英語のスキルを上げる

ファッション記事は構造表現の勉強になる

『良い特許翻訳者かは構造表現で分かる』(http://beikokupat.com/blog/?p=455)において、英語での構造表現力の重要性について書きましたが、英語での適切な構造表現を知ることができる情報源の1つとして、英語のファッション記事を挙げることができます。これは意外と思われるかも知れませんが、ファッション記事と特許明細書の読み方は似ているところがあります。ファッション記事ではファッションについて多くの場合写真を参照しながら説明し、特許明細書は図面を参照しながら説明することが多い点が似ており、またファッション記事で使われている表現を英文明細書にも使えることがよくあります。このように仕事に直結する発見があるのと、自分自身ファッションが好きなこともあって、私は時々英語のファッション記事を読んでいます。

ファッション記事を読むときは、図面付きの特許明細書を読むのと同じように、写真で確認しながら説明を読むようにしています。例えば、9月に行われたニューヨーク・ファッションウィークに関する記事を見つけたので読んでみました。

“Exclusive: Alexander Wang Does See-Now-Buy-Now His Way With a Capsule of Spring 2017 Pieces”
http://www.vogue.com/13490385/alexander-wang-spring-2017-buy-now-collection/

Alexander Wang’s neon-colored surf-core show at New York Fashion Week was one of the highs of the season that left guests feeling optimistic about fashion’s future—and with a long laundry list of items to covet. Luckily for #WangSquad members everywhere, the designer is releasing a selection of denim, T-shirts, and bags from the collection for immediate-ish purchase. We say immediate-ish because the release of the capsule collection arrives tomorrow, October 10, exactly one month after Wang’s riotous Spring 2017 show.

Among the lineup are shredded denim jackets and jeans in light blue and white, a series of bucket bags in neon coral and black, a new set of tees featuring the brand’s barcode logo in leopard print, and a neon fabric cuff complete with a metal chain that the brand is calling a “surf cuff”—the more dirty-minded Wang fans might see it ideal for another, sexier use. Up to you what to do with whichever piece catches your fancy, but you’ll want to hurry and scoop it up now. The full range of items arrives in select Alexander Wang stores, as well as online, tomorrow, and if the bevy of celebrities and It models who call Wang a friend are any indication, it will be selling out, stat.

2段落からなる短い記事ですが、英文明細書で使えそうな表現が見られます。特に2段落目は写真のシャツやバッグの柄や構造の説明をしており、特許翻訳者としては読んでいてとても勉強になります。例えば、“in leopard print”はleopardを入れ替えて「~柄がプリントされた」として使えそうです。“complete with~”は写真から判断すると「~とセットになっている」として使えるかも知れません。あるいは、オフィスアクションへの応答などにおいて、「Aは~があって初めて成立する」「Aは~がないと成立しない」といったニュアンスで使えるかも知れません。たった2段落読んだだけでもこれだけの収穫がありました。ついでに「見たその場で買える」を“See-Now-Buy-Now”と表現することも知りました。

ファッション記事の注意点としては、ファッションがセレブリティと密接に関係しているためにセレブ関連の説明が多く、ゴシップに通じていないとついて行けないことがあることです。あともちろん、そもそもファッションに興味がないと読む気にならないというのもあると思います。私がよく見ている『ファッション通信』(http://www.bs-j.co.jp/fashion/)(https://www.youtube.com/user/fashiontsushinCH)などはファッション情報に慣れるのにいいと思います。私はこの番組を見ることで誰がどのブランドのデザイナーをしているかなど、ファッション記事を理解するための背景が分かるようになりました。

良い特許翻訳者かは構造表現で分かる

特許明細書では、ものの構造を説明するということが頻出しますが、日本語で書かれた構造説明を上手に英語で表現することはなかなか難しい作業です。日本語でなされた説明を直訳のようなかたちで英語化したものは、意味不明な英語になったり、英語としてくどく特許的に好ましくない表現になったりするため、十中八九、使い物になりません。私もそうでしたが、技術者が日本語で明細書を書く際に、限られた時間のなかで、後々翻訳者が英訳がしやすいような構造説明にしようといった思いやりを持つことはほとんどないか、あっても誤訳のないように係り結びを明確にする工夫をするぐらいが精々ではないでしょうか。英語での構造説明は特許翻訳者の腕の見せ所であり、いい特許翻訳者かどうかを見分けるバロメーターとも言えます。特許翻訳者として成功するためには、英語での構造表現力を磨き、クライアントから「この複雑な構造をあの人なら英語でどう上手く表現するか見たい」と期待されるぐらいになるべきだと思います。私はそうなりたいといつも思っています。

