米国特許翻訳社の運営について

チームで仕事をしていく

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先日、知り合いの特許翻訳者の方と話す機会がありました。そこで、なぜ私は特許翻訳の会社を作ったのかと質問を受けました。この質問は、特許翻訳者として仕事をするのであれば、個人事業主であればよく、わざわざ会社を作る必要はないのではないか、という考えからきているのだと思います。私が会社を作った理由は「いい特許翻訳がしたい!」(http://beikokupat.com/blog/?p=1)で書いています。また、もう1つ大きな理由を「当社の目的」(http://beikokupat.com/blog/?p=121)で書いています。ここに書いているように、当社のクライアントには百年以上の歴史があるところがあり、もちろん、その歴史はこれからもずっと続いていくことが予想されます。このようなクライアントに、求められる限りずっと良いサービスを提供していくこと、また求められるように努力していくことを当社の理念としています。そのためには、良いサービスを提供し続けるために、良い特許翻訳者を育成していくことが必要で、カリスマ的翻訳者を中心に業務が回り、カリスマがいなくなった途端サービスの質が落ちるというようなことがあってはいけないと考えています。このためには、法人化して特許翻訳者を育成して働く場を作ることが必要だと考えました。また、歴史あるクライアントを相手に個人事業主として一人で業務を請け負っていると、いつか引退するときがきて、「今日で引退するのでもう仕事は受けられません」といった状況が予想され、これまで可愛がってくれたクライアントに対して失礼なことになると考えています。あるいは、自分は生涯現役翻訳者だと標榜したとしても、いつ何があるかは誰にも分からず、案件を担当している最中に何かあって仕事を放り出さなければならなくなったとしたら大迷惑だと思います。このような理由で、私は会社を作って仲間とともにチームで仕事をしていこうと決めました。私は責任者として、特許翻訳者という職人としての技量だけでなく、労務管理や経理業務などを含めたマネジメントの能力が問われます。今後は後者により力を入れていきたいと思っています。

どんなに忙しくても研究する時間をとる

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今週もほぼ毎日、早朝から深夜までずっと翻訳をしていました。普段仕事ばかりして、本を読むなどの研究をしないと進歩がないとはよく言われることです。進歩がないというのは自分では分かりにくいことですが、実際は怖いことだと私自身実感してきたので、毎日どんなに忙しくても研究の時間をとるようにしています(トレーニングの時間も)。当社は米国特許翻訳社という社名ですが、この社名にした理由の1つは、このような大それた社名にすることで、否が応でも米国特許について研究せざるを得ない状況に自分たちを追い込むことができると考えたからです。先日、お世話になっている方から『Patent Practice』というパテントバー受験用のテキストを譲り受けました。本業である翻訳とは直接は関係のないトピックが含まれているかも知れませんが、米国特許に関するあらゆることを知っておくことが当社の義務だと思っています。また、後々どんな情報が翻訳に役立つか分からないので、翻訳者としてはこんな本を読むべきだと自分で決めつけず、人から勧めらたものは先入観をもたずに読むことにしています。

内容に踏み込んだ翻訳をする

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このところ、早朝から深夜までずっと翻訳をしています。当社では基本的に社内で翻訳をすることにしており、一度に案件が増えすぎて社内で対応しきれなくなった場合にのみ、信頼できる外部の翻訳者さんに翻訳を依頼しています。今は割りと忙しい時期で、私も翻訳者としてフル稼働している上に、外部の翻訳者さんにも目一杯仕事を依頼している状況です。こういうときに更に翻訳依頼がきた場合は、納期を伸ばしてもらうか、それが無理な場合はお断りすることにしています。外部の翻訳者を増やして翻訳キャパを増やすことも可能ですが、付き合いが浅くまだ実力と人柄がよく分からない翻訳者に仕事を依頼するのは抵抗があります。また、翻訳を外注した場合、必ず社内で翻訳を隅から隅までチェックしており、出来の悪い翻訳だと修正するのに自分たちで翻訳するより時間がかかったりして何をやっているのか分からなくなります。外注した翻訳を文法や訳抜け、形式などのチェックのみ行ってクライアントに納品するという翻訳会社もあると思いますが、それだとここで詠まれている名川柳のようになります。もともとの原因と思われることが、『特許翻訳の実務』という本に書いてあります。

一部の翻訳会社や翻訳者は、迷ったら直訳あるいは逐語訳にするという態度で仕事をしているケースがあるが、直訳や逐語訳をすることによって内容が不明確になったり、かえって内容に意味が追加されたり、ひどい場合は、上の例のように意味が変わってしまう場合さえある。翻訳文において、翻訳先の言語を母語とする人たちが理解できなくなるようなことはあってはならないはずであるにもかかわらず、日本からくる翻訳文は何が書いてあるかさっぱり分からないと現地代理人から言われることが多いのは、このよう一部の翻訳会社や翻訳者の態度によるものである。(p.99)

当社がこのような仕事をすると、クライアントが当社に依頼してくれた意味がなくなり、この会社を始めた意味がなくなります。やはり、1件1件、原文をよく読みよく考え、技術的にも特許的にも内容にまで踏み込んだガチンコ勝負の翻訳をすることが当社の存在意義だと考えています。

