国出願用特許翻訳・重要ポイント解説』の第14回「and the like は誤訳になることがある」で解説しています。今回は、この解説の補足をしたいと思います。

例えば、「A、B、C等」という日本語の表現があるとします。これを英訳する方法の1つとして、“such as”を使って“such as A, B, and C”とする方法があり、私も含め、特許翻訳者のあいだで非常によく使われています。しかし、特許明細書では、「等」の後に長めの説明が入ることがよくあり、「等」とあわせてうまく英訳するのが難しいときがあります。例えば、「A、B、C等の扱いが難しいもの」では、「等」の後に「の扱いが難しいもの」という説明が入っています。これを“such as”を使って英訳すると、例えば次のようになるかと思います。

something difficult to handle, such as A, B, and C

これはシンプルな例ですが、実際には「等」の後の説明がもっと長く、その説明の英訳も長くなり、“difficult to handle”という3語ではすまないことが多いです。この場合、“such as A, B, and C”が一体何の例なのかが分かりづらくなることがあります。これに対して、次のようにしてはどうかという意見が出てくると思います。

something, such as A, B, and C, difficult to handle

私は、この文章は不自然だと思います。というのは、“such as A, B, and C”は“something difficult to handle”の例になっているため、上の文章だと、“A, B, and C”がどのような性質のものなのかが“difficult to handle”を読むまで分からないような文構造になっているからです。

このような悩ましい場合、私は次のようにしています。

A, B, C, and other things difficult to handle

このようにすると、“such as”や忌まわしき“and the like”“or the like”を使わずにすみ、すっきりとした表現になります。

なお、“and other things”の“and”は、文脈や技術内容によって“or”あるいは“and/or”にしなければならない場合があります。また、“things”についても、より適切な表現を探す努力をしなければいけません。これらについても、第14回「and the like は誤訳になることがある」で解説しています。

また、一番目の英文“something difficult to handle, such as A, B, and C”は次のようにすることで「短文」化することができます。

something difficult to handle. Examples include A, B, and C.

30日間無料メール講座

料理関係の英文記事は方法表現の勉強になる

何気なく読み始めたスターバックスに関する英文記事に、特許翻訳において特に方法を表現する際に役立ちそうな表現がたくさん含まれていました。忘備録としてここに書いておきたいと思います。

http://www.thisisinsider.com/tips-from-starbucks-baristas-2017-12

I was a Starbucks barista for 4 years — here are the biggest things I learned

Guaranteed, Starbucks Gold members can pinpoint the memory of the first time they laid eyes on a beautifully layered, two-toned iced caramel macchiato. Most people’s first inclination upon receiving the cup is to swirl their straw in circles, mixing the two layers of espresso and milk to create a uniform creamy brown-colored coffee drink.

上の2つの文章のうち、2文目(Most people’s …)は、多くの人がキャラメルマキアートを飲むときにやってしまいがちな行動で、ストローで全体をかき混ぜることが残念な行動として紹介されています。この文章の構造(swirl …, mixing … to create)は、何かを作ったりする際の表現として応用が効く(使い回せる)のではないかと思います。また、ここにも、『特許翻訳者のあるべき姿』で紹介した“… is to動詞(ここではswirl)”という便利表現が使われています。

次の文章は、複数の材料を順番に加えていって何かを作るための説明文として英借文できるかも知れません。“to start”は、日本語明細書の「まず」として使えそうです。

A caramel macchiato is made with vanilla syrup to start, then milk, then espresso, and is finished with a special crosshatched pattern of caramel drizzle.

次の文章は、構造物の構成要素を列挙する際にコロンが使用されている例です。

An espresso shot is made up of three parts: the heart (the dark brown base), the body (the middle layer), and the crema (the creamy, beautiful foam topper that provides a bit of sweetness).

次の文章は、上記記事とは別のスタバ関連記事からの抜粋です。“in either mocha or Frappuccino form”の“in … form”は「・・・形状で」「・・・の形態で」といった意味で私もよく使っています(formは無冠詞)。

http://www.thisisinsider.com/starbucks-holiday-drinks-around-the-world-2017-11

12 Starbucks holiday drinks you won’t find in the US

Baristas mix white chocolate with sour raspberries in either mocha or Frappuccino form, then top a dollop of whipped cream with the same ingredients.