構造説明の英訳の方針としては、私は、日本語で意図されていることを最大限に汲んだ上で、最も近く且つ英語として適切な表現を考えるということをしています(もっとも、これは構造表現に限らず、私の会社で特許翻訳全体に適用している方針ですが)。このような表現は、結果として日本語にとらわれない表現になっていることが多いです。具体的には、日本語原文をよく読んで内容を理解し、頭の中で『離れているものを関係付けるテクニック』で説明しているような再構築化をして、再構築化した内容を知っている適切な英語で表現する、あるいは適切な英語表現を探すようにしています。このような英語表現がすぐに出来上がることもありますが、大抵は出来上がるまでにあーでもない、こーでもない(「あーするとヘンな誤解を招くかもな」「こーすると原文のこの部分が汲み取れてないな」)と推敲を重ね、時には一つの構造説明を英語にするのに半日ぐらいかかることもあります。

このように、英語で理解される構造説明を書くためには、原文をよく読んで構造内容を理解し、再構築化を行い、適切な英語で表現する、という作業が少なくとも必要だと思います。これらの要素は一つ一つがとても重要で訓練が必要なスキルかも知れません。再構築化は、第2日本語化といった名前で一部の翻訳学校で教えているようですが、特許翻訳では単に分かりにくい日本語を分かりやすい日本語に変えるだけでなく、特許的にもより適切な表現に変えるという作業が必要だと思います(『実践・米国式特許クレーム作成講座』で詳しく解説しています)。またこれは、上記のように構造説明だけでなく明細書全体に適用すべきことで、特にクレームでは意味不明・不必要な限定を徹底的に排除すべきです。しっかりと翻訳をしているのだから意味不明になどなるわけがないだろう、と思われるかも知れませんが、それは慢心で、英語しか読めない人から「ここが分かりにくい」と指摘されることはよくあります。私は、自分の書いた英語が誰が読んでも同じ解釈になるかどうか、謙虚な気持ちで問い直し、推敲するようにしています。

特許英語の大家、木村進一先生

私はこれまでに一度だけ翻訳学校に通って特許英語を学んだことがあります。それは、かつてバベル・ユニバーシティの大阪校で開講されていた木村進一先生という弁理士をされていた方の授業です。木村先生は日本の特許英語の第一人者とも言える名の通った方で、その授業内容は非常にレベルが高く、付いて行くのに非常に苦労した覚えがあります。特許翻訳講座といったありきたりな講座名だったと思いますが、米国特許実務者向けの英文明細書作成講座あるいは英文クレーム・ドラフティング講座と言った方が授業内容をよく表していたと思います。当時は理解できなかったことが多かったですが、多少経験を積んだ十数年後の今、当時授業で使われた資料を改めて読み返してみると、納得することばかりで非常に面白いです。例えば、日本語にとらわれない英文を書くという考え方が授業の全体を貫いており、このことは今私の会社がクライアントから求められていることです。

一方で、日本語にとらわれない英文を書くという木村先生が少なくとも十数年前から説いておられた翻訳方針(且つ本当に良い米国特許を取りたいと考えている一部の企業が求めている翻訳方針)で英文を書く技量のある人がどれだけいるのだろうと思うことがあります。当時、一緒に受講していた特許事務所の方が「木村先生は正論を仰っているが、実際の現場では木村先生がされる様なクレームにするのは無理だ」というようなことを陰で言っていたのを覚えています。少なくとも当時から現在に至るまで、この本音が特許翻訳を形作っており、木村先生の方針を奨励する人は少数派のままとなっているため、それを実践する人も教えられる人も育っていないのではないかと思います。

授業では厳しかった木村先生ですが、授業を離れると非常に気さくで気軽に話しかけてくださり、何度か食事に誘っていただこともありました。食事の席などで特許や英文ライティングに関する多くのことを木村先生から個人的に聞くことができ、これも今の仕事に役に立っていると思います。いくつかについて『英文ライティングが上手くなる方法』や『洋書を読まない特許翻訳者の特徴』で書いています。

