日英知財研究

“背景技術”と“発明の概要”


『いま米国用に明細書の英訳をしてるのですけど、“背景技術”と“発明の概要”との英訳には何を使えばいいですか?』

「そうだね、“背景技術”には“DISCUSSION OF THE BACKGROUND”を使用し、“発明の概要”に“SUMMARY”を使用してはどうだろう。日米欧での共通様式(三極共通様式)にはそれぞれ、“Background Art”・“Background”と“Summary of Invention”・“Summary”も例示してあるし、米国特許庁では“Background of the invention”と“Brief summary of the invention” も例示してあるよ(37 cfr 1.77)。」

『わかりました。では、“背景技術”には“DISCUSSION OF THE BACKGROUND”を使用し、“発明の概要”に“SUMMARY”を使用しますね。』

「ちょっと待ってね。ここで問題なのが“SUMMARY”の挿入位置なんだ。日本の明細書では、“背景技術”に従来技術の内容・従来技術の問題・今回の発明の目的が記載してあって、“発明の概要”に請求項の重複内容を記載してあることが多いんだけど、キミの原文明細書はそうなっていない?その原文明細書にある“発明の概要”の位置に“SUMMARY”を挿入すると、米国では、今回の発明が持っている進歩性レベルが下げられる可能性があるんだ。実は米国出願で、“背景技術”・“DISCUSSION OF THE BACKGROUND”のセクションに従来技術の内容だけでなく従来技術の問題やそれに伴う今回の発明の目的を記載すると、その従来技術の問題は当業者が一般的に把握している問題であると解釈し、その今回の発明の目的も当業者が一般的に想到する目的であると解釈する審査官がいるんだ。従来技術から問題点を炙りだして発明の目的とすることは、発明者の創作的行為だと思うんだけど、それを“背景技術”・“DISCUSSION OF THE BACKGROUND”に記載すると、出願時にみんなが知っている問題点であってみんなが共有している目的だと解釈されることがあるんだ。そのように解釈する審査官にあたった場合には、今回の発明の様に構成することで有利な効果があったとしても、デザイン上の選択事項であるとしてオフィスアクションで進歩性欠如と判断されかねないんだ。そのため、“発明の概要”の訳としての“SUMMARY”は、従来技術の問題やそれに伴う今回の発明の目的が記載してある部分よりも前へと引っ越して挿入した方がいいよ。」

『へ~。翻訳の挿入位置だけで、その後の審査結果が変わってくるんですね。』


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