第15回:米国特許法の基本~米国特許商標庁の手続におけるクレーム解釈(その3)~(2020年1月20日)

2020年1月20日
著者:小野 康英(米国特許弁護士、日本国弁理士)

前々回、米国特許商標庁(USPTO: United States Patent and Trademark Office)の手続におけるクレーム解釈については、現行、当事者系レビュー(IPR: Inter Partes Review)(35 U.S.C. 311-319)、付与後レビュー(PGR: Post Grant Review)(35 U.S.C. 321-329)、及び、所定ビジネス方法特許に対する暫定付与後異議申立て(CBM-PGR: Transitional PGR for Covered Business Method Patents)(AIA 18; 37 C.F.R. 42.300-42.304)におけるクレーム解釈基準はPhillips基準であり、一方、特許出願の審査を含めたそれ以外の手続におけるクレーム解釈基準は、原則、BRI基準であることを紹介した。そして、前回、BRI基準の理解に好適と思われるMorris事件を紹介した。

今回は、連邦巡回区控訴裁(Fed. Cir.: United States Court of Appeals for the Federal Circuit)が、クレーム中の”continuity member”の解釈について、BRI基準及びPhillips基準のいずれの基準を用いるかにより結論が異なると明言したPPC Broadband事件を紹介する。

PPC Broadband, Inc. v. Corning Optical Communications RF, LLC, 815 F.3d 734 (Fed. Cir. 2016)

1.事件の経緯

(1)特許発明

同軸ケーブルは、内部導体(しばしば、”signal”又は”signal feed”とよばれる)及び外部導体(しばしば、”ground return” or “ground”とよばれる)を備える。いずれかの導体の接触が不十分な場合、ノイズ発生又は機能不全の問題が生じ得る。U.S. Patent No. 8,287,320(320特許)は同軸ケーブル用コネクタに関し、コネクタ本体(connector body)50、ポスト(post)40、ナット(nut)30(”coupler”)、及び、連続部材(continuity member)(連続部材は、電気的接地の連続性が前記ポスト及び前記ナットまで拡張される形で、ポスト及びナットと接触)を備える同軸ケーブル用コネクタ100を開示する。320特許は、20を超える連続部材の実施例を開示する。たとえば、図13は、連続部材370が本体50の下部まで延伸する実施例を示す。また、図17は、ポスト40及び本体50の間に挟まれる連続部材570を示す。


320特許のclaim 1は次のとおり規定する。

  1. A coaxial cable connector comprising:
  a connector body;
  a post engaged with the connector body, wherein the post includes a flange;
  a nut, axially rotatable with respect to the post and the connector body, the nut having a first end configured for coupling to an interface port, and an opposing second end, wherein the nut includes an internal lip, and wherein the second end portion of the nut starts at a side of the lip of the nut facing the first end of the nut and extends rearward to the second end of the nut;
  a continuity member disposed only rearward of the start of the second end portion of the nut and contacting the post and the nut, so that the continuity member extends electrical grounding continuity through the post and the nut; and
  wherein the nut does not touch the connector body, and the continuity member is configured to contact a rearward facing surface of the lip of the nut and extend between a portion of the post and a portion of the connector body.
(2)USPTOにおける手続

Corning Optical Communications RF, LLC(Corning)は、2013年11月から12月にかけて、320特許のclaim 1を含む複数特許の複数クレームについて、Matthews及びTatsuzukiに基づき自明であることを理由とする複数のIPR開始申請を行った。特許審判部(PTAB: Patent Trial and Appeal Board)は、全てのIPRを一括して審理した。

本IPR事件においては、クレーム解釈の基準について、2018年改正前37 C.F.R. 42.100(b)が適用された。同規定は”A claim in an unexpired patent shall be given its broadest reasonable construction in light of the specification of the patent in which it appears.”と規定していた。すなわち、本事件では、クレーム解釈の基準として、BRI基準が適用された。

PTABは、claim 1の”continuity member”は、”post”及び”nut”との常時接触を要しないと解釈した上で、IPR申請に係る全クレーム(claim 1を含む)を自明と結論した。

320特許の権利者であるPPC Broadband, Inc.(PPC Broadband)は、これを不服として、事件を連邦巡回区控訴裁へ控訴した。PPC Broadbandは、claim 1の”continuity member”について、この語は”post”及び”nut”との常時接触を要すると解釈すべきとした上で、claim 1はこの常時接触の特徴を開示しないMatthews及びTatsuzukiに基づき自明ではないと主張した。

