0年 0月 の投稿一覧

大きな出会い

あっという間に年の瀬になりました。私の会社はもう休みに入っていますが、私自身は今週ずっと出勤して翻訳と事務仕事をしています。年末まで忙しくさせてもらえるというのは有り難いと思うと同時に、忙しさが続くのは仕事を工夫していない証拠だとビジネス本で読んだことがあり、確かに心当たりがあり、まだまだ工夫が足らないのかなと反省もしているところです。

さて、今年は、当社にとって非常に大きな出会いがありました。当社は、どちらかというと我が道を行くタイプで、普段、こだわりをもって仕事をしているつもりでしたが、これでいいのかとときに悩むことももちろんありました。そんな中、今年の大きな出会いがあり、これまで自分たちがやってきたことに対して自信を持つことができ、またこれから自分たちがやるべきことが明確になりました。と同時に、まだまだこだわりが足りず、努力を重ねてもっともっと先鋭化しなければならないことを認識しました。

また、今回の出会いで、応援してくれる人がいるというのはやはりいいものだなと実感しています。当社のような人脈も広くなく変わったことをしている会社を気に入ってくれるというのは有り難いことで、このような人との縁を、社内・社外を問わず、これからも大切にしていきたいと思います。

年末の恒例

年末になりました。今年も、定期的に翻訳依頼をいただいているクライアントから来年のカレンダーが届きました。毎年、12ヶ月すべてがF1の写真で埋め尽くされ、F1好きだった元少年の心をくすぐるカレンダーになっており、毎年届くのを楽しみにしています。
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このクライアントは当社が創業した当時からのお付き合いで、知的財産権の活用について、企業としての立場から率直な意見をいつもいただいており、当社が企業の立場になって特許翻訳をするという方針で活動するようになったきっかけを与えてくれた存在でもあります。また、実は、私は過去に何度か「ヘマ」をしたことがあり、にもかかわらず、変わらず仕事を依頼し続けてくれたことに深い恩を感じています。このことを含めたお付き合いを通して、このクライアントは非常に懐が深く、この体質が企業全体に浸透していることを感じてきました。叱咤激励しつつも決して見捨てない。そして私は期待に応えようと俄然頑張ろうと思う。こうやって人材は育っていくのだなと学びました。この企業風土は、このクライアントが好業績を続けていることと何か関係があるのかも知れません。

年末のもう一つの恒例として、私は『表現のための実践ロイヤル英文法』を読み返すことにしています。12月の後半、全部で600ページ程あるこの本を毎日50ページずつ読み、忘れていたことや理解があいまいだった部分を再確認しています。『特許翻訳における部分最適と全体最適の両立』において、私は、特許翻訳者は英語表現にこだわるだけじゃだめだと偉そうなことを書きましたが、特許翻訳者に一番求められているのはしっかりした英語だということも確かなので、やはり英語の研究も欠かせません。

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この本の他に、今年は書店で偶然見かけて「ジャケ買い」した『ENGLISH EX』という本も読もうと思っています。まだ読んでいないので役立つ本かどうか分かりませんが、大昔に得た知識や経験に固執して取り残されるような人にならないためにも、新しい情報や考え方を取り入れて知識をアップデートすることが大切だと思っています。

“configured to”についての記事をアップしました

米国特許クレームにおいて多用されている“configured to”(MPEP2181)について、USPTOのPTAB(Patent Trial and Appeal Board、特許公判審判部)の解釈を調査した記事があることを知り合いから教えてもらいました。

“Analysis of 2013 Board Decisions Regarding ‘Configured to’ Language”
http://patentlyo.com/patent/2014/02/decisions-regarding-configured.html

要点を日本語でまとめて、当社のHPに掲載しました。

『PTAB審決における“configured to”の解釈』
https://goo.gl/mc58R3

 

蛇足ですが、PTABは「ピーブ」と発音するようです。
https://www.youtube.com/watch?v=7Do2qUbAKjM

特許翻訳における部分最適と全体最適の両立

先日、日頃お世話になっている方との話のなかで、部分最適と全体最適という言葉が出てきました。部分最適とは、言葉通りで、部分的な最適を目指すこと、つまり細かな部分や自分が責任を負っている部分のみに力を入れることです。全体最適とは、全体の最適を目指すこと、つまり全体に気を配ることです。部分最適のみを実現することを「木を見て森を見ず」と言い、何事においても、部分最適と全体最適の両方を実現した方が良い結果になることが多いと思います。部分最適と全体最適を特許業界に当てはめてみると、まず全体最適は、特許クレームが審査と権利行使に耐えるようにすること、つまり出願人の利益になるようにすることではないかと思います。一方、部分最適の「部分」としては様々なものが考えられます。特許翻訳もその1つで、特許翻訳会社である私の立場から言えば、特許明細書の翻訳が最適となるように努力することと言えるでしょうか。

