退職金を自分で用意する

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世の中の翻訳者の人たちが働いている形態は、(日本全体で見たときの会社規模でいうと)小~中規模の翻訳会社や法律事務所に属しているか、フリーランスという形態が大半だと思います。小~中規模の翻訳会社や法律事務所は、退職金制度がないか充実していないところが多く、例えば定年退職した際にまとまった額の退職金を受けることは期待できないのが一般的ではないでしょうか。また、フリーランスの場合は、「退職」自体がないため、言うまでもないことですが退職金はありません。私の会社では、社員のための退職金制度を設けていますが、まだまだ不十分なところが多く、これからもっと勉強して充実した制度にしていきたいと思っています(ちなみに、私自身には退職金はありません)。

このように、翻訳者は非常に小さな組織で働くかフリーランスになることが運命づけられていると言えるため、経済的に不安定な生活を送っている人が多いという現状があります。また、私も含め翻訳者の多くは、将来何らかの理由で翻訳ができなくなってしまったときにどうやって生活すればいいのかなど、将来への不安を抱えながら日々翻訳活動をしています。経済的に不安定で、退職金はもちろん年金さえも期待できないかも知れないという状況で、翻訳者はどのように将来を見据えて活動していくべきなのか。これは、他の翻訳者と懇親会などで話したときに必ずといっていいほど話題になる問題です。私もこの問題について常に考えていますが、1つの答えとしては、当たり前ですが、自分の世話は自分でする、ということだと思います。

具体的には、健康保険の側面で見ると、例えば、フリーランス翻訳者は大阪文化芸能国民健康保険組合(http://www.bunkageinou.com/index.html)という組合に加入して身を守ることができます。「大阪」となっていますが、東京の方でも加入できます(加入には組合員の紹介が必要です。法人は加入できません)。また、経済的な面、例えば退職金に関して言うと、自分で民間の制度に申し込んで、将来退職金に相当するものを受け取るというようなことはいくらでもできます。具体的には、私は国内・海外の信頼できる長期積立ファンドに毎月少額の積立を行い、20~30年後にそれまでに積み立てた金額の数倍の額を受け取るという制度を利用しています。ファンドは元本が保証されないというリスクがありますが、私は厳選した国内・海外合わせ数個のファンドに積み立てることでリスクの分散を図っています。ファンドなど利用せず、銀行で定期預金をすればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、超低金利な上、インフレという問題もあるため、銀行預金もそれなりのリスクがあると思っています。怪しげに聞こえるかもしれませんが、銀行に預金してお金を「寝かせる」のではなく、ファンドに毎月一定額積み立てて複利効果でお金に「動いてもらう」ということを私はしています。なお、このように金融商品を毎月一定額買うことをドルコスト平均法といいます。ドルコスト平均法は、大勝ちはいないが、大負けすることもないという堅実な長期投資の手法です。また、複利効果とは、投資で得た利益を使ってしまうのではなく投資に回すことで、利益を加速度的に増やしていくことです。かのアインシュタインは、複利(compound interest)は人類最大の発明だと語ったと言われています(“Compound interest was one of man’s greatest inventions”、“The most powerful force in the universe is compound interest”などバリエーションがあります)。長期積立ファンドを含め、投資には時間がとられるものですが、私は運用を海外のファイナンシャル・プランナーに任せていて、運用のための時間をとられることなく、またどのように運用すべきかをさほど気にすることなく、日々の仕事に邁進できるようにしています。

私は、上記手法を社員を含め他の人に勧めるようなことは決してしませんが、時間を味方につけることが基本になっているこの手法は、普段時間がないことが多い翻訳者にマッチした資産運用方法だと思っています。私は十数年間サラリーマンを経験しました。サラリーマン時代は、精神的に会社や国に依存しているようなところがありました。しかし独立して誰も自分を守ってくれないことを実感したとき、自分の世話は自分でするということを心がけるようになりました。それ以来、何でも自分で調べて、時には確かめにどこかに行ったり話を聞きに行くことが普通になり、楽しみになっています。

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