日英知財研究

対応する(Correspond)


対応する(Correspond)

『クレームビルダー!クレームの作成依頼がきました。今回の発明は、ドラミモン氏が発明した“どこへでもドア”という発明だそうです。』

「了解。なるほど、ドアを開けるとどこでも好きな場所に移動することができるのか、すごいな。じゃあ、今回は、キミが一度クレームを作成してくれないか?」

『わかりました!やってみます。まずは明細書を見てと。なるほど、ドアを開けると行きたい場所に行けるのか。つまり、行きたいと思った場所に対応する場所と繋がるドアなんだな。よ~し、わかったぞ。出来ました!こんなかんじのクレームでどうですか、バッチリだと思います!』

~~~ドアにおいて、行きたい場所に対応する場所と繋がることを特徴とするドア。~~~

「う~ん、気になるところがたくさんあるね。例えば、”行きたいところ”ということは、人間がクレームの構成要素に含まれてくるとか・・・。その辺りは今回置いておくとして。でも、”対応する場所と繋がる”というのはいい着眼点だと思うよ。確かに、今回の発明は対応する場所に繋がるので、このクレームで特許権が取得できた場合には“どこへでもドア”の発明を保護することができる。だけど、普通の一般的なドアもクレームで記載した保護範囲に含まれることになるから新規性・進歩性違反で特許を取得できないんじゃないかな。」

『そんなことないですよ、普通のドアならばいろいろな場所に行けないじゃないですか!明細書の従来技術にもそう書いてあるじゃないですか!』

「確かに、明細書中に記載してあるように、“どこへでもドア”と従来技術の普通のドアとは異なるけれど、クレーム上ではその違いが表現されていないんだよ。クレームには”対応する(Correspond)場所と繋がる”と書いてあるけど、ここで言う”対応する(Correspond)”とは何だろうか?何をもって”対応する(Correspond)”というのだろうか?反対に、どうなれば”対応する(Correspond)”に該当しないのだろうか?例えば、普通のドアを開けても、ドアの向こうはその人が行きたいと思っている場所に”対応する(Correspond)”のではないのかな?トイレにドアがあって、トイレに入りたいと思っている人がそのドアを開けたら、行きたいと思っている場所に”対応する(Correspond)”トイレ内空間に繋がっているのではないのかな。」

『そんなふうに言われるとそうですね…、確かに、普通のドアも”対応する(Correspond)”場所と繋がってますね…。』

「”対応する(Correspond)”という表現は、非常に便利な表現で多くの状況に対して使用することができる表現なのだけど、ということは状況毎の相違に関係なく使用することができるということになり、特許的な意味での従来技術との差別化にはほとんど役に立たない表現ということなんだよ。書いてあるけど、特許的には書いてないのと同じような感じなんだ。」

『そうなんですか…、じゃぁ、どういう風に書けばよかったのですか?』

「もう少し掘り下げて発明を見るんだよ。今回の”対応する(Correspond)場所と繋がる”というのは、どのようなメカニズムで達成できるかを考えるんだ。明細書をまだじっくり見ていないから良く分からないが、多分、テーブルが記憶されているはずだ。そのテーブルは、入力信号1、2,3…と場所1、2、3…とを関連付けた表のようになっていると思う。それで、人がドアを握るときに何らかの入力信号が“どこへでもドア”に入力され、その入力信号の識別番号と関連付けてある場所がテーブルに基づいて抽出され、その抽出した場所がドアの向こうに繋げられるようになるのではないかな。テーブルにおける入力信号の識別番号との関連付けが、今回の”対応する(Correspond)”という意味ではないかな。つまり今回の発明では、”対応する(Correspond)”を実現するために、このようなメカニズムを用いているのではないかな。」

『あ、本当だ。そんなテーブルが記憶されているみたいです。なるほど、”対応する(Correspond)”ってよく使うけど、”対応する(Correspond)”というように効果主体で書くのではなくて、そんな風にメカニズム主体で書けばいいのですね。』

「そうなんだよ。装置の発明の場合には、まさにメカニズム主体で書かないと、なかなか従来技術との差別化ができないんだ。特に米国では日本よりも明細書に引きずられることなくよりクレームの記載内容に忠実に審査が行われるため、効果主体で書くと、明細書に記載した従来技術の発明が引例としてあげられることも頻繁にあるんだ。”審査官は明細書を読んでいない”とか後で不平をいう出願人もいるのだけれど、何で明細書に記載した従来技術の発明が引例としてあげられるかというと、上で述べたようにクレームが十分に差別化できるように記載できていないからなんだ。キミのクレームを少しだけリバイズしようと思うけれど、例えばこんな感じになるのではないかな。」

~~~ドアにおいて、行きたい場所を示す複数の入力信号を受け付ける受付部と、複数の場所と空間的に繋がる空間接続部と、前記複数の入力信号それぞれを示す識別情報と前記複数の場所それぞれを示す識別情報とを関連付けるテーブルと、前記受付部が受け付けた入力信号の識別情報に関連付けてある場所の識別情報を前記テーブルから抽出する抽出部とを備え、前記空間接続部は、前記抽出部が抽出した識別情報が示すに対応する場所と繋がることを特徴とするドア。~~~

『なるほど、これで何か装置みたいに見えてきましたね。でも”対応する(Correspond)”っていう効果を表現するためには、こんなにたくさん書かないとダメだったんですね。』          


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