米国特許翻訳社の運営について

海外在住の翻訳者について

当社には、時々、海外在住の方が外注翻訳者として応募してきてくださいます。当社は海外在住の翻訳者との取引実績は少なく、現在のところ、海外在住の翻訳協力者は1人しかいません。特に海外在住の方に厳しい条件を設けている訳ではないですが、当社では大部分の翻訳を社内で行っている上、国内に既に信頼できる外注翻訳者がいるため、海外在住の方に翻訳を依頼するのは、ごくたまに上記1人の方に依頼する機会があるというのが現状です。

一般的に、海外在住の翻訳者は、時差の問題ですぐに連絡が取りづらい、あるいは必要なときに直接会うことが難しいなどの問題があると思います。遠くに住んでいて「顔が見えづらい」翻訳者に、大切な翻訳案件を一任することへの不安というものもあるかも知れません。当社の場合、海外在住の方に翻訳を依頼するのは、こういったことが問題にならない場合や、その人に依頼することのメリットがこういった問題を上回る場合になると思います。例えば、現在当社がお世話になっている上記の翻訳協力者は、常に連絡がつきやすいように工夫してくれているため、国内の翻訳者とやり取りするのと変わりません。また、翻訳が非常に上手い上に、米国をはじめとした各国の特許制度の動向を常にアップデートする努力をしており、翻訳以上のものを提案してくれるというアドバンテージがあります。仮に私が海外でフリーランス翻訳者として活動するとしたら、この人のようにサービス精神旺盛なスタイルになると思います。

工場見学は面白い

お客様の会社に年度末の挨拶に行った際、工場を見学させていただきました。それまで図面やYouTubeなどでしか見たことがなかった製品を実際に見ることができて、今後の翻訳に役立つに違いない貴重な体験をすることができました。また、以前お客様に技術内容に関して口頭で説明してもらったとき、いまいちピンとこなかったことがあったのですが、工場で実物を見た途端、説明の意味がはっきりと分かりました。まさに百聞は一見に如かずです。

今回見せてもらった工場は、工場全体の進行状態を画面一つで確認することができる、スマートファクトリーになっていました。また、もちろんオートメーション化がかなり進んでいて人がまばらな上、工場全体がとてもクリーンで、製品の展示ルームと見間違えるような空間でした。「工場」というと雑然としたイメージをもっていましたが、現在の工場はまさにスマートなファクトリーになっていることが分かりました。

普段パソコンの前にへばりついている翻訳者にとって、たまには翻訳対象となっている実物を工場で見たり、現場の空気を感じたりすることは非常に仕事にプラスになると思いました。また、工場の中を見て回るのは単純に面白かったです。今回、一介の翻訳会社に対してこのような機会を与えてくれ、長時間工場を案内していただいたお客様に感謝です。

1件1件の翻訳にじっくりと取り組む

先日、新規のお客様から翻訳のご依頼をいただきました。このお客様は、それまで複数の翻訳会社に翻訳を依頼していたものの、いずれの会社の翻訳にも満足できず、今回当社を試してみようということになったそうです。それまで依頼していた翻訳会社は、どこも高品質を「ウリ」にしていたものの、実際に納品されてくる翻訳は、高品質とは程遠いものだったということです。上手とはいえない翻訳者が下訳を担当し、それがほとんどチェックされることなく下訳レベルのまま納品されてくるという、営業担当者が熱く語っていた高品質とは正反対の「右から左」の翻訳が量産されてきたのだとか。

このように、チェック体制がほとんど機能していない現状では、下訳担当者の力量が非常に重要になってくると言えると思います。上記の下訳担当者は、一生懸命取り組んだに違いありませんが、力量のない翻訳者がいくら一生懸命取り組んだとしても、ダメなものはダメだという厳しい現実があります。私も、残念な翻訳を前に「私なりに精一杯やりました」と話す翻訳者を過去に何人も見てきました。

今回のように、当社を頼って声をかけていただけるのは非常に嬉しいことです。こういった引き合いがある度に、他の人から必要とされることの有り難みを感じます。このご縁を大切にするとともに、お客様が翻訳会社に対してこれ以上不信感を抱かないためにも、依頼された翻訳に「一生懸命」取り組んでいます。いい翻訳を生み出すための基本は、やはり時間をかけてじっくりと取り組むことだと思います。そうすることで、原文作成者の意図を汲み取った翻訳にできることが多く、これは依頼主にとって非常に嬉しいことです。このような基本姿勢で1件1件の翻訳に体当たりで臨むということを忘れてはいけないと思っています。

