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ダメ翻訳の烙印、35 U.S.C.§112(b)

私が米国特許事務所で
働いていたとき、
担当していた業務は、
次の2点でした。

1.日本の基礎出願明細書の英語翻訳文を米国出願用の英文明細書に書き換えること。
2.米国特許商標庁(USPTO)に提出された英文明細書を読んだ審査官から送られてくる拒絶理由通知書(オフィスアクション)への応答書を書くこと。

1はリバイズと呼び、
http://beikokupat.com/blog/?p=86
で述べた通りですが、

実にたくさんのダメ翻訳を目にし、
それを米国式に、かつ読みやすく
修正する経験を積みました。

2のオフィスアクション対応は、
新規性、進歩性、記載不備など
の拒絶理由に対して、

クライアントからの指示をもとに
応答書を英語で書くという、
これまた貴重な経験をすることが
できました。

オフィスアクションには
いろいろな拒絶理由が記載されていますが、

翻訳者にとって一番関係が深いのが
米国特許法第112条(b)(http://goo.gl/c56Dx0)に
基づく拒絶です。

この拒絶は簡単に言うと、審査官が
『この翻訳は意味不明なので書き直してください』
と言っている拒絶です。

つまりこの拒絶は、
審査官からダメ翻訳の烙印を
押されたようなものです。

意味が分からない文章をもとに
新規性や進歩性を適正に判断できるのか
疑問が湧いてきます。

したがって、
112条(b)拒絶は重大な問題で、
担当した翻訳者は責任を感じるべき
だと思います。

そして、
この拒絶が非常に多かったのを
強烈に覚えています。

この拒絶に対応するにあたり、
よく日本語の原文を読みました。

すると、
原文自体が分かりにくかったり
意味が曖昧であることが多いのに
気づきました。

翻訳者は、
分からないことを分からないまま、
曖昧なところを曖昧なままにして
翻訳したのでしょう。

分かりにくい原文を
分かりやすい英語で表現する
能力が不足していたのかも知れません。

そして、
その後始末をするのが
当時の私の仕事でした。

審査官が理解できる翻訳とは
どういうものかを身をもって体験でき、
今の仕事にはなくてはならない経験でした。

ただ、
112条(b)拒絶の問題、
つまり多くの翻訳が下手だという
現実を痛感した経験でもありました。

これがきっかけになって、
いい翻訳を提供したいと思い始め、
独立へと繋がっていきました。

特許翻訳での早い、安いというサービス

私の会社は、
特許分野の日英翻訳、
つまり日本語から英語への翻訳を
専門にしています。

日英翻訳を仕事にして
お金をもらっている以上、

英語ライティング力を
常に磨くことが
必要だと考えています。

ここで、
「必要だと考えています」
と書いたのは、

特に特許翻訳では、
日英翻訳で食べていくにあたって、
英語ライティング力を
常に磨く必要はない
という考え方もあるからです。

世の中には
いろいろなお客さんがいます。

品質の良いものを求める人がいる一方、
スピードと安さを重視する人もいます。

『全部で100ページある特許明細書を
3日で訳して欲しい。しかも安く。
その代わり、高い品質は求めない。』

このような依頼は、
うちの会社としては受けたくない
ものですが、
現に需要として存在します。

こんな需要にきちんと応えるのも、
1つの特許翻訳の商売の形かも知れません。

企業の大切な特許を守るために
非常に重要な役割を果たすのが
翻訳ですが、

他の商売と同様、
安さとスピードというサービスが
入り込む余地がないとは言えません。

この場合、
強い特許になるか、
世界に通用する英語か、
といった尺度は無視される
かもしれませんが。

ただ、
私の会社ではこのような方針は
採用していません。

お客さんが
海外で強い特許を取りたいと
考えたときに、

翻訳会社としてまずうちの会社が
思い浮かぶような、
そんな会社になるように、
英語ライティング力を磨く努力は
欠かしません。

但し、
安さとスピードという、
商売の基本とも言える方針も
考慮に入れて、

良いものを、
早く、
安く

提供できるよう
英語ライティング力と
同じぐらい努力する必要がある
と考えています。