翻訳によって日本企業に品格を与える

特許翻訳の仕事をしていると、
調査のために
公開公報というものをよく見ます。

公開公報とは、
過去に特許出願されたり
特許になった出願の明細書が
一般公開されたもので、
誰でも見ることができます。

私の会社では明細書の英訳が
業務のメインなので、
英語で書かれた公報を
チェックすることが多いです。

英語の公報を見ていると、
日本企業が出願したものを頻繁に
目にします。

これは、
元は日本語で書かれた特許明細書を、
翻訳会社などが英訳したものです。

日本企業の英語公報のなかには、
とても残念な翻訳がされているものが
たくさんあります。

公報は、半永久的に残っていくものです。
自社の発明や特許が残念な英語で書かれていると、
企業イメージにも悪い影響を与えかねません。

こういう意味で、
翻訳会社の責任は大きいと思います。

日本企業は毎年多くの特許出願を
米国や欧州に出しています。

それだけ優れた技術が毎年生まれている
ということです。

しかし、
それを上手く英語で説明する力が
多くの日本の翻訳会社には欠けている
のではないかと不安視しています。

一方で、
日本企業の英語公報の中には
非常に上手い英語で書かれたものもあります。

元は日本語であったと思われる明細書を
こんなに上手い英文明細書にできるのか!

と背筋に電流が走るかのような衝撃に似た感動を
覚えることがあります。

これが強い特許かどうかは
また別問題ですが、

少なくとも、
公報がいい英語で書かれていると、
企業に良いイメージ・品格を与える
のは確かです。

最近では、
英語公報はGoogleで簡単に検索できるので、
一般の人が目にする機会は非常に多いと思います。

英語公報と企業イメージの関係は
ますます強くなってきています。

特許翻訳に英検1級もTOEIC900点以上も必要ない

翻訳会社をやっていると、
よく翻訳志望の方から相談を受けます。

一番多く受ける相談が、

-特許翻訳をするにはどのくらいの
必要が英語力か?

-英検1級ぐらい必要か?

-TOEIC900点以上ないとダメか?

といった英語力に関するものです。
私はいつも、こういう質問には
次のように答えています。

『中学から高校までの英語を完璧に
マスターするのがいいと思います。

それができたら、
英検1級もTOEIC900点以上も
必要ありません。』

私の知っている翻訳者は、
大体みんな英検1級を持っています。

でも、
英検1級取得者の全員が翻訳がうまい
わけではありません。

中には、
本当に英検1級を持っているのか?
と疑いたくなるような翻訳をする人もいます。

一方で、
英検1級はもとより、
英語系の資格をまったく持っていない人でも、
すごく翻訳がうまい人がいます。

つまり、

英検1級を持っている人の中には、
翻訳が上手い人とそうでない人がいて、

英検1級を持っていない人の中にも、
翻訳が上手い人とそうでない人がいる、

という事実があります。

英検1級を持っている人でも持っていない人でも、
翻訳が上手い人は、
中学から高校までの英語がしっかりしている
というのが私の印象です。

中学英語は基礎、
高校英語は高度な英語
というのでしょうか。

どちらも完璧というくらい
頭に入っていれば、
特許翻訳をするための英語力は
既に持っていると思います。

そして、
仕事という実戦を重ねながら
努力を続ける人は、
さらに英語力を磨き、

結果的に英検1級にも対応し得るか
それ以上の英語力を自ら培っていきます。

年金の掛け金は引退世代へのお礼

当社では、当たり前ですが
社員も私も社会保険に加入しています。

社会保険について、
最近よく不穏なニュースを耳にします。

例えば、
社会保険のうち、厚生年金は、
私の世代は支払った分の元が取れず、
逆に損をすることが予想されると。

ある大学教授が行った
シミュレーションによると、

厚生年金を支払った額よりも多い年金を
将来もらうことができるのは、
現在55歳以上の人までで、

50歳以下の人は軒並み損をする上、
損をする額は年代が若くなるにつれ大きくなり、

現在20代の人は2000万円以上の損をする
という試算が出ているそうです。

この試算が正しくないことを
望みたいところですが、

私たち世代は、これが正しいと仮定して
生きていく必要があると思います。

Hope for the best, prepare for the worst.

