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課題と効果


私はA国特許庁の審査官。この仕事を始めてかれこれ15年になる。最近特許出願が増加しており、毎日徹夜しているが、今日は早めに仕事が片付いた。今日は妻と夕食に行く約束をしていたのだが、間に合いそうだ。

「今日、あと1件お願いします。すみません。」『わかりました、そこに置いてください。』

くそう、なぜ今日に限って!一日何件の審査をしろというんだ!こうしてはいられない。早く仕事を片付けなければ。

まず、クレームを見る。~~画像形成装置、comprising:表示部;画像形成部;and前記表示部から突出した星形の突出部。~~

今回の発明はコピー機か。表示部、これは従来から存在するだろう。画像形成部、これも従来から存在するだろう。星形の突出部、これは何だ?これが今回の発明にとって重要な要素に違いない。

この星形の突出部は従来存在していない要素のようだから、今回の発明は新規性の問題をクリアしてそうだ。あとは自明性(進歩性)の問題だな。自明性(進歩性)を判断するために、今回の発明の課題と効果を把握しなければ(MPEP§2141.03)。

この星形突出部に注意を向けて次に明細書を見ていくとしようか。

【背景技術】には何が書いてある、やはり今回の発明はコピー機のようだ。最初の考えは正しかった。

従来技術の問題点はどこだ、【背景技術】に書かれていないのか。では【発明の概要】、ここにも書かれていないのか。【発明が解決しようとする課題】はと・・・、【発明が解決しようとする課題】の欄が設けられていないのか。従来技術の問題点はイントロ部分には書かれていないのか!この発明の課題はどこに書いてあるのだ!!クレームの突出部の存在意味は何なんだ!!!

まあいい、【発明の効果】を見れば、問題点に関するヒントも見つかるはずだ。【発明の効果】はどこだ。この次のページか?何だと、【発明の効果】の欄も設けていないのか!何のために突出部がクレームに記載されているというんだ!!

ということは、この広大な【発明を実施するための形態】中のどこかに課題と効果とを散りばめて記載しているというのか。この出願人はそれを私に自分で探せというのか。どこに記載されているというのだ、これではウォーリーを探せではないか!どこを見れば突出部の重要性が理解できるんだ!!

急げ、急いで【発明を実施するための形態】を見るんだ。時間がない。くそう、ざっと見たが見つからなかった。

もういい、時間がない。この出願だけに時間を割いている訳にはいかない。決めた。この突出部は、単なるデザイン上の設計事項だ。特に効果はない。よし、この発明は自明性(進歩性)により拒絶としよう。終わった、何とか妻との約束に間に合いそうだ。


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