「機械翻訳の現状レポート」

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翻訳業界誌『Amelia』の2017年5月号に「機械翻訳の現状レポート」という特集記事が載っていました。以前から、日本語をソース又はターゲットとした機械翻訳(MT, Machine Translation)は精度に問題があると言われていましたが、この特集によると、現状でもまだ満足のいくMTはできていないようで、ポストエディットと呼ばれる、人間によるレビューがなくてはならないそうです。現状では、MTは社内用の資料など、高い翻訳品質が求められないものによく使われているとのことです。ちなみに、10年以上前に、私はビル・ゲイツ氏の講演を聞きに行ったことがり、そこでゲイツ氏は、完璧なMTの実現は無理だと思うと言っていました(現在は考えが変わっているかも知れません)。

ここで言うMTは、翻訳を最初から最後まで機械に任せる(任せたい)という意味でのMTだと思われますが、多くの翻訳者にとって、MTは翻訳支援ツール(CAT, Computer Aided Translation, キャット)のことを指します。当社もCATを使うことによって「機械+人間」(p.8)による翻訳をしています。つまり、「辞書を引いたり翻訳メモリ*に当たったりなど機械にできることは機械に任せ、翻訳者は人間にしかできない最終判断や表現のブラッシュアップを行う」(p.4)、「機械と人間が力を合わせて翻訳を仕上げていく」(p.7)という方針を当社も採用しています。

この特集で、遠野和子さんという翻訳者が書かれている『人間にしかできない、状況を判断し意図をくみ取った訳を』(p.8)と題した文章に激しく同意しました。文章の中で、人間が機械に負けない点として、次の3点が挙げてられています。

①文脈をつかみ、言葉ではなく意味を訳す
②状況に合わせて文体や表現を選ぶ
③筆者の意図まで読み込み、くみ取った訳文を書く
(p.8)

そして、①~③の結果、「クライアントから「元の日本語より英訳を読んだほうがわかりやすい」と言われたことがありますが、翻訳者として最上の褒め言葉だと嬉しく思いました」(p.8)と書かれています。原文よりも訳文を読んだ方が意味が分かりやすいというのは、まさに当社が目指してきたことです。遠野和子さんの文章と同様のことを次の記事に書いています。

『人力翻訳の生きる道は「血の通った」翻訳』
http://beikokupat.com/blog/?p=60

起業すると本気度と面白さが格段に違う

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昨日の日経新聞に載っていた次の記事を興味深く読みました。

『三井物産が新制度 社内ベンチャー、社員本人が出資』
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO15514730Z10C17A4TJC000/

三井物産は従業員本人が出資する社内ベンチャー制度を導入する。社内でアイデアを募集、成長性や事業性を判断した上で本人と三井物産が出資して新会社を立ち上げる。2018年1月にも1社目を設立し、法務や財務面で支援をし、3年で軌道に乗せることをめざす。起業意欲のある従業員を活用しつつ、出資を義務付けて経営能力を持つ人材を育成する。

私がなぜ起業したのかについては過去に何度か書きましたが(例えば、http://beikokupat.com/blog/?p=1)、起業して一番の発見だったのは、勤め人として与えられた仕事をやっていた以前と、起業して自分で作り出した仕事をしている今とでは本気度と面白さが格段に違うということです。不安や問題はいろいろとありますが、それをはるかに上回る面白さが今はあります。私がサラリーマン時代に得た知識や経験は、今の仕事をする上で絶対に欠かせないものなので、サラリーマン時代は私にとってなくてはならない時期だったと言えます。しかし、起業してからの毎日の面白さを知ってしまった今、もう一度サラリーマンに戻れるかと問われると、余程興味をそそられる仕事内容でない限り、答えはNOです。

ある経営者が、会社経営はゲームに似ていると言っていました。サバイバルゲーム、あるいは売上げという数字を獲得するためのゲームに似ていると。起業して5年経った今、この言葉が何となく分かる気がします。スマホゲームにハマる人もいれば、私のように会社経営というゲームにどっぷりとハマる人もいると言えるかも知れません。但し後者の嗜好の場合、雇用を生んだり他人の仕事スキルを上げるといった社会的意義が前者よりもあると思います。

※全くの余談ですが、楽天証券のアカウントを作ると、日経の記事を無料で閲覧することができます。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/service/investment/nikkei.html

私が会社でやっていること

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先日、このブログを読んでくださっている方から、私は普段翻訳をしているのかと聞かれました。翻訳会社によっては、代表は会社のマネジメントのみを行い、翻訳はしないというところもあるため、このような質問をされたのだと思います。私の場合は、毎日3〜4時間ほど翻訳をしています。残りの時間は、他の翻訳者が翻訳した特許クレームを米国式に書き換える作業や、マンツーマンで行っている翻訳講座の受講者への指導、経理などの事務作業をしています。給与体系は他の翻訳者と同じで、行った翻訳の量に応じた給料を会社からもらっています。社長だけ高い給料を取ったり、個室を持ったり、掃除当番に含まれていないといった偉そうなことは嫌いで、あくまでも一翻訳者としての待遇にしてできる限りフェアにいきたいと思っています。