という言葉がありますが、この言葉に倣って、
私は損をすること前提で
年金の掛け金を払っている、と考えています。

そもそも、「損」という考え方が
よくないのかもしれません。

日本の年金制度は、
「賦課方式」というものになっており、

私たちが毎月支払う掛け金は
そのまますぐに現在の引退世代の年金として
使われています。

私は、毎月の掛け金を
日本を現在の先進国へと発展させてくれた
現在の引退世代へのお礼と考え、

決して「損」というは考えは持たないように
しています。

そして、
将来の自分が引退世代になったときは
国の世話にはならず、

自分で何とかしていく覚悟で
今からいろいろな準備を始めています。

知的英語

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私は、かつて米国特許事務所で働き、
今は翻訳という語学力を必要とする仕事をしていますが、
英語を流暢に話せるわけではありません。

でも、英語を流暢に話したいと思っていて、
常に練習しています。

英語を流暢に話したいと特に思うのは、
ネイティブ・スピーカーと英語で話した後です。

翻訳はパソコンと書類が相手なので、
仕事自体で英語を話すことはありませんが、
たまにネイティブの翻訳者や海外のお客さんと
英語で話す機会があります。

ネイティブと話した後、必ずといっていいほど
次のように後悔して自分の英会話力を嘆きます。

・言いたいことが言えなかった、
・不適切な表現を使ってしまった
(例:聞き返そうと思って思わず「Excuse me?」(何ですって?)と言ってしまった)、
・場が沈黙しそうになったときに自分から話題をふれなかった。

こういう経験をする度に、
ある程度の英語を話せるのが国際的な礼儀だと痛感します。

また、特に特許業界にいると、
英語で話す相手は知的レベルの高い人が多いため、
いわゆる「知的英語」の必要性も感じています。

知的英語は、英会話力+知識というのでしょうか。
個人的にすごく興味があり、
是非身につけたいと思っています。

英会話力+知識をどうやって身に付けることができるのか?

悩むところで、私も手探りでやっています。

英会話力アップのために今やっているのは、
『留学しないで「英語の頭」をつくる方法』
http://tinyurl.com/ltynh5q
という本で紹介されている練習方法です。

知識に関しては、アメリカの映画やドラマを
何回も何回も見て愉しみながら身に付けるようにしています。

今気に入っているのは、
『House of Cards』
http://www.imagica-bs.com/yabou/house_of_cards/
というケヴィン・スペイシー主演の政治ドラマです。

このDVDを買って(http://tinyurl.com/oys5anv)、
スクリプトを無料で手に入れて
http://www.springfieldspringfield.co.uk/episode_scripts.php?tv-show=house-of-cards-2013
愉しみながらアメリカの政治を学んでいます。

当社の特許翻訳勉強法

特許業界にいる人ならほぼ全員知っていると
思われる洋書があります。

それは、

Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting
http://tinyurl.com/mdlbf5y

