洋書を読まない特許翻訳者の特徴

特許翻訳者の翻訳(英文)をチェックしていると、翻訳者さんが日常的に洋書や英文を読んでいる人かそうでないかがすぐに分かります。洋書や英文を日常的に読んでいる翻訳者さんは、一見英語にし難いような日本語原文を、小慣れた英語にするのが上手い人が多いという印象を私は持っています。逆に、洋書や英文を読んでいない翻訳者さんは、英語にし難い原文を訳すのに苦労し、出来上がった英文も原文が透けて見えるようなぱっとしない英文で、要点が伝わってこないことが多いです。したがって、いい英文を書けるようになるためには、洋書や英文に親しむことが近道であると私は思っています。但し、特許翻訳者さんのなかには、ただ表現が小慣れているだけで技術的に不正確な英文を書く人もいるので、日々の技術研究も怠らないことが重要です。

私には特許英文ライティングの師匠と仰いでいる方がいるのですが、その方から「英文ライティングが上手くなりたければ、英語の特許公報やライティング教本を読むだけでは全然ダメだ。洋書を読んで読んで読みまくれ」というようなアドバイスをいただいたことがあります。私はこのアドバイスを忠実に守り、洋書を四六時中読むという習慣を身につけました。毎月最低でも3万円は洋書購入に費やしたと思います(今はもっと使っています)。その結果、英文ライティングがかなり上達し、特許英訳を仕事にして人様からお金をいただくということに対して自信が持てるようになりました。

人が洋書を読んでいるかどうかが分かる方法があります。それは、アマゾン・ドットコムのアソシエイトと呼ばれるアフィリエイトに登録することによって知ることができます。アマゾンのアソシエイトに登録すると、私の書いた記事のリンク経由でどんな本が購入されたかを見ることができます。それによると、日本人著者によって書かれた「英文ライティング教本」「英語論文表現集」の類いがよく売れている一方、洋書はほとんど売れていません。ここから、洋書は読まず日本語の指南書で英文テクニックを探求する人が多いということが言えるのかも知れません。これ自体素晴らしいことで、このような努力をする方を尊敬しますが、上記のように洋書や英文に慣れ親しむことは英文ライティング上達の近道と私は確信しています。洋書や英文に慣れ親しむ具体例としては、『知らないことを英語で知る』でご紹介したような手軽な方法があります。

無から有を作り出すための教本『Stone Soup』

stonesoup

仕事は自分で作り出すもの、というようなことを耳にすることがありますが、私は会社を始めてからこの面白さを実感するようになりました。仕事が来るのをただ待っているのではなく、努力して無から有を作り出し、それが新たな需要となり収益に繋がっていく。こんなに面白いことはありません。

これをやっていく上で非常に参考になった本があります。Stone Soupという洋書です。洋書というよりも、英語で書かれた絵本です。とても簡単な英語で書かれていて、数十ページしかないためすぐに読めてしまいます。とても簡単な絵本ですが、その内容はまさに無から有を作って成功させるというストーリーで、大人でも、いやむしろ大人の方が深く考えさせられます。何も持っていない二人の兵士が見ず知らずの村にたどり着き、村人を巻き込むかたちであることを始めます。そして、結果としてそれが村人にとってなくてはならないものになっていると同時に、兵士たちも食料など必要なものにありつけるというWin-Winの関係が築かれていきます。

兵士と村人が始めたことは、村の現状に合致したものであったために村人に受け入れられたのでした。この本は、かのロバート・キヨサキ氏も『Rich Dad’s CASHFLOW Quadrant』のなかでビジネスはアイデア次第で成功できることを示す例として大推薦しています。

道をひらく

松下幸之助氏の名著『道をひらく』を久しぶりに読み返しました。この本は、氏独自の格言の後に、それについての解説が続くという構成になっています。この本から私が一番影響を受けたのは、「原因はわれにあり」という格言で、次のように解説されています。

“彼が悪い。自分に責任はない”と、
とかく失敗の責任を他に転じてはいないだろうか。
他に責任を転嫁しているかぎり、
事態を好転させることはもちろん、
失敗から教訓を得ることもできない。
やはり、原因はすべて自分にあると
真摯にうけとめてこそ、
過ちを繰り返すこともなくなり、
着実な発展も可能となる。

私は「原因はわれにあり」を常に心がけるようにしています。仕事でうまくいかないことがあった時など、「自分の準備不足ではなかっただろうか?」「自分の配慮が足らなかったのではないか?」など、自分で改善できるところはないか探るようにしています。また、どう考えても自分には落ち度がなかったと思われるような状況でも、「元を正せば自分が原因だったんじゃないだろうか?」と考えるようにしています。その理由は松下氏の解説の通りで、そうすることで前進できることが多いということが経験上分かってきました。