赤坂スペイン坂の桜

4月です。当社は新卒社員もおらず、また決算月も9月ということもあり、4月に特に思い入れのない活動をしていますが、近所に桜の名所がある今のオフィスに引っ越してきてからは、桜を至近距離で見ることができる機会が増え、4月が楽しみになっています。赤坂にあるスペイン大使館の前にスペイン坂と呼ばれる坂があり、この坂沿いの桜が満開になりつつあります。

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“Amelia” 2017年2月号

翻訳業界誌“Amelia”の2017年2月号において、当社が紹介されています。
http://www.amelia.ne.jp/user/info/history/backnumber_top.jsp
『会社訪問記』という見開き2ページの記事で、“Amelia”編集者の方々が去年取材に来て下さいました。会員専用の記事で転載不可のため、残念ながらこのブログに載せることができませんが、当社がどんな会社かについて1時間30分にわたって私が話し、それを編集者の方々がうまく記事にまとめて下さっています。

税理士事務所との付き合いについて

私の会社では、経理関係の業務を税理士事務所に委託しています。これまでに、2つの税理士事務所とお付き合いしてきました。1つ目の税理士事務所には創業から3期目までお世話になり、その後事情があって2つ目の税理士事務所に委託先を変え、今に至っています。1つ目と2つ目の税理士事務所は、顧客(私)への対応の仕方がまったく異なり、2つ目の税理士事務所の方が自分自身の成長のためには良いと私は思っています。

1つ目の税理士事務所は、私が素人社長であったためか、登記の仕方や弥生会計の使い方など、社長業務の初歩の初歩から丁寧に教えてくれました。また、親身になって相談にものってもらいました。私の話に熱心に耳を傾け、頻繁に頷いたりメモをとったりしてくれたので、話をしていて心地よかったです。あるいは、私が仕事で何か工夫を思いついたり、誰か新しい人に会ったと言えば、「いいですね」「すごいですね」といった肯定の言葉をかけてくれました。たとえ私のやったことが会社の売上げに結びつかなかったとしても、頑張り自体を評価してくれるような事務所だったと思います。今思えば、カウンセリングを受けているような心境で、話を聞いてもらえるだけで嬉しく、月1回の打ち合わせが楽しみでした。

それに対して2つ目の税理士事務所は、非常にドライです。この事務所が重視するのは数字、つまり売上げです。業務上の話はもちろん聞いてはくれます。しかし、もともと特許翻訳というマニアックな仕事の話なので共感し難いのかも知れませんが、私のやったことが売上げにどうつながったかという話にもっていかないと、オチのない話を聞いたあとのような、何かどんよりとした空気になります。口には出さなくても、相手が「それで?」と思っているのが伝わってきます。この事務所のこういう性格に当初は戸惑いましたが、今では、こういう対応をしてくれた方が自分自身の成長のためには良いと思っています。どんなに自慢話や苦労話を語っても、数字がすべてを物語っているということです。また、会社をやっていく人間としては、褒められたから頑張るというのではダメでしょう。褒められなくても頑張る、批判されても頑張る(むしろもっと頑張る)、でないと。今は、売上げという結果が伴った話だけを事務所とするようにしています。

もっとも、これは、私が会社をやっていく上でこういう突き放した対応をしてくれた方がいいと思っているのであって、私が人に対してこういう態度をとりたいと言っているのではありません。特に、スタッフに対しては、1つ目と2つ目の税理士事務所の対応を合わせたような、硬軟おり交ぜた対応が必要かと思います。つまり、数字という現実も説明しつつ、頑張り自体も評価すべきなのだと思います。

今年も面白い年に

新年明けましておめでとうございます。今年も、面白い年にすべく、いくつか計画を立てています。1つには、久々に新しい社員を募集する予定です。これまでは、即戦力となる翻訳者だけを迎えてきましたが、今後は、多少スキルが足りない方でもいいかなと思っています。多少スキルが足りない方でも、時間をかけてじっくりと一流に育てて、会社を代表するような名翻訳者にするという活動にも重点を置きたいと思います。

さて、年始は、友人家族と一緒に香港で過ごしました。香港は日本から5時間程度で行くことができ、夜景が美しく、現地の食べ物も個人的に好きなこともあって、毎年数回訪れています。元日に京都の神社へ初詣に行った後、友人家族と合流し、そのまま関西国際空港から香港へ向かいました。香港では、九龍(カオルーン)にある中華料理の名店「夜上海(イエ・シャンハイ)」で新年会をして、翌日は香港ディズニーランドを初めて訪れ、ほぼすべてのアトラクションを回りました(香港DLは客が比較的少なく、アトラクション前に並ぶ列ができず、すぐ入ることができて穴場です)。他の日は、泊まっていたホテルの温水プールで過ごし、Kindleに溜まっていたたくさんの電子書籍を読みました。わずか2泊3日の香港旅行でしたが、非常に有意義に過ごせました。

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