という本です。こんな表紙です。

Faber_frontpage

これは、
米国の特許商標庁(USPTO)に
特許出願するにあたり、

その際に提出する特許明細書の
クレーム部分についての
記載方法を細かく解説したものです。

米国出願実務や特許翻訳を
ある程度経験した人なら理解できる内容で、

クレームの基礎から、
特許訴訟を考慮した記載方法のような高度なレベルまで
体系的に学べるようになっています。

かなり有名な本で、おそらく、
日本のほとんどの特許事務所の本棚に
置かれていると思います。

特許翻訳者にとっても、
米国特許を研究してワンランク上の翻訳を
目指すなら絶対に目を通しておきたい本です。

この本には難点があります。

1.内容が詳細なだけに量が膨大なこと(1000ページぐらいあり、重い)
2.高価なこと(40000円程度)
3.英語で書いてあること

特に1は、多くの人をFaberから
遠ざけている原因だと思います。

本棚でFaberが埃をかぶっている
ところも多いのではないでしょうか。

特許業界はみなさん忙しいですから、
わざわざ時間をとってFaberを真面目に読む
というわけにはいかないのだと思います。

しかし、
やはりFaberから学べることは非常に多いため、
私の会社ではFaber研究を仕事の一つとしてとらえ、
毎日読むようにしています。

社内で曜日毎に担当を決めて、
毎日1~2ページ程度を日本語に翻訳し、
それを会社のブログにアップしています。
http://goo.gl/MWXqqd

これを他の社員が読んで勉強する。

他の社員にとっては、
毎日たった数分程度の勉強ですみます。

そして、
これを毎日続けることで、
徐々にクレーム作成の「勘」がつくのではないかと
期待しています。

しかも、
会社のブログにアップしているため、
社外の誰でも読むことができて人の役に立てるし、
体外的にもFaber研究をしていることをアピールできます。

まだ全体の半分も終わっていませんが、
毎日コツコツと続けていくつもりです。

知識を共有する

私の会社では、
社員個々人がもっている知識やノウハウを
自分の中に溜め込まないようにしています。

それよりも、
出し惜しみせず
社員のみんなと共有するようにしています。

いろいろな方法で共有していますが、
その一つが『英文明細書マニュアル』という
社内マニュアルです。

私がこれまでの経験を通して得た
特許翻訳に関する知識・ノウハウを、
このマニュアルに詳細に書いています。

特に、
マニュアルの大半を占めているのは、
米国特許事務所での技術者としての
経験を通して得た知識です。

当時、技術者として、
たくさんのオフィスアクション対応を担当しました。

そして、
様々なクライアントから送られてくる様々な翻訳に
目を通す機会に恵まれ、

拒絶理由が出やすい翻訳はどのようなものか、
どうすればいい翻訳、特許になりやすい翻訳に
することができるのかが分かってきました。

こうやって得られた知識・ノウハウを
独立したときに1冊のマニュアルに
まとめ上げました。

これを、
社員スタッフとクライアントに配布して共有し、
全体の意思統一を図ってみんなでいい仕事を
することが狙いです。

さらに、
ノウハウはすべて一般に公開する
ことにしているので、
会社のブログにすべて書いています。
http://goo.gl/31jtll

製本版は印刷代などがかかるため
有料での販売となってしまいますが、

内容はブログで公開しているのと
ほとんど同じにもかかわらず、
毎月20冊程度注文があります。

自分がゼロから作ったものを
他の人も欲しいと言って
お金まで出してくれる。

マニュアル作成時は予想もしていなかったことで、
すごく嬉しく、励みになることです。

香港視察

経営者セミナーを受講するために
香港に行ってきました。

香港国際空港からMTRという地下鉄で
約25分のところにある香港島。

ここに中環(セントラル)という
アジア屈指の金融街があります。

中環のセミナールームで、
香港や世界各国で様々な事業をやっておられる
日本人経営者の講演を聴きました。

これからの日本経済の動向、
日本人経営者がめざすべき方向など、

日本から離れた環境におられる立場からの
新鮮な意見を聴くことができました。

翻訳者上がりの新米経営者としては、
他の経営者の話しを聴く機会を積極的に
とるようにしています。

昔から、
松下幸之助氏などの成功者の著書を
読むのが好きだったんですが、

現役の経営者の生の声を聴く機会は
あまりありませんでした。

聴いた話しをそのまま自分の仕事にも
活用できる訳ではありませんが、

経営者の語るマインドは
大いに参考になるものです。

セミナー場所が香港であってもどこであっても、
興味があったり、興味がなくても今の自分にとって
聴いておくべきと思ったセミナー・講演は、
時間の許す限り出かけるようにしています。

