Federal Circuitで最も多く引用された判例

Patently-Oに掲載された“Most Cited Federal Circuit Decisions 2014-2017”という記事に、2014年から2017年の間にFederal Circuit(米国連邦巡回区控訴裁判所)で最も多く引用された12の判例が載っていました。

Screenshot of patentlyo.com

Most Cited Federal Circuit Decisions 2014-2017

ここに書いてあるように、12の判例のうち、実に8もの判例がeligibilityに関する判例だったということです。eligibilityとは、米国特許法第101条の特許主題適格性のことを指し、101条に挙げられている4つのカテゴリー(process, machine, manufacture, composition of matter)に当てはまる発明のみが特許を取得することができるというものです。

35 U.S. Code §101 – Inventions patentable
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
新規かつ有用なプロセス、機械、製造物若しくは組成物、又はそれらについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は、本特許法の定める条件及び要件に従って、それらについて特許を取得することができる。(『新米国特許法 増補版』より)

eligibilityに関する判例がFederal Circuitで頻繁に引用されたということは、一度特許になった発明が、そもそも特許を取得できるカテゴリーの発明であったのか?ということが、Federal Circuitで頻繁に争点になったということを示していると思います。こういう現実は、普段、出願用の翻訳ばかりを行っている翻訳者にはなかなか気づきにくいところかも知れません。また、eligibilityは、翻訳者の力量で解決できる問題ではないと言えるため、翻訳者はただ翻訳しろといわれたものをそのまま翻訳するしかない、という考え方もあります(この考え方が大多数です)。ただ、翻訳者は、英文明細書という内部証拠(intrinsic evidence)を作るという非常に重要な役割を果たす人々です。自分が翻訳者として関わる発明が、将来どのような問題に直面する可能性があるかについて知っておくことは重要だと思っています。

建築英文記事は構造表現の勉強になる

六本木の国立新美術館で開催されている「安藤忠雄展―挑戦―」に行ってきました。

安藤忠雄展 ―挑戦―

安藤忠雄展 ―挑戦―

建築家・安藤忠雄氏がこれまでに手掛けた国内外の建築を模型や写真、映像などで紹介する大規模な展覧会です。私は、展示物のなかでどうしても見たいものがあったので、今回の展覧会に行くのをずっとを楽しみにしていました。見たかったのは、「光の教会」という安藤氏の代表作の一つを、本物と同じ材料(コンクリート)を使って、しかも原寸大で再現したものです。コンクリートの壁に十字架型の切り込みが入っていて、これにより外から差す光が十字架型になるという素敵すぎる建物で、本物は大阪・茨木市にあります。本物は、建主の意向で十字架の中にガラスが張ってありますが、設計当初の案では、十字架から外の光とともに空気も入ってくるように、ガラス等はなく、内と外の仕切りがない状態になっていたそうです。再現された「光の教会」は、設計案通りの、ガラスのないものになっていました。いい建物を見ることができ、中に入ることもできて、建築好きとしては気分が上がりました。

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私は建築が好きで、建築に関する英文記事をよく読みます。以前書いた『ファッション記事は構造表現の勉強になる』と同様、建築記事は構造表現の宝庫で、英文特許明細書において参考になりそうな表現に出会うことが頻繁にあります。私がよくチェックしているのは、ArchitectureWeekという建築サイトです。世界中にある現代建築物が写真とともに解説されています。記事の長さがちょうどよく、仕事の合間の息抜きなどにもってこいの長さだと思います。あと、建築がテーマの小説としておすすめなのが、Ayn Randという作家の「the Fountainhead」で、『こんな面白い小説がある!』で紹介しています。

ArchitectureWeek

ArchitectureWeek

ファッション記事は構造表現の勉強になる

こんな面白い小説がある!