労務管理を勉強する

チームで仕事をしていく』で書いたように、私は自分で経験したことや勉強したことを仲間とシェアして共に成長していきたいと常々思っています。そして、仲間とチームで仕事をしていくにあたり、職場をブラックな環境にすることのないように気をつけています。その一環として、労務管理の勉強を自分なりにしています。労務関連の本を読んだり、労働基準法を読み直したり、何年も前に作った就業規則を定期的にアップデートしたりしています。

労務管理の勉強をして思うことは、現在は労働者が手厚く保護されるように法整備がされているということです。会社でまかり通っている慣習が、実は労働者の権利を侵害していることがあるので気をつけなければならないと本当に思います。私の周りには、幸いなことに、自分の仕事が本当に好きな人が集まってくれています。しかし、仲間が仕事が好きだということに甘えて、過酷な労働環境を強いるようでは、チームとして長続きしないことは目に見えています。

私が愛読している『ビジョナリー・カンパニー』で紹介されている数々のビジョナリーな会社のなかには、ビジョナリーが過ぎてブラックな一面をもってしまっている会社があります(例えば、某世界的テーマパーク)。この本を読んでいると、ビジョナリー・カンパニーとブラック企業は紙一重だなと感じることがあると同時に、仕事が好きすぎるとこうなってしまうのも分かる気がする、と共感している自分がいました。あまりに『ビジョナリー・カンパニー』を盲信して仲間に迷惑をかけないように気をつけねばと思っています。今後、労務管理をもっともっと勉強して、職場環境の充実を図っていきます。

チームで仕事をしていく

愛読書『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』

日英特許翻訳で「売れる」ためのスキル

以前のブログ記事『洋書を読まない特許翻訳者の特徴』において、日英特許翻訳者にとっての洋書を読むことの重要性について書きました。しかし、特許翻訳者を目指す方で、洋書を読んだことがない、洋書を読むのが苦手という方を何人も見てきました。そんな方に対して言いたいことは、心配いりません、現実は、洋書が読めることは日英特許翻訳の仕事をしていく上で必須要素ではありません、ということです。洋書が読めなくても、その他のスキルでもって日英特許翻訳の仕事を受け続けている人が大勢います。以下、この「その他のスキル」について書きたいと思います。

当社は、『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』に書かれているように、例えば米国特許訴訟において、英語しか読めない陪審員にとって分かりやすい英語が書けることを目指しています(これを仮にネイティブ指向と呼びます)。そのために、日常的に洋書やインターネットの英文記事などを読んで良い英文に触れておくことは重要だと考えています。その一方で、日本人のお客様にとって読みやすい英語を書くことも、売れる翻訳者としての一つスキルと言えると思います。洋書から拾ってきたお客様に馴染みがない英語表現を使うよりも、ジーニアス英和辞典で簡単に調べられるような表現を使う方が、お客様思いのおもてなしの翻訳と言えるかも知れません(これを仮にお客様指向と呼びます)。また例えば、『あの手・この手の特許翻訳―誰でも使えるパソコン活用術入門』には、著者が心がけていることとして、原文の語順に訳文の語順を合わせることが書かれています。これも、お客様が原文と訳文を見比べながらチェックしやすいようにというお客様指向の翻訳の一例です。たとえ、お客様指向の翻訳が『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』で指摘されているような数々の問題を引き起こしてきたとしても、それはお客様に求められたものを提供してきた結果であり、お客様に求めにきちんと応える翻訳者が売れる翻訳者と言えるのかも知れません。どんな商売も、潔癖さを求めるよりも、(言い方は悪いですが)清濁併せ呑む態度で臨んだ方がお客様に好まれるのは明らかだと思います。よく、「お金に色はない」と言われます。例えば、10万円分の翻訳の仕事を依頼されたとして、ネイティブ指向の翻訳とお客様指向の翻訳のどちらをしたとしても、銀行口座に振り込まれるのは同じ10万円であって、この10万円には何の違いもなく、どちらも翻訳者が貴重な時間と労力を注ぎ込んで生み出した尊い10万円です。