それにしても、
香港は日本にはない熱気・活気があって
面白い街です。

高層ビルなどの現代建築と
中国の歴史的な風情とが混ざり合って、

独特の雰囲気を醸し出している印象で、
個人的に好きな街の一つです。

いい仲間の集め方

私が会社を設立したときにまずやったことは、
会社の指針作りでした。

私がモットーにしている
「読みやすく分かりやすい翻訳」
の具体的な内容をCで始まる7つのキーワードに落とし込み、

『高品質「7つのC」』としてホームページに公開しました。
http://goo.gl/psCJTC

こうすることによって、
対外的に自分の会社を明確にアピールできるように
なった上、

「ああ、こうやっていけばいいんだ!」
とこれから進んでいくべき道を再確認することができました。

さらにもう一つ、予想外の嬉しいことが起きました。

それは、
志を同じくする仲間ができたことです。

現在当社にいる社員は全員、
ホームページで「7つのC」を見て賛同し、
自分もそれがやりたいと売り込んできてくれた人たちばかりです。

こういうヤル気のある人たちは、
入社前に当社のやり方を把握しているため、
入社の時点で既に当社との意思統一ができていると言えます。

もちろん、細かい部分での指導・擦り合わせは必要ですが、
それも「いい翻訳」のためという大義名分があるため、
新しいことへの理解は早い印象を持っています。

当初は、会社のポリシーを公開することに不安もありました。

ノウハウをすべて公開してしまっていいのだろうか?
他社に真似されないだろうか?
コカコーラのレシピのように、一子相伝的に極秘にすべきではないのか?

こんな不安はありましたが、
今ではノウハウをどんどん公開すべきだと思っています。

真似される可能性もありますが、
いい仲間・賛同者との出会いという
はるかに大きな収穫があるからです。

訴訟に強い米国特許の取り方のノウハウ

「訴訟に強い米国特許の取り方のノウハウ」
というセミナーに参加してきました。

米国特許弁護士である山口洋一郎さんが
毎年行っておられるセミナーで、
ほぼ毎年参加しています。

米国特許実務の最新情報が聞ける
貴重な機会です。

10:00~17:00という長丁場ですが、
1年に1回、1日かけて米国特許を
勉強する日にしています。

  • 今回のテーマは、下記の通りでした。
  • AIA(America Invents Act2014)改正後の制度運用の最新状況、
  • パテント・トロール対策の最新動向、
  • 訴訟に強い米国特許権の取り方

今回も、内容が濃く多少消化不良な
ところもありましたが、
大満足なセミナーでした。
パテント・トロールの問題が
広く一般化していることを再認識しました。

大阪の中小企業の社長さんと思われる人が、
自社所有の米国特許をトロール会社に売却
しようと思うがどうか、という面白い?質問を
されていたのも興味深かったです。

山口弁護士が毎回言っておられることで、
印象深い言葉があります。
翻訳が悪くて理解しにくいものは、
審査官は無視するため、
いくら書面やインタビューで説明しても無駄だと。

これを今回も言っておられました。
これを聞く度、
翻訳会社としてもっと精進していこうと
決意を新たにしています。

仲間を「巻き込む」

私は、2012年に「いい翻訳」をするための
特許翻訳専門会社を作りました。

会社設立の際、決めていたことがありました。

それは、よくフリーランスの翻訳者が節税目的でやるような、
社員が自分一人又は家族だけのワンマン経営又は家族経営にはしない
ということです。

自分一人だけで翻訳をやっていくと、
経験やノウハウを自分の中に溜め込んでしまう上、

自分が定年などで辞めたときに今までやってきた事業自体が
終わってしまうので、これでは面白くないと感じていました。

自分と家族が暮らしていけるだけの事業規模で
細々と翻訳をしていくよりも、

志を同じくする仲間を「巻き込んで」、
切瑳琢磨していい翻訳をやっていく方が絶対に愉しいし、

いつか自分がいなくなった後でも、
他の仲間が「いい翻訳」という会社のDNAを
受け継いで続けてくれるだろうと思いました。

社名を、例えば『㈱大島トランスレーション』のような
自分の名前を冠したものにしなかったのも、
ワンマン会社にしたくないという思いがありました。

これと同じことが、
『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』
http://goo.gl/RY7bcW
原書:『Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies』
http://goo.gl/uih0yD
という本に書いてあり、勇気づけられています。

この本には、「長く続く会社にはカリスマ経営者は必要ない」と書かれており、
長く続いている実際の会社が詳しいデータとともに紹介されています。

私にはカリスマ的な素質はなく、
仲間とともにいい翻訳を愚直に追求していくことが使命だと思っています。