私の会社では、特許翻訳における部分最適と全体最適の両立を目指しています。というのは、いくら特許翻訳という部分最適を実現したとしても、例えば、もととなる日本語明細書に問題があれば、全体最適にはならず、部分最適さえも意味がなくなるように思われるからです。例えば、翻訳にあたり、OALDをいくら細かく見て英単語のニュアンスを探っても、あるいはFowlerにまでさかのぼって最適な英語表現を研究したとしても、翻訳している発明自体が例えば米国特許法101条(Patent Subject Matter Eligibility)違反であれば一発でアウトになります。こうなると、部分最適なはずの翻訳は出願人にとって使い物にならず、翻訳者の単なる自己満足あるいはただの英語好きの言葉遊びと変わりありません。これに対して翻訳者の多くは、私の翻訳は完璧であり、101条違反であるかどうかは私の責任ではありません、と言い返すことでしょう。「101条違反だなんて言われても・・・」というのが翻訳者の率直な気持ちだと思います。しかし、出願人にとっては、翻訳されたクレームが101条違反で拒絶されたという紛れもない事実があり、出願前に101条違反を見逃したのは翻訳者なのかそれとも特許事務所なのかといったことには興味がない、とあるメーカーの知財担当の方が言っていました。少なくとも、翻訳を担当した私が101条違反に気づき、全体最適という使命感をもって何らかのアクションを起こしていれば、拒絶は避けられたかも知れません。こういった理由で、特許翻訳者が部分最適と全体最適を両立することは重要だと考えています。

一方で、特許翻訳者や翻訳会社が部分最適と同時に全体最適も目指す場合において、(心理的な)制約のようなものが存在するかと思います。それは、特許翻訳者や翻訳会社が上記のように全体最適という使命感をもって何らかのアクションを起こすことが「越権行為」ととられるのではないかいう懸念です。これは特に、特許事務所をクライアントとして持つ翻訳会社や特許翻訳者に当てはまるのではないでしょうか。しかし、どう思われようとも、最終的に出願人の利益になることを目指すという全体最適のためには、言うべきことはきちんと言うべきだと考えています。(これに関連して、翻訳会社が、例えば米国用の特許クレームを作成することについて法的な問題はありません。)私の会社はよく、「御社は特許事務所がやるような仕事をやっておられますね」と言われることがあります。いくつかには、「一介の翻訳会社が、なんと生意気な」というニュアンスが含まれているのを感じます。しかし、当社は部分最適と全体最適の両立を目指しているので、このようなことは気にしないようにしています。とはいっても、当社はまだまだ部分最適の域を出ておらず、そういう意味では、当社も数多ある翻訳会社とまったく変わらないと言えるかも知れません。全体最適を実現するために、日々研究を続けていこうと思っています。

振り返ってみれば役立っていること

フェロー・アカデミーの運営会社が発行している翻訳業界誌“Amelia”の2016年10月号に、『ベテラン翻訳者に聞いた 振り返ってみれば翻訳に役立っていること』という特集が載っていました。出版翻訳やメディカル翻訳など、各分野の第一線で活躍しておられるプロの翻訳者さんが、過去に経験したことで今の仕事に役に立っていると思っていることが紹介されています。例えば、簿記を学んだこと、歴史書をたくさん読んだこと、英語の発音を練習したことなどが翻訳の仕事に活かされているとのことでした。


この特集を読んで、私にはこのような経験が何かあるだろうかと考えてみたところ、翻訳に役立っているというよりも、会社をやっていく上で役立っていると思える経験があることを思い出しました。学生のとき、ある世界的に有名な英語教材を営業販売するアルバイトをしたことがあります。教材販売会社が用意した名簿に載っている人の電話番号に片っ端から電話を掛けて商品説明をし、興味を示した人にはアポを取り直接会って商品を売り込み、成約となれば商品代金(数十万円)の数パーセントをコミッションとしてもらえる、というアルバイトです。時給制ではなくフルコミッション制だったため、いくら時間をかけて頑張っても商品が売れなければお金にならないという厳しい労働条件でした。しかも、成約を取るのは至難の技で、そもそもアポ取りが難しく、このアルバイトを始めてから最初の数週間は1人もアポが取れませんでした。何度も辞めようと思いましたが、その度にせめて1つでも売れるまでは頑張ってみようと思い留まり、練習と工夫を重ねていきました。結局、アポは比較的簡単に取れるようになり、成約もいくつか取ることができました。成約という結果を出せたことはもちろん嬉しく、自分に自信を持てるようになったきっかけでもありますが、それよりも、人から断られるということに免疫がついたのが一番の収穫だったように思います。人から断られるのは、商品を本当に必要な人にたどり着くまでのコストのようなものなんだと身をもって知りました。

また、いくら良い商品を扱っていてもお客さんの方から近寄ってきてくれるわけではないということをこのアルバイトを通して知りました。英語教材の営業販売と聞くと、怪しい業者の怪しい商品のように思われるかも知れませんが、私が実際に使ってみたところ本当に良い教材だと思いました。実際、20年近く経った現在でも販売されており、確立され支持されている教材なのだと思います。ただ、いくら良いものであってもまずその存在を人に知ってもらわなければ何も始まらず、また知ってもらったとしてもまったく興味のない人がいるということを学び、ターゲットを見極めるというマーケティングの重要性を知ったのもこのアルバイトででした。