科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法

年末の恒例として、『表現のための実践ロイヤル英文法』を毎年読み返すことにしていますが、今年はグレン・パケット著『科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法』を読んで冠詞を体系的に学び直しています。1年以上前に発売された際に一通り読んだのですが、もう一度読み直したいと思っていました。

冠詞に特化した本としては、翻訳者のあいだでは『技術英語の冠詞活用入門』が非常に有名です。私もそうでしたが、”A cat’s dead”と”The cat’s dead”の解説で冠詞の真髄を理解した人も多いと思います(子供が母親に”The cat’s dead”と言ったら、”A cat’s dead”と言いなさいと正された)。

『科学論文の英語用法百科 第2編: 冠詞用法』は、『技術英語の冠詞活用入門』の内容をより深く、よりアカデミックなアプローチで解説しています。例文も豊富で、なかでも誤用例と添削例があるのがパケットシリーズのいいところだと思います。用語もアカデミックになっていて、例えば、私が普段好んで使っている「特定感」が「同定性」となっています。自分が稚拙な言葉を使っているような気分になり少し恥ずかしくなりました。

パケットシリーズは難解すぎて途中で読むのをやめたということをよく聞きますが、私は、日本人がおかしやすい英文ミスについて他に類を見ないほど詳細に解説してあるという点で、パケットシリーズは素晴らしい本だと思っています。

 

ジェームズ・バーロー著『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』

日英特許翻訳の重要ポイントが
簡潔にまとめられた秀逸な記事をご紹介します。

ご紹介するのは、
日本弁理士会が発行している「パテント」誌にかつて掲載された
『特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために』
という記事です。

著者であり米国特許弁護士である
ジェームズ・バーロー氏は、
米国特許庁の元審査官で、
日本で約3年にわたり特許出願の英語翻訳文を校正したご経験があります。

この経験を通して氏が気づいた英語翻訳文の問題点と
その解決案が示されているのが上記記事です。

例えば、次のようなポイントが例文とともに解説されています。

・文は短く書く
・簡潔に書く
・能動態で書く
・「that」と「which」を正しく使う

20年近く前の記事(「パテント」誌1998年4月号)ですが、
その内容の素晴らしさは今も変わることはなく、
特許翻訳者や特許実務家のための
一級品のテキストだと個人的に思っています。

しかし、掲載から20年近くが経ち、
記事の入手が難しくなっていました。

そこで、この度、関係各所の承諾を得て、
記事を当社のホームページに掲載し、
誰でも簡単にアクセスできるようにしました。

特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために

原文である英文と日本語訳の両方を
閲覧できるようになっています。

今回、記事を当社のホームページに掲載できたことで、
誰でも好きなだけ読むことができるようになりました。

20年近く前に書かれたものとは思えないほど、
ここで提起されている問題は今でも現実の問題として
感じられるのではないでしょうか。

今回の取り組みが皆さまのお役に立てば幸いです。

100%誤解のない文章を書くのは難しい

ネット上で見つけたある記事を読み、特許翻訳者として非常に考えさせられました。”25+ People Who Take Instructions Too Literally”(https://goo.gl/1N7zGB)という記事で、書いてある英語の指示が、意図した意味とは違う意味にとられた例がいくつか紹介されています。これらの例はどれも笑えるのですが、同時に、人に誤解を与えない文章を書くのは本当に難しいということを教えてくれます。例えば、次の写真の例では、pumpkin, log, river, fox, pondをアルファベット順に並べなさいという指示が書いてあります(appleに×印が付いているのは、appleが一番目にくることが示唆されていると思われます)。

alphabetical

この指示に従うと、fox, log, pond, pumpkin, riverという順番に並べるのが正解と思われますが、回答欄には、1つ1つの単語を構成するアルファベットをアルファベット順に並べ直したものが記入されています。小学生による回答のようで、大人の世界ではあり得ない回答かも知れませんが、指示「Write the following words in alphabetical order」が100%誤解のない文章ではないことがこの小学生によって証明されています。この指示をより誤解が少なくなるように修正するとしたら、WriteをPut, Place, Sort, Listなどに置き換えるといいかも知れませんが、それでもなお、写真のような対応をする小学生が出てくることも否定できません。