記事の至るところで、“top”が動詞や形容詞で使われています。「てっぺん」にあるものを説明したり、「てっぺん」に何かを施したりするときに使えるかも知れません。

Starbucks closed its Teavana stores earlier this year, but the brand name teas are still available. Malaysia mixed the black tea with apple juice to create a special flavor for the holidays. It’s topped with cinnamon spice foam.

上記の記事に限らず、料理の作り方が書いてある記事は、「動き」を伴う表現が多く、同じく「動き」を伴う表現が多い特許の方法表現の参考になると私は思っています。

特許翻訳者のあるべき姿

 

 

 

特許翻訳者のあるべき姿

私は、折にふれて木村進一先生のブログ記事を読むことにしています。先日改めて読んだ記事『育たない特許翻訳者、育てない特許事務所-翻訳とは意訳なり─』は、特許翻訳者の本来あるべき姿が描かれており、当社もこのような姿を目指そうと決意を新たにしました。

英語力に加えて、日本法の知識、外国法制や現地の実務の知識、たとえば、FestoやKSR、さらにEPCにおける各種審決例の法理などを三位一体的に総動員して翻訳に当っている特許実務家が果たして何人いるでしょうか。

翻訳とはそもそも意訳なのであり、「意訳が悪いのではなく、悪い意訳があるとすれば、英語力不足、思考力不足、教養不足の酸欠ならぬ“三欠”の結果です」という指摘は、心にズキンときます。“三欠”の状態で行われた意訳が一番たちが悪いことは、私もこれまで多くの翻訳を見てきて感じてきたことですが、これは程度の差の問題であって、木村先生に言わせると、当社の翻訳もまだまだ“三欠”なのかも知れません。記事で言及されているロボット(つまりAI)との差別化のためにも、当社は上記特許実務家のような姿を目指していきます。この記事を読んで、木村先生にまた叱咤激励された気分になりました。

ちなみに、記事では、記載不備で拒絶された稚拙な翻訳を木村先生が書き直されていますが、改訂文の[0002]において、“One of them is to devise such a program as to guard against unauthorized use”という文章があります。この“one … is to 動詞”という表現は、冒頭に“is”という結論がきていて非常に読みやすい上、改訂文で行われている「短文」化のためのツールとしてかなり応用の効く便利な表現です。実際、私が米国特許法律事務所に勤めていたとき、米国弁護士がこの表現を使っているのを頻繁に目にしました。例えば、鑑定書(クライアントの発明と先行技術とを比較したもの)において、“one possible approach to circumvent the prior art is to …”(当該先行技術を避ける方法の一つとして、・・・することが考えられます)といった具合に。また、“to 動詞”の部分をthat節にすることもでき、更に応用の効く表現になります。例えば、“a possible explanation is that …”(その理由の一つとしては、・・・であることが考えられる)など数限りない表現を作ることができます。

特許英語の大家、木村進一先生

http://skimura21.exblog.jp/7705600/

育たない特許翻訳者、育てない特許事務所-翻訳とは意訳なり─

Alice判決や英語表現などについて

米国用の英文明細書に関する興味深い記事を読みました。“Changes in Patent Language to Ensure Eligibility Under Alice”という記事で、米国最高裁のAlice判決以降、独立クレームの文字数が顕著に増加しているという内容です。Alice判決以降、独立クレームをそれまでより詳細に書き、また明細書本文(Description)において効果(benefit statements)もより詳細に書く傾向が強まったということです。しかも、独立クレームでは、単に似たような表現を繰り返して文字数を増やしているのではなく、表現の1つ1つが意味のある限定になっている、と記事では分析しています。こういった傾向を知っておくことも、特許翻訳者にとって無駄ではないと思っています。こういう知識の積み重ねが、適切な判断の手助けとなり、いい翻訳へと繋がっていくのでしょう。

http://www.ipwatchdog.com/2017/12/06/changes-patent-language-ensure-eligibility-alice/id=90721/

Changes in Patent Language to Ensure Eligibility Under Alice

 

ちなみに、この記事で、特許翻訳者にとって非常に参考になりそうな次の英語表現を見つけました。

In other words, a repeated word would only count a single time in our analysis.

