コラム特許翻訳:図面に関する英文①~whenを不用意に使わない~


特許明細書には,分野によっては図面について説明した文章(どのような図面かを説明した文章)が頻出します。今回は,そのような文章を英訳する際の注意点について見ていきます。

例えば,次のような日本語原文があるとします。

「図1は,キャップ式筆記具のキャップ装着時の構成を示す側面図である。」

この原文において,キャップ式筆記具とは,例えばキャップ付きのボールペンなどを示しており,このようなボールペンは,使用されるときはキャップが取り外され,使用されていないときはキャップが装着されます。

 

上記原文を直訳調に英訳してみた例が次の英文です。

FIG. 1 is a side view illustrating a configuration of a capped writing instrument when a cap is mounted.

この訳例には種々の問題があると思われます。

まず,原文の意図を英文の読み手に伝える上での最も大きな問題と思われるのが,“when a cap is mounted” です。この表現は,原文の「キャップ装着時の」をそのまま英訳したものですが,キャップの装着先が筆記具であることが原文に明示されていないため,“when a cap is mounted” もキャップの装着先が明示されていない不明瞭な英文となっています。

日本語では,技術内容からキャップの装着先が筆記具であることを読み手が判断してくれると思われますが,特許英語では読み手側の想像力に依存した英文を書くことは避けるべきです。上記装着先に関する点を明確にして英文を書き直すと,例えば次のようになります。

FIG. 1 is a side view illustrating a configuration of a capped writing instrument when a cap is mounted on the capped writing instrument.

最初の英文をこのように修正してみましたが,この修正した英文にも不明瞭な点が残っています。

それは,“when a cap is mounted” のwhenです。whenはconfigurationを修飾することが書き手の意図ですが,実際にはillustratingを修飾すると解釈される可能性があります。illustratingは原文の「示す」に対応しているため,これが “when a cap is mounted” に修飾されるということは,「キャップ装着時に,キャップ式筆記具の構成を示す」(逆にいえば,キャップ非装着時には,キャップ式筆記具の構成を示さない)という理解し難い意味になり,読み手を混乱させる可能性があります。

このような事態を避けるため,whenを使用せずに,例えば次のようにすることが考えられます。

FIG. 1 is a side view illustrating a configuration of a capped writing instrument with its cap on.

この英文では,“with its cap on” という表現により,筆記具にキャップが装着された状態が示されており,上記whenにまつわる問題が解消されています。

ただし,上記英文はスタイルの面で改善の余地があると思われます。上記英文のviewは,「モノ」をある方向から眺めたときの様子を表すため※1,「view of モノ」という形式で使用するのが一般的です(例:an aerial view of the military earthworks※1)。また,「構成」を表すconfigurationは,図面は一般的にモノの構成を示すものであることから省略可能であると思われます。これらの点を考慮して書き直したものが次の英文です。

FIG. 1 is a side view of a capped writing instrument with its cap on.

本例の日本語原文「図1は,~を示す側面図である。」の「側面図」ように,日本語明細書では「何の側面図か」が明示されていないことがあるため,英訳にあたり実際に図面を見て何の側面図かを確認する必要があります。上記訳例は,図1を見てキャップ式筆記具の側面図が描かれていることを確認した上での訳例であるとします。

※1:https://www.lexico.com/en/definition/view

本コラムは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』から一部を抜粋したものです。


カテゴリ: コラム特許翻訳

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