非常に残念なことに、木村先生は既に亡くなっているためもう授業を聞きに行ったり相談に行ったりすることはできませんが、木村先生が書かれていたブログ記事を『特許評論』で今でも読むことができます。読むと分かりますが、特許翻訳者や特許実務者にとって耳が痛くなることがたくさん書いてあります(というよりもそのことしか書いてありません!)。特に、ある記事のなかで、英訳された特許明細書の多くについての川柳を木村先生が詠まれており、かなり痛烈な内容になっています。

特許評論』はもう更新されませんが、これまでに書かれた記事だけでも特許翻訳者や学習者にとっての指針として重要な存在だと思います。ずっと削除されることなく残ることを願っています。

良く書けた英文クレームは感動を与える

先日、あるクライアントから、これまで私の会社が米国出願用に英訳した明細書についてのフィードバックを受けました。このクライアントからのフィードバックは、米国の代理人が当社が英訳した明細書を読み、気になった点をクライアントに伝え、クライアントがその点を当社に伝えるというかたちになっています。概ね好評価をいただき安心しましたが、細かい点として、ミーンズ・プラス・ファンクションの観点からのより良い表現や、訴訟を考慮した表現方法などを提案いただき、非常に有意義な打ち合わせとなりました。

また、これからも日本語にとらわれずもっともっと分かりやすい英文クレームにして欲しいという要望もいただきました。こんな要望を受ける翻訳会社も少ないと思いますが、非常に嬉しく勇気が出てくる要望です。クライアントが本当に良い使える米国特許を取りたいと考えている証拠だと思います。日本語にとらわれ過ぎた英文クレームは意味が分かりにいことが多く、意味が分からない部分は審査官に無視されるというのは山口洋一郎弁護士が講演で何度も繰り返し言っておられる通りです。

有能な特許弁護士が書く英文クレームは非常にシンプルです。それでいて、重要な点は漏らさない。こういうクレームは読んでいて感動します。これは、英語にするのが難しそうな日本語を小慣れた英語で上手く表現できているといったレベルの話ではありません。非常にシンプルでありながら、審査や訴訟に強く、且つ英文自体が上手く美しさすら感じる。私は米国特許事務所に勤務しているときにこのようなクレームを何度も目にし、自分の未熟さを痛感したものでした。

どのようにしたらシンプルで良い英文クレームが書けるようになるかというと、私も模索している途中ではありますが、例えば、日本語を読み内容を理解した上で全体を有機的にまとめて英語でアウトプットするという作業が必要だと思います。ほんの一例を『離れているものを関係付けるテクニック』で説明しています。

アメリカ大統領候補の知財政策

今週、アメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏による第1回討論会が開かれ、YouTubeで生中継を見ました。非常に面白かったです。第1回討論会は、キーテレビ局のニュースアンカーが司会を務め、各候補が自分の目指す政策について話すという進行になっています。政策については事前に発表していたことを再度話すだけなのでそんなに新鮮味はなかったのですが、楽しめたのは、討論の所々で自然に始まる候補者同士の中傷合戦でした。日本だと下品と思われて敬遠されるようなことが堂々と話され、且つ聞いていて面白い。大統領選の討論会はエンタテインメントだなと改めて思いました。大統領候補同士の討論会はあと2回10月に予定されており、今から楽しみにしています。

討論会スケジュール:
http://www.uspresidentialelectionnews.com/2016-debate-schedule/2016-presidential-debate-schedule/

大統領候補の知財政策については討論会でテーマになることはなく、知財政策自体知る機会が少ないような気がしますが、下の記事にトランプ候補とクリントン候補の知財政策らしきものが紹介されています。大雑把に言うと、クリントン候補はパテント・トロール対策の強化、トランプ候補は中国企業による侵害行為への対策強化を謳っています。

“Clinton vs. Trump: How the U.S. Presidential Election Could Impact IP Law”
http://www.wcsr.com/Insights/Articles/2016/September/Clinton-vs-Trump-How-the-US-Presidential-Election-Could-Impact-IP-Law