「同じワードは1ワードとしてカウントする」というような意味だと思いますが、“a repeated … count a single time”は特許翻訳で非常に応用が効きそうな表現です。この文章は、直前の文章の最後“by unique word count”を言い換えたものになっていますが、上記文章を“unique word count”の3ワードで表現できるというのも非常に勉強になりました。

Alice判決とは、『Federal Circuitで最も多く引用された判例』でも書いたeligibility(特許主題適格性)に関する判決で、本来特許を受けることのできない(ineligibleな)抽象概念などをコンピュータなどの特定の技術環境で実現しても、ineligibleであることに変わりはない、と米国最高裁が判断したものです。Alice判決はビジネス方法に関するeligibility判決で、病気の治療方法に関するeligibility判決であるMayo判決(101条(eligibility)の判断には102条(novelty)の判断が必要なときがあるとした判決)とともに、Mayo/Aliceテスト(2014 Interim Eligibility Guidance Quick Reference Sheet)というeligibilityの判断基準が確立され、この2つの判決はeligibilityに関して現在最も影響力のある判例とされています。その影響力は、クレームを打ち込むことによってAIによるeligibility予想が受けられるサイト(“Automated Analysis of 101 Eligibility”)が出現したことからも分かります。

Federal Circuitで最も多く引用された判例

http://alice.cebollita.org:8000/predict

Ask Alice!

建築英文記事は構造表現の勉強になる

六本木の国立新美術館で開催されている「安藤忠雄展―挑戦―」に行ってきました。

安藤忠雄展 ―挑戦―

安藤忠雄展 ―挑戦―

建築家・安藤忠雄氏がこれまでに手掛けた国内外の建築を模型や写真、映像などで紹介する大規模な展覧会です。私は、展示物のなかでどうしても見たいものがあったので、今回の展覧会に行くのをずっとを楽しみにしていました。見たかったのは、「光の教会」という安藤氏の代表作の一つを、本物と同じ材料(コンクリート)を使って、しかも原寸大で再現したものです。コンクリートの壁に十字架型の切り込みが入っていて、これにより外から差す光が十字架型になるという素敵すぎる建物で、本物は大阪・茨木市にあります。本物は、建主の意向で十字架の中にガラスが張ってありますが、設計当初の案では、十字架から外の光とともに空気も入ってくるように、ガラス等はなく、内と外の仕切りがない状態になっていたそうです。再現された「光の教会」は、設計案通りの、ガラスのないものになっていました。いい建物を見ることができ、中に入ることもできて、建築好きとしては気分が上がりました。

ando1

ando2

私は建築が好きで、建築に関する英文記事をよく読みます。以前書いた『ファッション記事は構造表現の勉強になる』と同様、建築記事は構造表現の宝庫で、英文特許明細書において参考になりそうな表現に出会うことが頻繁にあります。私がよくチェックしているのは、ArchitectureWeekという建築サイトです。世界中にある現代建築物が写真とともに解説されています。記事の長さがちょうどよく、仕事の合間の息抜きなどにもってこいの長さだと思います。あと、建築がテーマの小説としておすすめなのが、Ayn Randという作家の「the Fountainhead」で、『こんな面白い小説がある!』で紹介しています。

ArchitectureWeek

ArchitectureWeek

ファッション記事は構造表現の勉強になる

こんな面白い小説がある!

科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法

年末の恒例として、『表現のための実践ロイヤル英文法』を毎年読み返すことにしていますが、今年はグレン・パケット著『科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法』を読んで冠詞を体系的に学び直しています。1年以上前に発売された際に一通り読んだのですが、もう一度読み直したいと思っていました。冠詞に特化した本としては、翻訳者のあいだでは『技術英語の冠詞活用入門』が非常に有名です。私もそうでしたが、”A cat’s dead”と”The cat’s dead”の解説で冠詞の真髄を理解した人も多いと思います(子供が母親に”The cat’s dead”と言ったら、”A cat’s dead”と言いなさいと正された)。『科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法』は、『技術英語の冠詞活用入門』の内容をより深く、よりアカデミックなアプローチで解説しています。例文も豊富で、なかでも誤用例と添削例があるのがパケットシリーズのいいところだと思います。用語もアカデミックになっていて、例えば、私が普段好んで使っている「特定感」が「同定性」となっています。自分が稚拙な言葉を使っているような気分になり少し恥ずかしくなりました。パケットシリーズは難解すぎて途中で読むのをやめたということをよく聞きますが、私は、日本人がおかしやすい英文ミスについて他に類を見ないほど詳細に解説してあるという点で、パケットシリーズは素晴らしい本だと思っています。