次の例は、ドレッシングのカバーのタブに書いてある指示「OPEN ON OTHER SIDE」に対して、わざわざナイフを取り出してきて底の部分を切り開いており、明らかにウケ狙いと思われますが、指示「OPEN ON OTHER SIDE」は下側の写真のように対応できなくもないということを示しています。そういう意味では、これも上の例と同じく考えさせられるものです。そもそも、なぜこんな指示が書いてあるのか気になります。指示が書いてあるタブの反対側にタブを設けて「OPEN ON THIS SIDE」と書くのではダメなんでしょうか。。。

otherside

米国特許庁では、Broadest Reasonable Interpretation (BRI)という方針のもとでクレームが審査されます。BRIは、クレームはリーズナブルな範囲で広く解釈されるという意味で、広く解釈される分、先行技術とバッティングする部分が大きくなり、それだけ審査に通りにくいということを示しています。上の2つの写真もBRIの例だと思います。

次の例では、指示のitを明確にすれば犬の悲劇は確実に避けられると思います。

dog

当社にしかできないことをやる

先日、会社の第6期決算が終わりました。決算書は会社の1年間の通知表のようなものだと思いますが、新しい決算書を見る度にいちばん感じることは、ずっと仕事を依頼し続けてくれているクライアントへの感謝です。世の中には、優秀な翻訳者はたくさんいると思います。実際、私が過去に行った特許翻訳セミナーの受講者のなかにも、非常に上手い特許翻訳をする人が何人もいました。当社は特許翻訳がもっともっと上手くなりたいと思い日々研究していますが、それは他の会社も同じだと思います。そういったなかで、当社を選んで依頼してくれるクライアントには感謝しかありません。

正直に言って、現在のクライアントから当社のどこが評価されているのかははっきりとは分かりません。ただ、これまで、当社にしかできないことをやりたいと思いながら活動してきました。特許翻訳のサービスを行う会社が世の中に既に氾濫していたなかで創業した当社にとって、他との差別化こそが生きる道だと思ったからです。これからは、この差別化をもっと進めていくとともに、当社を支えてくれる「米国特許翻訳者」の育成にこれまで以上に力を入れていこうと思っています。

メールを送るときは一番伝えたいことをタイトルにする

『ABSTRACTを150ワード以内にまとめる』(http://beikokupat.com/blog/?p=1051)において、一番重要なことを見極めて短くまとめるということを書きました。この作業の練習を兼ねて日頃からできることがあります。それは、メールを送るときに、一番伝えたいことをタイトルにすることを心がけて実践することです。これは、私が過去に行ったセミナーでも紹介したことがあります。メールのタイトル部分を短く書くということは誰でも実践していることだと思いますが、多くのメールはタイトルに件名だけが書かれていて具体的な内容は本文を見なければ分からなくなっており、忙しい人への配慮のないものになっています。これを、短いのはそのままにして、一番伝えたいこと(結論とも言えます)をタイトル部分に書くようにします。これにより、メールの受け手はタイトルを見るだけで本文の大体の内容を掴める上、上記のように、一番重要なことを見極めて短くまとめるという、米国出願用の明細書翻訳を行う人にとって必要なスキルを身につける練習にもなります。

非常にシンプルな例を見てみます。仕事で取引先の担当者に会いに行くことになり、その日時を担当者にメールで伝える際、メールのタイトル部分に例えば「11月10日14時に御社に伺います」と書きます。これを、「御社訪問の件」などと書くと、担当者は本文を見なければ相手がいつ来社するのか分からない状態になります。また例えば、私の会社のトライアルを受けてくれた人がいて、その人に審査結果をメールで伝えるとすると、タイトル部分に「トライアル審査結果のご連絡」などと書いて勿体ぶらずに、「トライアル合格のご連絡」のようにストレートに書くかも知れません。

これをもっと複雑なサンプルを使って、しかも英文で練習できるという素晴らしい本があります。『メソッド方式 英文ビジネスライティング完全マニュアル』という本で、この本には、一番重要なことを見極めて短くまとめる方法の説明と、英文で行う練習問題が載っています。また、この本はエンジニア向けに書かれたものらしく、工学系の題材がふんだんに使われており、特許翻訳者や知財関係者にとっては馴染みやすいのではないかと思います。その他にも、この本には関係代名詞のthatとwhichの使い分けや三段論法など、英文ライティングの基本が詰め込まれています。