もう1つ、非常に好きな格言に「世間は正しい」というものがあり、次のように解説されています。

いい考えを持ち、真剣に努力を重ねても、
なかなか世間に認められないときがある。
そんなときには、ともすると世間は間違っている、
冷たいと思いがち。
しかしそれでは、みずからの向上は望めない。
世間は長い目で見れば正しく暖かい、
そう肝に銘じつつ、
精一杯の努力を重ねたい。

これは「原因はわれにあり」に通じるものがあると思います。自分の会社がどんなにいい仕事をしていると思っていても、世間に認められなければ(売れなければ)、自分たちに何か問題があると考えた方がいいということです。

この本には他にも「平凡が非凡に通ず」「仕事には止めを刺そう」「声なき声に耳を傾ける」など、会社をやっていく上で参考になる言葉が目白押しです。

特許英訳講座@大阪が満席・キャンセル待ちになりました

大阪で予定している『フリーランス翻訳者のための特許英訳・重要ポイント講座』がおかげさまで満席・キャンセル待ちになりました。今回も、特許翻訳者や弁理士、企業の知財部の方など、知財業務に従事されている方々を中心に申し込みをいただきました。様々な方々とお知り合いになれるのも講座を開く楽しみの1つです。また、私自身昨年まで大阪に住んでいたため、非常に馴染みのある土地での開講を今から非常に楽しみにしています。

また今回、数人の方から、九州地方や東海地方でも同様の講座を開いて欲しいというご要望をいただきました。このようなご要望は大変嬉しく、開催を前向きに検討したいと思います。今のところ、最少催行人数5人程度での開催を考えています。大体何人ぐらいの方が参加を希望されているかを事前に知っておきたいと思いますので、九州地方、東海地方、あるいはその他の地区での参加を希望される方は、下記アンケートに回答いただけると幸いです。

特許英訳講座ご希望開催都市アンケート
https://ssl.form-mailer.jp/fms/fae710eb454154

共感者を増やす

今月、1人の翻訳者さんを当社の登録翻訳者として迎えました。

当社に応募してくださる翻訳者の数はそれなりに多いものの、
実際にトライアルに合格して採用に至る数は極めて少なく、
1~2年に1人が登録するかしないかといった状況です。

今回の翻訳者さんは約1年ぶりの登録者となりました。
この方は以前から当社のホームページをよく読んでおられ、
当社発行のメールマガジン、英文明細書マニュアル、
特許クレーム作成講座すべてに目を通して研究されていたとのことです。

研究されていただけあって、トライアルで提出いただいた訳文では
上記テキストで説明しているポイントが随所に使われ、
また当社が重視しているコメントも的を得た充実したものになっており、
当社の方針に共感していただいていることがビシビシと伝わってくる
訳文になっていました。

また、特許英訳に必須の高い英文ライティング力も備わっていることが
訳文から分かりました。

この訳文を読んでいて、まるで当社の誰かが行った翻訳であるかのような
印象を受け驚いたと同時に、当社に共感してくださる方を
また見つけることができてとても嬉しく思いました。

思えば、当社の翻訳者はほとんどこのようなかたちで採用してきました。
当社は翻訳方針やノウハウをすべて公開しています。
そして、これまでに当社のスタッフや登録翻訳者として迎えた人たちは
事前にこれに触れ、共感者として応募してくれた人たちです。

同様のことが当社のクライアントにも当てはまるかも知れません。
当社のクライアントは、何らかのかたちで当社のことを知り、
「あなたたちがやっていることは面白いからうちのもやってくれ」
というかたちでお仕事を依頼いただくようになった所がほとんどです。

このように言われて嬉しくない訳がなく、わざわざ声を掛けていただいた
担当者の判断が正しかったことを証明するために、
常に期待以上の仕事をするよう努めています。

シンガポールで改めて思ったこと

知り合いの社長さん達と、
シンガポールにあるマリーナ・ベイ・サンズの
コンベンションセンターへ行き、
 
今後の世界経済の動向や
海外での資産運用などについての
話を聞いてきました。
 
イギリスのEU離脱をめぐる国民投票の
まっ最中だったこともあり、
会場ではこの話題が頻繁に取り上げられ、
 
ここで私は初めて
Brexit(British exit(British withdrawal from the European Union))
という言葉を覚えました。
 
会合後にはカジノに誘われましたが、
私は東京に帰ってたまっている仕事を片付けたかったので
断ってチャンギ国際空港に直行しました
(こういう付き合いの悪さを直したいと思っています)。
 