英文ライティングが上手くなる方法

英文ライティングが上手くなると言われている方法が
ありますのでご紹介します。

この方法では英英辞典を使います。
英英辞典を使って意味を調べている人は
多いと思いますが、

この方法は、意味を調べるのではなく、
自分で意味を英語で考える練習をする
というものです。

英英辞典には単語の次にその意味が
書いてありますが、
意味の部分を指などで隠して
見えないようにして、

単語の意味をまず英語で自分で考えます。
つまり、意味を説明する短い英語を自分で
ゼロから作っていきます。

そしてその後に英英辞典の意味の部分を見て
答え合わせをします。

まず自分で定義文を作り出してから
答え合わせをするというのが
非常に効果があると言われています。

個人的には本当に効果があったと思います。

この方法は、
以前私がある特許翻訳講座を受けた際に
講師だった弁理士の方に教えてもらいました。

教えてもらっただけでなく、受講者が
Collins English Dictionaryのポケット版
をプレゼントされるという粋な計らいを受けました。

「電車の中で携帯をいじるぐらいならこれを読め」
というお言葉とともに。

私はこういう嬉しい経験があったため
余計に一生懸命に取り組んだというのが
あるかもしれませんが、
興味のある方は是非お試しください。

名を捨てて実を取る

以前の記事で、
特許翻訳を仕事にして
生活できるようになるためには、

英検1級もTOEIC900点以上も必要ない
ということを書きました。

『特許翻訳に英検1級もTOEIC900点以上も必要ない』
http://beikokupat.com/blog/?p=53

英検1級を取ろうとする人は、
1級用の問題対策を数ヶ月の間
集中的に行なうと思います。

しかし、
一度1級合格してしまうと、
達成感に浸ってしまって、
もう英語を勉強・練習しなくなる人がいます。

1級合格後、
英語力が格段に落ちた人を
たくさん知っています。

英検1級は、
定期的に試験を受け直して
更新するような資格では
なかったと思います。

なので、
一度合格すると、
一生英検1級という称号を
持つことができます。

しかし、
上記のように
英語力が合格時から右肩下がりになり、
本当に称号だけになっている人が
たくさんいます。

そもそも、
http://beikokupat.com/blog/?p=53
でも述べたように、
英検1級を取ったからといって
英語が上手くなるわけではありません。

これから特許翻訳を目指す人は、
資格マニアになるのは辞めるべきだと思います。

「特許翻訳を仕事にする」
ことの目的は、

  • 特許翻訳が上手くなり、
  • 引き合いが多くなり、
  • 収入が上がり、
  • 家族や大切な人を養うことができ、
  • 貯金や資産運用ができ、
  • 好きなものが買え、
  • 好きなところへ旅行に行けたりする

ことではないかと思います。

このために、
英検1級などの資格を
まず目指すことは遠回りだと思っています。

ダメ翻訳回避の3原則

私は米国特許事務所時代に
次の業務を経験しました。

・明細書翻訳を米国出願用の英文明細書に書き換えること、
・オフィスアクションで拒絶されたクレーム、特に第112条(b)拒絶で意味不明と言われたクレームを書き直すこと

これらの業務を通して、
非常にたくさんのダメ翻訳に
目を通してきました。

そして、
ダメ翻訳にしないために大切なことは、
次の点に集約されるのではないかと思い至りました。

1.原文の内容を正確に理解して、
2.特許の権利範囲が狭くならないように注意しながら、
3.原文を、日本語が読めない人が容易に理解できる英語にする。
1~3のような翻訳にするための
具体的な方法を、会社のHPで解説しています。

『高品質「7つのC」』
http://goo.gl/S8TpYl

具体的に解説はしているものの、
1~3とも一朝一夕には
身につかないスキルだと思います。

特に、私も含めて、
3で苦労する人が多いのではないでしょうか。

3は、英文ライティングのスキルです。

「日本語が読めない人が容易に理解できる英語」
とは、

日本人は原文と英訳とを
見比べることができますが、

日本語が読めない
圧倒的多数の世界の人たちは、
英訳だけを読みます。

そんな人達が容易に理解できる
ような英訳にするという意味です。

しかも、特許翻訳の場合は、
1と2を消化した上で
(1と2の制約の中で)
上記のような英訳をする必要があります。

改めて、
特許翻訳はハードルの高い職種だと思います。

しかし、
英文ライティングのスキルは
コツコツと練習すれば必ず身につくと
思っています。

今後、練習方法をご紹介しています。

ダメ翻訳の烙印、35 U.S.C.§112(b)

私が米国特許事務所で
働いていたとき、
担当していた業務は、
次の2点でした。

1.日本の基礎出願明細書の英語翻訳文を米国出願用の英文明細書に書き換えること。
2.米国特許商標庁(USPTO)に提出された英文明細書を読んだ審査官から送られてくる拒絶理由通知書(オフィスアクション)への応答書を書くこと。

