私の会社では、経理関係の業務を税理士事務所に委託しています。これまでに、2つの税理士事務所とお付き合いしてきました。1つ目の税理士事務所には創業から3期目までお世話になり、その後事情があって2つ目の税理士事務所に委託先を変え、今に至っています。1つ目と2つ目の税理士事務所は、顧客(私)への対応の仕方がまったく異なり、2つ目の税理士事務所の方が自分自身の成長のためには良いと私は思っています。
1つ目の税理士事務所は、私が素人社長であったためか、登記の仕方や弥生会計の使い方など、社長業務の初歩の初歩から丁寧に教えてくれました。また、親身になって相談にものってもらいました。私の話に熱心に耳を傾け、頻繁に頷いたりメモをとったりしてくれたので、話をしていて心地よかったです。あるいは、私が仕事で何か工夫を思いついたり、誰か新しい人に会ったと言えば、「いいですね」「すごいですね」といった肯定の言葉をかけてくれました。たとえ私のやったことが会社の売上げに結びつかなかったとしても、頑張り自体を評価してくれるような事務所だったと思います。今思えば、カウンセリングを受けているような心境で、話を聞いてもらえるだけで嬉しく、月1回の打ち合わせが楽しみでした。
それに対して2つ目の税理士事務所は、非常にドライです。この事務所が重視するのは数字、つまり売上げです。業務上の話はもちろん聞いてはくれます。しかし、もともと特許翻訳というマニアックな仕事の話なので共感し難いのかも知れませんが、私のやったことが売上げにどうつながったかという話にもっていかないと、オチのない話を聞いたあとのような、何かどんよりとした空気になります。口には出さなくても、相手が「それで?」と思っているのが伝わってきます。この事務所のこういう性格に当初は戸惑いましたが、今では、こういう対応をしてくれた方が自分自身の成長のためには良いと思っています。どんなに自慢話や苦労話を語っても、数字がすべてを物語っているということです。また、会社をやっていく人間としては、褒められたから頑張るというのではダメでしょう。褒められなくても頑張る、批判されても頑張る(むしろもっと頑張る)、でないと。今は、売上げという結果が伴った話だけを事務所とするようにしています。
もっとも、これは、私が会社をやっていく上でこういう突き放した対応をしてくれた方がいいと思っているのであって、私が人に対してこういう態度をとりたいと言っているのではありません。特に、スタッフに対しては、1つ目と2つ目の税理士事務所の対応を合わせたような、硬軟おり交ぜた対応が必要かと思います。つまり、数字という現実も説明しつつ、頑張り自体も評価すべきなのだと思います。