1泊3日という弾丸ツアーでしたが、
有益な話をいろいろと聞けたり、
普段の仕事の延長線上では絶対に会えない人と知り会えたりと
有意義な出張となりました。
 
今回の滞在で私が一番考えさせられたのは、
商売柄、やはり英語についてです。
 
シンガポールに向かう機中(シンガポール航空)や
現地滞在中、現地の人たちと英語で話す機会がありました。
 
シンガポール航空のCAさんを含め、
私が話したシンガポールの人たちは
お世辞にも英語がうまいとは言えませんでした。
 
しかし、下手なりに堂々と話し、
意思疎通ができている。
これは、頻繁に行く香港でも感じることです。
 
我々日本人は英語の知識では
シンガポールや香港の人たちに負けていないと思います。
言い古されたことですが、
日本も気軽に英語を話せる土壌ができればいいのに
と改めて思いました。

1466661477789

1466661650311

1466661691305

1466661740469

IMG_20160622_203733

大阪開催・フリーランス特許翻訳者向け講座『フリーランス翻訳者のための特許英訳・重要ポイント講座』のお知らせ

【満席・キャンセル待ちになりました】

フリーランス特許翻訳者向けの英訳講座を
大阪で開くことになりましたのでご案内します。

先月まで東京で開いていた講座に
新しい内容を加えて再編成したものになる予定で、
東京同様、盛りだくさんの内容にしたいと思っています。

取り上げる内容は、
・特許翻訳会社の人間から見て
どのようなフリーランス翻訳者が一緒に仕事をしやすいか、
・しっかりとしたコメントの書き方、
・特許翻訳者の大半が間違えている英文法や英語表現、
・「短文」化が必要な本当の理由、
・米国式クレームの書き方
などです。

受講者には毎回課題を提出していただき、
私がしっかりとそして厳しく添削させていただきます。

当社の性質上、米国出願に重きを置いた講座内容になると思いますが、
東京の講座では多くの受講者が役に立ったという感想をくださいました。

受講者の対象としては、
特許翻訳の基本的な知識がある方を想定しています。

受講をご希望の方は、ここからお申込みください。

講座名フリーランス翻訳者のための特許英訳・重要ポイント講座
<第1回内容>
「いい」フリーランス特許翻訳者になるためのポイントやマインドセットの解説
日時:2016年8月5日(金) 19:00〜20:40

・いい特許翻訳者とは?
・特許翻訳会社が考える、仕事を受注しやすい人の特徴
・コメントの書き方を徹底的に学ぶ
・課題(1)の配布
<第2回内容>
特許英訳でおさえておきたいポイントの解説
日時:2016年8月19日(金)19:00〜20:40

・課題(1)の解説
・特許明細書の英訳の基本解説
・間違いやすい英文法の確認
・「短文」化が必要な本当の理由
・課題(2)の配布
<第3回内容>
特許明細書・実施形態の英訳
日時:2016年9月2日(金)19:00〜20:40

・課題(2)の解説
・特許明細書・実施形態の英訳を解説
・自然な英語を書く
・PCTと米国出願用英訳の違いを考える
・課題(3)の配布
<第4回内容>
特許クレームの英訳
日時:2016年9月16日(金)19:00〜20:40

・課題(3)の解説
・クレームの形式(ジェプソン形式、サブパラグラフ(コンビネーション)形式)
・離れているものを関係付けるテクニック
・誤解のない英文クレームにするための工夫
・演習
講師大島 祥貴
日時2016年8月5日、8月19日、9月2日、9月16日(隔週 金曜・全4回)
19:00〜20:40(100分)
会場AP大阪淀屋橋(京阪淀屋橋ビル)3F-Hルーム
大阪市中央区北浜3-2-25
Tel:06-6204-0109
Fax:06-6204-1109

交通アクセス
地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」北改札より徒歩約3分
地下鉄堺筋線「北浜駅」北改札より徒歩約5分
京阪本線「淀屋橋駅」中央改札口より徒歩約2分
「北浜駅」中央改札口より徒歩約5分
https://www.tc-forum.co.jp/kansai-area/ap-osakayodoyabashi/oy-base/
受講料(税込)39,800円
(銀行振込、クレジットカード)
定員15名
※お申込みは定員になり次第、締め切らせていただきます。
申込締切2016年7月22日(金)正午
事前課題あり。
レベルチェックのため、短めの文章を英訳していただきます。(7月22日(金)にメールで送付いたします。)
申込ページ

離れているものを関係付けるテクニック

ManualKaiteiBan

2016年3月から開催していた特許英訳講座が先日、
全日程を無事終了しました。

今回は、講座で取り上げたトピックを1つご紹介します。
それは、タイトルにあるように、離れているもの同士を関係付けるというテクニックで、
簡潔且つ説得力のある英文を書くためには是非身につけたいテクニックだと考えています。

非常にシンプルな例を見ながらご説明します。
次のような日本語の原文があるとします。

「ヘラ102は、弾性を有する素材で形成されており、ヘラ102を壁部200に押し付けて方向Aへ移動させるとたわむように構成されている。」

これを「普通」に英訳してみた例が次です。

The spatula 100 is made of an elastic material, and when the spatula 100 is pressed against the wall 200 and moved in direction A, the spatula 100 bends.

