コラム特許翻訳:関係代名詞②~先行詞の性質によってthatを使うかwhichを使うかが変わる~


     

関係代名詞thatとwhichの使い分けについて,基本的にthatは限定用法として使用し,whichは非限定用法として使用します(関係代名詞①参照)。ただし,次の例のように先行詞の性質によってthatを使うかwhichを使うかが変わることがあります。

  例:クレーム2に従属するクレーム3

この例文を英訳するにあたり,クレーム同士の従属関係を把握する必要があります。すなわち,仮にクレーム3がクレーム1と2に従属するマルチクレームの場合,英訳は限定用法thatを使用した次のようなものになります。

  Claim 3 that depends from claim 2.

この訳例では,thatを使用することにより,クレーム1に従属するクレーム3と,クレーム2に従属するクレーム3という2種類のクレーム3のうち,クレーム2に従属する方のクレーム3に「限定」することを行っています。

これに対して,クレーム3がクレーム2のみに従属するクレームの場合,英訳は非限定用法 “, which” を使用した次のようなものになります。

  Claim 3, which depends from claim 2.

この訳例では “, which” を使用することにより,クレーム3はクレーム2にしか従属していないことを示しているため,コンマ以下の文章 “, which depends from claim 2” は「当たり前」の情報といえ,特にクレームにおいてはこのような当たり前の情報をあえて記載するのは何らかの意図がある場合のみとすることが推奨されます。

In many English translations, the reader cannot tell if information is crucial or supplemental because the translator does not distinguish between “that” and “which” and often has not used commas to surround supplemental information.※1
【参考日本語訳】
翻訳者が「that」と「which」を区別しておらず,補足的な情報を囲むコンマも使っていない英語翻訳文では,その情報が重要なのか補足なのかをその読み手が判断することができません。

なお,「~に従属する」はdepend fromでもdepend onでもよく,米国特許実務では前者の方が一般的です。

“depend from” の使用例:

If a dependent claim depends from a dependent claim, then it incorporates everything set forth in the claim from which that claim in turn depends.※2

※1:ジェームズ・バーロー. “特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために”. 米国特許翻訳社ホームページ. 2019.
http://beikokupat.com/barlow/
※2:Faber, Robert C. “Chapter 10 Thoughts on Writing a Claim”, “§10:8 Review of Some Basics”. Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting, 7th ed., Practising Law Institute, 2017.

本コラムは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』から一部を抜粋したものです。


カテゴリ: コラム特許翻訳

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