 

※当社はアマゾン・アソシエイトに登録しており、上記リンクからの購入により当社に紹介料が入る仕組みになっています。紹介料は当社ホームページの運営費に充てています。

『下町ロケット』のTBS版とWOWOW版

テレビドラマ『下町ロケット』は、“Flash of Genius”(http://beikokupat.com/blog/?p=848)とともに、特許が重要テーマになっている数少ないドラマの1つで、TBS版とWOWOW版とがあります。先日、WOWOW版を初めて観ました。数年前に放送されたTBS版を観てハマり、WOWOW版も観たいとずっと思っていました。TSUTAYAでDVDを全話分借り、先週のバリ島旅行のときに移動中の飛行機内で観ました。TBS版は、演技や演出を大げさにしてエンターテイメント性を出しているような印象でしたが(これはこれで面白かったですが)、WOWOW版は、よりシリアスな社会派ドラマとなっています。主人公の社長・佃航平の性格も対照的で、TBS版では熱血漢であるのに対し、WOWOW版では内省的な印象を受けました。本来根暗な私にとっては、どちらかというと後者の佃航平の方が親しみがもてたように思います。また、WOWOW版は、TBS版と違い、ロケットエンジンのバルブシステムを開発するロケット編のみが描かれ、心臓弁を開発するガウディ編は描かれていません。私が知る限り、WOWOW版はAmazonビデオで視聴でき、TBS版はhuluで視聴できます。

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同じホテルチェーンに泊まり続ける

バリ島に行ってきました。島内にあるアグン山という火山が噴火するかも知れないという外務省からの注意喚起があり(http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C201.html)、旅行のキャンセルが相次いだようですが(https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092700891&g=int)、旅行者が減って穴場になれば喜ばしく、また噴火したらしたで面白い経験になるだろうと思い、自己責任で旅行を強行しました。幸い滞在中の噴火はありませんでしたが、初日は空港周辺が悪天候で、乗っていた飛行機がなかなか着陸できず、空港上空を1時間以上旋回するという別の面白い経験をすることができました。

私は、海外旅行するとき、週末に連泊すると1泊分が無料になるという、いくつかのメジャーなホテルチェーンが採用している制度を利用しています。今回もこの制度を利用しました。以前は、ホテルの宿泊代を比較できるサイトをチェックしてできるだけ安く泊まれるホテルを探していました。しかし今は、気に入ったホテルの会員になり、国内・海外を問わず、どこに行ってもこのホテルチェーンを利用しています。会員になることで上記制度を利用できる上、泊まれば泊まるほどロイヤルティーが評価されてポイントの還元率が高くなり、長期的に見て安上がりになることが分かりました。

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米国特許法の学習者は持っておきたい辞書

『第3回:米国特許法の基本~事実問題及び法律問題~』(http://beikokupat.com/us-patent/number3/)において、『英米法辞典』(東京大学出版会、田中英夫編集)を使って「コモン・ロー」などの法律用語が解説されています。『英米法辞典』は、米国特許法の学習者向けに推奨されることが多い辞典の1つで、私も1冊持っています。「コモン・ロー」「エクイティ」など、普通の辞書の定義ではよく分からないような法律用語が非常に詳しく解説されており、この辞典を持っていると、日々の仕事をやっていく上で頼れるものがあるという安心感があります。

法律について「知らないことを英語で知る」ために、英語で書かれた法律辞典も手元に置いています。私が持っているのは、「Black’s Law Dictionary」という辞典の卓上版です。これも『英米法辞典』同様に解説が詳しく、定義をさっと調べるというよりも、じっくりと読む類いのものです。カバーする用語の範囲も広く、例えば、pre-AIAの§102(b)などに対して使われる”statutory bar”が載っている辞典は、私が知る限り「Black’s Law Dictionary」(卓上版)だけです。