「簡単な原文の英訳が上手い」止まりの翻訳者に必要なこと

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

このところ、非常に難解な特許明細書を英訳しています。原文の難解度がいつもより格段に高いため、分かりやすい英文にするのにいつもより多くの時間がかかっています。原文が分かりにくいのだから、英文も多少分かりにくくても仕様が無いだろう、と妥協したい気持ちが湧いてくることもありますが、やはりクライアントが当社を頼って依頼してくれているのと、当社の名のもとに変な翻訳を出したくないという意地があるため、納期ぎりぎりまで推敲しようと思っています。

また、難解な原文だからこそ、それを分かりやすく英文にできるのが特許翻訳者の務めだと思います。実際、比較的簡単な原文ならば非常に上手く英文にできるものの、原文が少し難解になると、同じ人が書いたとは思えなような変な英文になってしまう特許翻訳者がたくさんいます(こういう人の英文の「ヘン度」は原文の難解度に比例します)。当社はこれまで多くのトレーニーを迎えてきましたが、ほとんどが、この「簡単な原文の英訳が上手い」止まりで伸び悩んでいます。

この状態から脱するためには、想像力を駆使して翻訳することが必要だと私は思っています。かのアインシュタインは、”Imagination is more important than knowledge.“と言ったそうですが、知識やテクニックだけではいい特許翻訳はできないことは明らかです。これは、一つの発明には一つの特許しか与えられない(”…may obtain a patent …”, 35 U.S.C.§101)という特許制度の性格上、内容が全く同じ特許明細書は存在せず、知識やテクニックによるパターン化した翻訳で対応できるものは少ないからです。上記の伸び悩んでいるトレーニーも、例えば英文明細書マニュアルを隅から隅まで読んで知識やテクニックを頭に入れているものの、想像力を駆使して確かな英語で分かりやすく表現する能力が育っていないように思います。この能力をどうすれば身につけることができるか、これをきちんと伝えることができるようになることが私の課題だと思っています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。