この訳文でも全く問題はないと思いますが、原文をよく見ると、
「弾性を有する素材」が「たわむ」を可能にしていることが分かります。

この2つは原文ではお互いに離れたところにありますが、実は密接な関係にあり、
この関係を英訳に盛り込むことによってより簡潔になり、且つ説得力が増します。

The spatula 100 is made of an elastic material that enables the spatula 100 to bend when the spatula 100 is pressed against the wall 200 and moved in direction A.

文脈によっては、次のようにしてもいいかも知れません。

The spatula 100, which is made of an elastic material, bends when the spatula 100 is pressed against the wall 200 and moved in direction A.

The spatula 100, made of an elastic material, bends when pressed against the wall 200 and moved in direction A.

弾性とたわみが関連しているなんて当たり前じゃないかと
思われるかもしれませんが、
関連付け可能なもの同士があたかも関係のないことのように英訳され、
結果として説得力が弱くなっている英訳をよく目にします。

米国特許弁護士がクレームの英訳をリバイズすることがありますが、
リバイズ作業の中心を成すものが、
上記のような関連付けによるクレームのポイントの明確化です。

このようなスキルを身につけるためには、
想像力(創造力とも言えるかも知れません)を駆使して
関連付けられるものはないか注意しながら英訳する努力を
していくことが必要だと考え、私は実践しています。

関連付けの方法については、ここでも詳しく取り上げています。
『実践・米国式特許クレーム作成講座』
http://beikokupat.com/usclaim_drafting/

特許英訳講座が無事終わりました

2016年3月から開催していた『特許英訳トライアル対策』が先日、全5回の日程を無事終了しました。

当初は、特許翻訳初心者の方を想定した講座として募集を開始しましたが、申し込んで下さった方々の中にはプロの特許翻訳者の方が多いことが分かり、プロの方も退屈しない講座内容にもなるように努めました。

その結果、若干専門的なことを盛り込み過ぎたかな、とも思いましたが、受講者の方々からは概ね良好な感想をいただきました。受講生の1人からいただいた感想をご本人の了承のもと引用させていただきます。

大島先生、大変充実した講座をありがとうございました。
また、いつも丁寧に添削をしていただき、ありがとうございました。
(それなのに私の方で最後の宿題が急ごしらえになってしまい、
申し訳ありません。)
米国特許法や施行規則、MPEP、FABER (前身のLandis)も、
一通り学んではいたのですが、日々の業務で求められることとは差が大きく、
特許翻訳とはどうあるべきか、という命題に悩む日々でした。
その中、徹底して米国出願向けの翻訳を目指している大島先生の講義は非常に斬新でした。
この講座をきっかけとして、少し違う側面から改めて翻訳を考えることが出来るようになったと思います。ありがとうございました。
所要のため、懇親会はrain checkをいただきますが、
大島先生の今後のますますのご発展をお祈りしております。
また講座を開かれる際にはぜひ参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。

今回の講座は東京で行いましたが、内容を再編成したものを大阪でも開催する予定です。

Patently-O

私の会社のホームページには、
フロントページに『日英知財ニュース』という
コーナーがあります。
http://beikokupat.com/

ここでは、主に海外(多くは米国)の
知財に関する最新情報が分かるようになっています。

以下のサイトを始め、海外の有名な英語知財サイトは
ほとんど網羅しています。

Patently-O
http://patentlyo.com/

The IPKat
http://ipkitten.blogspot.jp/

All Things Pros
http://allthingspros.blogspot.jp/

PTAB Trial Blog
http://ptabtrialblog.com/

もともと、私自身が知財の最新情報を
仕入れるために個人的に作っていた
ニュースサイトを当社のHPに移したものです。

特に、Patently-Oの更新情報を見逃したくなくて作りました。
Patently-Oはもう何年も読んでいます。
米国特許事務所に勤めていた際、
特許弁護士の多くがPatently-Oを読んでいるのを知って
私も読み始めました。

最初は難しく感じるかも知れませんが、
米国特許の制度などを勉強しながら
読み続けると書いてあることが分かるようになり、
だんだんと面白くなってきます。