「翻訳者あるある」として、次のようなものがあります。会合などで、異業種の人(社会的地位の高いおじさまが多い)に、翻訳という仕事は、言語だけでなく文化も理解している人でないと務まらない、という「有り難い」アドバイスをいただくというものです。しかし、お客様指向の日英特許翻訳では、ここまでできなくてもやっていけるという『特許翻訳者のあるべき姿』とは程遠い現実があります。当社は、お客様指向の翻訳もネイティブ指向の翻訳もどちらもできます。ネイティブ指向の翻訳を求められたときに、上辺だけでなく本当に使える翻訳を提供できる翻訳者がどれだけいるか(『育たない特許翻訳者、育てない特許事務所-翻訳とは意訳なり─』)。そんな翻訳者になれるように、日々研究を重ねています。

洋書を読まない特許翻訳者の特徴

特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために

特許翻訳者のあるべき姿

※当社はアマゾン・アソシエイトに登録しており、上記リンクからの購入により当社に紹介料が入る仕組みになっています。紹介料は当社ホームページの運営費に充てています。

今年も大きな出会い

「安藤忠雄展―挑戦―」の特設売り場で買った本『安藤忠雄 仕事をつくる』を、今週ずっと仕事の合間に読んでいました。安藤氏のシンプルで美しい建築の裏には、泥臭い作業と地道な交渉事があることを改めて知り、なぜか元気づけられました。また、安藤氏の作品は、決して彼一人の力や才能でできたものではなく、チームとしての多くの人の助けがなければ成し得なかったことも改めて知りました。今後、会社をもっと強いチームに育てたいと思っている私にとって、良い本との出会いでした。

チームといえば、毎回欠かさず観た今年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』は、井伊家という弱小チームが戦国時代を生き延びていく様子が描かれ、零細企業を運営している者としては、領主・井伊直虎にシンパシーを感じずにはいられませんでした。小さなチームをうまく続けていくための一つのキーポイントは、人を大切にするということのようです。

人を大切にするといえば、今年も幸いにして、仕事上の良い出会いがいくつかありました。なかには、「新たな出会いは残念な結果になることも往々にしてあるのですが、今年は大島さんにお会いできて本当に良かったと思っています。」と言ってくださった方もいました。『大きな出会い』でも書いたように、こういう出会いを大切にすることが当社のような弱小チームにとって重要なことはもちろん、損得抜きに、こういった方を大切にしていきたいと心底思っています。家族以外で大切にしたいと思える人ができたことは、会社を始めて本当に良かったと思えることの1つです。

建築英文記事は構造表現の勉強になる

大きな出会い

 

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当社にしかできないことをやる

先日、会社の第6期決算が終わりました。決算書は会社の1年間の通知表のようなものだと思いますが、新しい決算書を見る度にいちばん感じることは、ずっと仕事を依頼し続けてくれているクライアントへの感謝です。世の中には、優秀な翻訳者はたくさんいると思います。実際、私が過去に行った特許翻訳セミナーの受講者のなかにも、非常に上手い特許翻訳をする人が何人もいました。当社は特許翻訳がもっともっと上手くなりたいと思い日々研究していますが、それは他の会社も同じだと思います。そういったなかで、当社を選んで依頼してくれるクライアントには感謝しかありません。

正直に言って、現在のクライアントから当社のどこが評価されているのかははっきりとは分かりません。ただ、これまで、当社にしかできないことをやりたいと思いながら活動してきました。特許翻訳のサービスを行う会社が世の中に既に氾濫していたなかで創業した当社にとって、他との差別化こそが生きる道だと思ったからです。これからは、この差別化をもっと進めていくとともに、当社を支えてくれる「米国特許翻訳者」の育成にこれまで以上に力を入れていこうと思っています。

