「~という問題」を"problem that~"としない方がいい

『英文明細書マニュアル』の一部をご紹介しています。

次の例文のように、【発明が解決しようとする課題】は「・・・では(には)、~という問題があった(または「~という問題がある」)」という典型パターンで始まります。「・・・」の部分には、従来の技術内容が記載されます(下の例では「従来の通信システム」)。

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の通信システムでは、通信負荷を十分に軽減できないという問題があった。

この典型パターンを英訳するにあたり、次のように「~という問題」を"problem that~"とする例がよく見られますが、このようにすべきではないという意見があります。

避けるべき英訳例1:In the above-described conventional communication system, there was (has been) a problem that communication load cannot be decreased sufficiently.

避けるべき英訳例2: The above-described conventional communication system has (has had) a problem that communication load cannot be decreased sufficiently.

これらの例のように「名詞+that」とし、"that"以下で名詞の具体的な内容を記載して「~ということ」のように表現する用法は、「同格のthat節*」と呼ばれています。この用法で注意すべき点は、"that"の前に置くことのできる名詞はある程度決まっており("fact"、"news"、"remark"、"idea"、"order"、"feeling"など)、"problem"はこれらの名詞に含まれていないことです。つまり、同格のthat節の用法で"problem that~"とすると、読み手よっては違和感を覚えます。

"fact"(事実、こと)を使った「同格のthat節」の例:
The fact that he won the Nobel Prize had nothing to do with the fact of his being Japanese.
(ノーベル賞を受賞したということは、彼が日本人であるということとは何の関係もなかった)*

このように、"problem that~"を同格のthat節の用法で使用しない方がよく、これ以外での"problem that~"の用法としては、次の例1,2のように"that"を先行詞"problem"の主語や目的語にすることが考えられます(違和感なく読むことができます)。

例1:the communication load problems that are attendant with conventional communication systems(従来の通信システムに付随する通信負荷問題)

例2:the communication load problems that conventional communication systems have(従来の通信システムの(がもつ)通信負荷問題)

では、「~という問題」を実際にどのように英訳すればいいかについて、次節で解説します(『「~という問題」のさまざまな英訳方法』)。

*綿貫陽, マーク・ピーターセン. 表現のための実践ロイヤル英文法. 旺文社, 2011, p.234.

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