※当社はアマゾン・アソシエイトに登録しており、上記リンクからの購入により当社に紹介料が入る仕組みになっています。紹介料は当社ホームページの運営費に充てています。

ジェームズ・バーロー著『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』

JamesBarlow

日英特許翻訳の重要ポイントが
簡潔にまとめられた秀逸な記事をご紹介します。

ご紹介するのは、
日本弁理士会が発行している「パテント」誌にかつて掲載された
『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』
という記事です。

著者であり米国特許弁護士である
ジェームズ・バーロー氏は、
米国特許庁の元審査官で、
日本で約3年にわたり特許出願の英語翻訳文を校正したご経験があります。

この経験を通して氏が気づいた英語翻訳文の問題点と
その解決案が示されているのが上記記事です。

例えば、次のようなポイントが例文とともに解説されています。

・文は短く書く
・簡潔に書く
・能動態で書く
・「that」と「which」を正しく使う

20年近く前の記事(「パテント」誌1998年4月号)ですが、
その内容の素晴らしさは今も変わることはなく、
特許翻訳者や特許実務家のための
一級品のテキストだと個人的に思っています。

しかし、掲載から20年近くが経ち、
記事の入手が難しくなっていました。

そこで、この度、関係各所の承諾を得て、
記事を当社のホームページに掲載し、
誰でも簡単にアクセスできるようにしました。

特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために

原文である英文と日本語訳の両方を
閲覧できるようになっています。

今回、記事を当社のホームページに掲載できたことで、
誰でも好きなだけ読むことができるようになりました。

20年近く前に書かれたものとは思えないほど、
ここで提起されている問題は今でも現実の問題として
感じられるのではないでしょうか。

今回の取り組みが皆さまのお役に立てば幸いです。

100%誤解のない文章を書くのは難しい

ネット上で見つけたある記事を読み、特許翻訳者として非常に考えさせられました。”25+ People Who Take Instructions Too Literally”(https://goo.gl/1N7zGB)という記事で、書いてある英語の指示が、意図した意味とは違う意味にとられた例がいくつか紹介されています。これらの例はどれも笑えるのですが、同時に、人に誤解を与えない文章を書くのは本当に難しいということを教えてくれます。例えば、次の写真の例では、pumpkin, log, river, fox, pondをアルファベット順に並べなさいという指示が書いてあります(appleに×印が付いているのは、appleが一番目にくることが示唆されていると思われます)。

alphabetical

この指示に従うと、fox, log, pond, pumpkin, riverという順番に並べるのが正解と思われますが、回答欄には、1つ1つの単語を構成するアルファベットをアルファベット順に並べ直したものが記入されています。小学生による回答のようで、大人の世界ではあり得ない回答かも知れませんが、指示「Write the following words in alphabetical order」が100%誤解のない文章ではないことがこの小学生によって証明されています。この指示をより誤解が少なくなるように修正するとしたら、WriteをPut, Place, Sort, Listなどに置き換えるといいかも知れませんが、それでもなお、写真のような対応をする小学生が出てくることも否定できません。

次の例は、ドレッシングのカバーのタブに書いてある指示「OPEN ON OTHER SIDE」に対して、わざわざナイフを取り出してきて底の部分を切り開いており、明らかにウケ狙いと思われますが、指示「OPEN ON OTHER SIDE」は下側の写真のように対応できなくもないということを示しています。そういう意味では、これも上の例と同じく考えさせられるものです。そもそも、なぜこんな指示が書いてあるのか気になります。指示が書いてあるタブの反対側にタブを設けて「OPEN ON THIS SIDE」と書くのではダメなんでしょうか。。。

otherside

米国特許庁では、Broadest Reasonable Interpretation (BRI)という方針のもとでクレームが審査されます。BRIは、クレームはリーズナブルな範囲で広く解釈されるという意味で、広く解釈される分、先行技術とバッティングする部分が大きくなり、それだけ審査に通りにくいということを示しています。上の2つの写真もBRIの例だと思います。