チームで仕事をしていく

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先日、知り合いの特許翻訳者の方と話す機会がありました。そこで、なぜ私は特許翻訳の会社を作ったのかと質問を受けました。この質問は、特許翻訳者として仕事をするのであれば、個人事業主であればよく、わざわざ会社を作る必要はないのではないか、という考えからきているのだと思います。私が会社を作った理由は「いい特許翻訳がしたい!」(http://beikokupat.com/blog/?p=1)で書いています。また、もう1つ大きな理由を「当社の目的」(http://beikokupat.com/blog/?p=121)で書いています。ここに書いているように、当社のクライアントには百年以上の歴史があるところがあり、もちろん、その歴史はこれからもずっと続いていくことが予想されます。このようなクライアントに、求められる限りずっと良いサービスを提供していくこと、また求められるように努力していくことを当社の理念としています。そのためには、良いサービスを提供し続けるために、良い特許翻訳者を育成していくことが必要で、カリスマ的翻訳者を中心に業務が回り、カリスマがいなくなった途端サービスの質が落ちるというようなことがあってはいけないと考えています。このためには、法人化して特許翻訳者を育成して働く場を作ることが必要だと考えました。また、歴史あるクライアントを相手に個人事業主として一人で業務を請け負っていると、いつか引退するときがきて、「今日で引退するのでもう仕事は受けられません」といった状況が予想され、これまで可愛がってくれたクライアントに対して失礼なことになると考えています。あるいは、自分は生涯現役翻訳者だと標榜したとしても、いつ何があるかは誰にも分からず、案件を担当している最中に何かあって仕事を放り出さなければならなくなったとしたら大迷惑だと思います。このような理由で、私は会社を作って仲間とともにチームで仕事をしていこうと決めました。私は責任者として、特許翻訳者という職人としての技量だけでなく、労務管理や経理業務などを含めたマネジメントの能力が問われます。今後は後者により力を入れていきたいと思っています。

どんなに忙しくても研究する時間をとる

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今週もほぼ毎日、早朝から深夜までずっと翻訳をしていました。普段仕事ばかりして、本を読むなどの研究をしないと進歩がないとはよく言われることです。進歩がないというのは自分では分かりにくいことですが、実際は怖いことだと私自身実感してきたので、毎日どんなに忙しくても研究の時間をとるようにしています(トレーニングの時間も)。当社は米国特許翻訳社という社名ですが、この社名にした理由の1つは、このような大それた社名にすることで、否が応でも米国特許について研究せざるを得ない状況に自分たちを追い込むことができると考えたからです。先日、お世話になっている方から『Patent Practice』というパテントバー受験用のテキストを譲り受けました。本業である翻訳とは直接は関係のないトピックが含まれているかも知れませんが、米国特許に関するあらゆることを知っておくことが当社の義務だと思っています。また、後々どんな情報が翻訳に役立つか分からないので、翻訳者としてはこんな本を読むべきだと自分で決めつけず、人から勧めらたものは先入観をもたずに読むことにしています。

内容に踏み込んだ翻訳をする

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このところ、早朝から深夜までずっと翻訳をしています。当社では基本的に社内で翻訳をすることにしており、一度に案件が増えすぎて社内で対応しきれなくなった場合にのみ、信頼できる外部の翻訳者さんに翻訳を依頼しています。今は割りと忙しい時期で、私も翻訳者としてフル稼働している上に、外部の翻訳者さんにも目一杯仕事を依頼している状況です。こういうときに更に翻訳依頼がきた場合は、納期を伸ばしてもらうか、それが無理な場合はお断りすることにしています。外部の翻訳者を増やして翻訳キャパを増やすことも可能ですが、付き合いが浅くまだ実力と人柄がよく分からない翻訳者に仕事を依頼するのは抵抗があります。また、翻訳を外注した場合、必ず社内で翻訳を隅から隅までチェックしており、出来の悪い翻訳だと修正するのに自分たちで翻訳するより時間がかかったりして何をやっているのか分からなくなります。外注した翻訳を文法や訳抜け、形式などのチェックのみ行ってクライアントに納品するという翻訳会社もあると思いますが、それだとここで詠まれている名川柳のようになります。もともとの原因と思われることが、『特許翻訳の実務』という本に書いてあります。

一部の翻訳会社や翻訳者は、迷ったら直訳あるいは逐語訳にするという態度で仕事をしているケースがあるが、直訳や逐語訳をすることによって内容が不明確になったり、かえって内容に意味が追加されたり、ひどい場合は、上の例のように意味が変わってしまう場合さえある。翻訳文において、翻訳先の言語を母語とする人たちが理解できなくなるようなことはあってはならないはずであるにもかかわらず、日本からくる翻訳文は何が書いてあるかさっぱり分からないと現地代理人から言われることが多いのは、このよう一部の翻訳会社や翻訳者の態度によるものである。(p.99)

当社がこのような仕事をすると、クライアントが当社に依頼してくれた意味がなくなり、この会社を始めた意味がなくなります。やはり、1件1件、原文をよく読みよく考え、技術的にも特許的にも内容にまで踏み込んだガチンコ勝負の翻訳をすることが当社の存在意義だと考えています。