1はリバイズと呼び、
http://beikokupat.com/blog/?p=86
で述べた通りですが、

実にたくさんのダメ翻訳を目にし、
それを米国式に、かつ読みやすく
修正する経験を積みました。

2のオフィスアクション対応は、
新規性、進歩性、記載不備など
の拒絶理由に対して、

クライアントからの指示をもとに
応答書を英語で書くという、
これまた貴重な経験をすることが
できました。

オフィスアクションには
いろいろな拒絶理由が記載されていますが、

翻訳者にとって一番関係が深いのが
米国特許法第112条(b)(http://goo.gl/c56Dx0)に
基づく拒絶です。

この拒絶は簡単に言うと、審査官が
『この翻訳は意味不明なので書き直してください』
と言っている拒絶です。

つまりこの拒絶は、
審査官からダメ翻訳の烙印を
押されたようなものです。

意味が分からない文章をもとに
新規性や進歩性を適正に判断できるのか
疑問が湧いてきます。

したがって、
112条(b)拒絶は重大な問題で、
担当した翻訳者は責任を感じるべき
だと思います。

そして、
この拒絶が非常に多かったのを
強烈に覚えています。

この拒絶に対応するにあたり、
よく日本語の原文を読みました。

すると、
原文自体が分かりにくかったり
意味が曖昧であることが多いのに
気づきました。

翻訳者は、
分からないことを分からないまま、
曖昧なところを曖昧なままにして
翻訳したのでしょう。

分かりにくい原文を
分かりやすい英語で表現する
能力が不足していたのかも知れません。

そして、
その後始末をするのが
当時の私の仕事でした。

審査官が理解できる翻訳とは
どういうものかを身をもって体験でき、
今の仕事にはなくてはならない経験でした。

ただ、
112条(b)拒絶の問題、
つまり多くの翻訳が下手だという
現実を痛感した経験でもありました。

これがきっかけになって、
いい翻訳を提供したいと思い始め、
独立へと繋がっていきました。

リバイズとは?

私は以前、
米国特許事務所で働いていました。

担当していた業務内容は、
日本企業の米国特許出願を
手助けすることです。

具体的には、
次の2点を担当していました。

1.日本の基礎出願明細書の英語翻訳文を米国出願用の英文明細書に書き換えること。
2.米国特許商標庁(USPTO)に提出された英文明細書を読んだ審査官から送られてくる拒絶理由通知書(オフィスアクション)への応答書を書くこと。

1は通称リバイズと呼ばれ、
多くの米国特許事務所が有料で
行なっているサービスです。

料金は、
1件あたり1000ドル程度で、
主に独立クレームと明細書の形式を
米国式に修正するものです。

作業時間は、
1件あたり3時間程度にするよう
指導されていました。

3時間以上かけると赤字になるから
ということでした。

米国の特許弁護士の報酬は、
時間給(タイムチャージ)が基本です。

特許弁護士の経験や能力にもよりますが、
だいたい1時間あたり400ドル程度
だったと思います。

リバイズは1件あたり1000ドル程度と
決められているため、

タイムチャージが400ドル/時間の
特許弁護士が3時間かけてリバイズをすると、
もらうべき報酬は1200ドルとなり、
この人は200ドル分タダ働きしたことになります。

つまり、
リバイズは特許弁護士にとって
「ペイできる」仕事ではないため、
私のような弁護士資格を持っていない
スタッフの担当となります。

しかし、
私がリバイズしても人件費が
かかるため、
上記のように3時間ルールがありました。

この3時間の間に集中して
英文明細書を仕上げる作業を
何百件とこなしました。

この経験が今の仕事に非常に
役に立っています。

基礎出願を単に英訳したものに
過ぎない翻訳文を、

いかにして米国で通用する明細書に
修正していくのかを叩き込まれたからです。

なお、
このリバイズはあくまでも
オプションのため、

基礎出願の翻訳文をリバイズなしで
そのまま米国出願するようにという
クライアントからの依頼もありました。

このような案件を
「Just file」(ただ出願する)
と呼んでいました。

Just fileの案件は、
リバイズされていないので、
全体が米国形式になっておらず、
クレームも米国式に修正されていないため、
拒絶される可能性が高いと思われます。

これは2の業務に繋がってきますが、
次回述べたいと思います。