次の例では、指示のitを明確にすれば犬の悲劇は確実に避けられると思います。

dog

メールを送るときは一番伝えたいことをタイトルにする

methodbusinesswriting

『ABSTRACTを150ワード以内にまとめる』(http://beikokupat.com/blog/?p=1051)において、一番重要なことを見極めて短くまとめるということを書きました。この作業の練習を兼ねて日頃からできることがあります。それは、メールを送るときに、一番伝えたいことをタイトルにすることを心がけて実践することです。これは、私が過去に行ったセミナーでも紹介したことがあります。メールのタイトル部分を短く書くということは誰でも実践していることだと思いますが、多くのメールはタイトルに件名だけが書かれていて具体的な内容は本文を見なければ分からなくなっており、忙しい人への配慮のないものになっています。これを、短いのはそのままにして、一番伝えたいこと(結論とも言えます)をタイトル部分に書くようにします。これにより、メールの受け手はタイトルを見るだけで本文の大体の内容を掴める上、上記のように、一番重要なことを見極めて短くまとめるという、米国出願用の明細書翻訳を行う人にとって必要なスキルを身につける練習にもなります。

非常にシンプルな例を見てみます。仕事で取引先の担当者に会いに行くことになり、その日時を担当者にメールで伝える際、メールのタイトル部分に例えば「11月10日14時に御社に伺います」と書きます。これを、「御社訪問の件」などと書くと、担当者は本文を見なければ相手がいつ来社するのか分からない状態になります。また例えば、私の会社のトライアルを受けてくれた人がいて、その人に審査結果をメールで伝えるとすると、タイトル部分に「トライアル審査結果のご連絡」などと書いて勿体ぶらずに、「トライアル合格のご連絡」のようにストレートに書くかも知れません。

これをもっと複雑なサンプルを使って、しかも英文で練習できるという素晴らしい本があります。『メソッド方式 英文ビジネスライティング完全マニュアル』という本で、この本には、一番重要なことを見極めて短くまとめる方法の説明と、英文で行う練習問題が載っています。また、この本はエンジニア向けに書かれたものらしく、工学系の題材がふんだんに使われており、特許翻訳者や知財関係者にとっては馴染みやすいのではないかと思います。その他にも、この本には関係代名詞のthatとwhichの使い分けや三段論法など、英文ライティングの基本が詰め込まれています。

 

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ABSTRACTを150ワード以内にまとめる

日本語で書かれた基礎明細書に添付されている要約書を米国出願用のABSTRACTに翻訳する際、私の会社では、クレーム1の内容をABSTRACT用の形式に書き直したものをABSTRACTに記載しています。ABSTRACT用の形式の基本的なルールは『要約書の書き方』(https://goo.gl/n8GhBJ)に書いてある通りですが、そのなかでも「150ワード以内」というルールが最も有名だと思います。私の会社でも、もちろんこの150ワードルールを守りつつ上記作業を行っていますが、クレーム1の長さによっては、150ワード以内にまとめるのがなかなか難しいときがあります。つまり、クレーム1の長さが150ワードを大幅に超えているような場合、これをどのように150ワード以内にまとめるのか、という問題に直面します。このような場合でも、私の会社では必ず150ワード以内にまとめています。

具体的な方法としては、当たり前かもしれませんが、クレーム1のなかで一番重要と思われる限定を残し、これとは直接関係ないと思われる限定を削除してワード数を減らす、という方法を採用しています。この作業は、何が一番重要なのかを見極めることが必要になってくるため、発明の本質を理解できていることが前提となり、作業者の腕の見せどころとも言えます。また、どの限定を中心にまとめたのかを納品時にコメントするようにもしています。また、当たり前ですが、このようにまとめたABSTRACTの内容がクレーム1の内容と矛盾するようなことがないように注意しています。ABSTRACTは、クレーム解釈の際に重要視される内部証拠として参酌される可能性があるためです。そういう意味では、ABSTRACTを150ワード以内にまとめるという作業は責任重大な作業と言えます。

なお、「150ワード以内」であっても、例えば149ワードなどの150ワードに近いぎりぎりのワード数にはせず、できれば140ワード前後にしています。これは、方式審査に一貫性がないことを想定して、149ワードなどが目視で150ワードを超えているように判断され、いわれのないオブジェクションが発せられるのを避けるためです。