0年 0月 の投稿一覧

100%誤解のない文章を書くのは難しい

ネット上で見つけたある記事を読み、特許翻訳者として非常に考えさせられました。”25+ People Who Take Instructions Too Literally”(https://goo.gl/1N7zGB)という記事で、書いてある英語の指示が、意図した意味とは違う意味にとられた例がいくつか紹介されています。これらの例はどれも笑えるのですが、同時に、人に誤解を与えない文章を書くのは本当に難しいということを教えてくれます。例えば、次の写真の例では、pumpkin, log, river, fox, pondをアルファベット順に並べなさいという指示が書いてあります(appleに×印が付いているのは、appleが一番目にくることが示唆されていると思われます)。

alphabetical

この指示に従うと、fox, log, pond, pumpkin, riverという順番に並べるのが正解と思われますが、回答欄には、1つ1つの単語を構成するアルファベットをアルファベット順に並べ直したものが記入されています。小学生による回答のようで、大人の世界ではあり得ない回答かも知れませんが、指示「Write the following words in alphabetical order」が100%誤解のない文章ではないことがこの小学生によって証明されています。この指示をより誤解が少なくなるように修正するとしたら、WriteをPut, Place, Sort, Listなどに置き換えるといいかも知れませんが、それでもなお、写真のような対応をする小学生が出てくることも否定できません。

次の例は、ドレッシングのカバーのタブに書いてある指示「OPEN ON OTHER SIDE」に対して、わざわざナイフを取り出してきて底の部分を切り開いており、明らかにウケ狙いと思われますが、指示「OPEN ON OTHER SIDE」は下側の写真のように対応できなくもないということを示しています。そういう意味では、これも上の例と同じく考えさせられるものです。そもそも、なぜこんな指示が書いてあるのか気になります。指示が書いてあるタブの反対側にタブを設けて「OPEN ON THIS SIDE」と書くのではダメなんでしょうか。。。

otherside

米国特許庁では、Broadest Reasonable Interpretation (BRI)という方針のもとでクレームが審査されます。BRIは、クレームはリーズナブルな範囲で広く解釈されるという意味で、広く解釈される分、先行技術とバッティングする部分が大きくなり、それだけ審査に通りにくいということを示しています。上の2つの写真もBRIの例だと思います。

次の例では、指示のitを明確にすれば犬の悲劇は確実に避けられると思います。

dog

当社にしかできないことをやる

先日、会社の第6期決算が終わりました。決算書は会社の1年間の通知表のようなものだと思いますが、新しい決算書を見る度にいちばん感じることは、ずっと仕事を依頼し続けてくれているクライアントへの感謝です。世の中には、優秀な翻訳者はたくさんいると思います。実際、私が過去に行った特許翻訳セミナーの受講者のなかにも、非常に上手い特許翻訳をする人が何人もいました。当社は特許翻訳がもっともっと上手くなりたいと思い日々研究していますが、それは他の会社も同じだと思います。そういったなかで、当社を選んで依頼してくれるクライアントには感謝しかありません。

正直に言って、現在のクライアントから当社のどこが評価されているのかははっきりとは分かりません。ただ、これまで、当社にしかできないことをやりたいと思いながら活動してきました。特許翻訳のサービスを行う会社が世の中に既に氾濫していたなかで創業した当社にとって、他との差別化こそが生きる道だと思ったからです。これからは、この差別化をもっと進めていくとともに、当社を支えてくれる「米国特許翻訳者」の育成にこれまで以上に力を入れていこうと思っています。

メールを送るときは一番伝えたいことをタイトルにする

methodbusinesswriting

『ABSTRACTを150ワード以内にまとめる』(http://beikokupat.com/blog/?p=1051)において、一番重要なことを見極めて短くまとめるということを書きました。この作業の練習を兼ねて日頃からできることがあります。それは、メールを送るときに、一番伝えたいことをタイトルにすることを心がけて実践することです。これは、私が過去に行ったセミナーでも紹介したことがあります。メールのタイトル部分を短く書くということは誰でも実践していることだと思いますが、多くのメールはタイトルに件名だけが書かれていて具体的な内容は本文を見なければ分からなくなっており、忙しい人への配慮のないものになっています。これを、短いのはそのままにして、一番伝えたいこと(結論とも言えます)をタイトル部分に書くようにします。これにより、メールの受け手はタイトルを見るだけで本文の大体の内容を掴める上、上記のように、一番重要なことを見極めて短くまとめるという、米国出願用の明細書翻訳を行う人にとって必要なスキルを身につける練習にもなります。

非常にシンプルな例を見てみます。仕事で取引先の担当者に会いに行くことになり、その日時を担当者にメールで伝える際、メールのタイトル部分に例えば「11月10日14時に御社に伺います」と書きます。これを、「御社訪問の件」などと書くと、担当者は本文を見なければ相手がいつ来社するのか分からない状態になります。また例えば、私の会社のトライアルを受けてくれた人がいて、その人に審査結果をメールで伝えるとすると、タイトル部分に「トライアル審査結果のご連絡」などと書いて勿体ぶらずに、「トライアル合格のご連絡」のようにストレートに書くかも知れません。

これをもっと複雑なサンプルを使って、しかも英文で練習できるという素晴らしい本があります。『メソッド方式 英文ビジネスライティング完全マニュアル』という本で、この本には、一番重要なことを見極めて短くまとめる方法の説明と、英文で行う練習問題が載っています。また、この本はエンジニア向けに書かれたものらしく、工学系の題材がふんだんに使われており、特許翻訳者や知財関係者にとっては馴染みやすいのではないかと思います。その他にも、この本には関係代名詞のthatとwhichの使い分けや三段論法など、英文ライティングの基本が詰め込まれています。

 

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ABSTRACTを150ワード以内にまとめる

日本語で書かれた基礎明細書に添付されている要約書を米国出願用のABSTRACTに翻訳する際、私の会社では、クレーム1の内容をABSTRACT用の形式に書き直したものをABSTRACTに記載しています。ABSTRACT用の形式の基本的なルールは『要約書の書き方』(https://goo.gl/n8GhBJ)に書いてある通りですが、そのなかでも「150ワード以内」というルールが最も有名だと思います。私の会社でも、もちろんこの150ワードルールを守りつつ上記作業を行っていますが、クレーム1の長さによっては、150ワード以内にまとめるのがなかなか難しいときがあります。つまり、クレーム1の長さが150ワードを大幅に超えているような場合、これをどのように150ワード以内にまとめるのか、という問題に直面します。このような場合でも、私の会社では必ず150ワード以内にまとめています。

具体的な方法としては、当たり前かもしれませんが、クレーム1のなかで一番重要と思われる限定を残し、これとは直接関係ないと思われる限定を削除してワード数を減らす、という方法を採用しています。この作業は、何が一番重要なのかを見極めることが必要になってくるため、発明の本質を理解できていることが前提となり、作業者の腕の見せどころとも言えます。また、どの限定を中心にまとめたのかを納品時にコメントするようにもしています。また、当たり前ですが、このようにまとめたABSTRACTの内容がクレーム1の内容と矛盾するようなことがないように注意しています。ABSTRACTは、クレーム解釈の際に重要視される内部証拠として参酌される可能性があるためです。そういう意味では、ABSTRACTを150ワード以内にまとめるという作業は責任重大な作業と言えます。

なお、「150ワード以内」であっても、例えば149ワードなどの150ワードに近いぎりぎりのワード数にはせず、できれば140ワード前後にしています。これは、方式審査に一貫性がないことを想定して、149ワードなどが目視で150ワードを超えているように判断され、いわれのないオブジェクションが発せられるのを避けるためです。