2.連邦巡回区控訴裁判決

(1)結論

・320特許のclaims 1–7, 9–15, 17–30, and 32の拒絶維持審決を維持。
・同特許のclaims 8, 16, and 31の拒絶維持審決を破棄・差戻し

以下、本稿では、claim 1の”continuity member”の解釈に絞って、連邦巡回区控訴裁判決を紹介する。

(2)法廷意見の概要(起草者:Moore判事)

新しいAIA手続及びその前身である審査的手続(examinational proceedings)の間の差異にもかかわらず、USPTOは、両方の手続において、BRI基準を適用する(注1)。このアプローチの正当性は、Cuozzo事件において確認された(注2)

本事件では、クレーム解釈の基準が結論に決定的である(outcome determinative)。すなわち、”continuity member”の解釈について、Phillips基準及びBRI基準のいずれの基準に基づくかにより結論が異なる。具体的には、Phillips基準に基づけばPPC Broadbandが主張するように”continuity member”を、電気的接触を確立するべく”post”及び”nut”との常時接触を要する(requires “consistent or continuous contact with the coupler/nut and the post to establish an electrical connectio[n]”)と解釈するのが相当であり、BRI基準に基づけばPTABが結論したとおり常時接触を要しないと結論するのが相当である。

注1 2018年改正前37 C.F.R. 42.100(b) (“A claim in an unexpired patent shall be given its broadest reasonable construction in light of the specification of the patent in which it appears.”).
注2 In re Cuozzo Speed Technologies, LLC, 793 F.3d 1268 (Fed. Cir. 2015), affirmed by Cuozzo Speed Technologies, LLC v. Lee, 579 U.S. ____ (2016). 本判決当時、Cuozzo事件は米国最高裁に係属していた。
(a)Phillips基準

まず、外部辞書(注3)は、”continuity”を、”1. The state or quality of being continuous. 2. An uninterrupted succession or flow; a coherent whole.”と定義する。

次に、明細書は、複数個所にて、”continuity member”は常時接触を要すると述べている。たとえば、明細書は、一の実施例において、”continuity member”は「柔軟に収縮し、かつ、ナット30と常時の物理的及び電気的接触を維持し、これにより、ナット30まで延伸する接地経路の連続性を確保するように設計されている(designed to “flex and retain constant physical and electrical contact with the nut 30, thereby ensuring continuity of a grounding path extending through the nut 30″)」と記述する。また、明細書は、他の実施例において、”continuity member”を、「弾性的で、かつ、ナットとの常時の物理的及び電気的接な接触をする(making “resilient and consistent physical and electrical contact” with the nut)」、「ナットの表面と常時動作可能な積極を行う連続部材の性能を向上する」、「ケーブルからの連続的な電気的絶縁を構成する(creating “a continuous electrical shield” from the cable)」と記述する。

さらに、実際のところ、明細書は、発明の根本的な目的(fundamental purpose of the invention)(注4)を、接地の連続性を確保し、かつ、それにより、接地の喪失及び電磁シールドの不連続性といった、先行技術における、断続的な接地接触と関連する課題を解決することにあると教示する。

以上の”continuity”の通常の意味(ordinary meaning)、及び、”continuity member”により実現する「連続的な(continuous)」又は「常時の(consistent)」接触の議論を豊富に行う明細書の記載に照らし、Phillips基準に基づけば、”continuity member”は、PPC Broadbandが主張するように、電気的接触を確立するべく”post”及び”nut”との常時接触を要すると解釈される。

注3 The American Heritage College Dictionary (4th ed. 2002).
注4 320特許の明細書は、「発明の根本的な目的(fundamental purpose of the invention)」という用語を用いていない。法廷意見の起草者であるMoore判事は、明細書の”BACKGROUND OF THE INVENTION”の項における以下の記述を、クレーム解釈に重要な影響を及ぼし得る「発明の根本的な目的」と解釈したと推察される:”[O]ften connectors are not properly tightened or otherwise installed to the interface port and proper electrical mating of the connector with the interface port does not occur. Moreover, typical component elements and structures of common connectors may permit loss of ground and discontinuity of the electromagnetic shielding that is intended to be extended from the cable, through the connector, and to the corresponding coaxial cable interface port. Hence a need exists for an improved connector having structural component elements included for ensuring ground continuity between the coaxial cable, the connector and its various applicable structures, and the coaxial cable connector interface port.”
(b)BRI基準

BRI基準に基づくIPRにおけるクレーム解釈は、Phillips基準に基づき正しいとされる解釈とは必ずしも言えない。本事件において、BRI基準に基づくPTABの解釈は不合理ではない。

“continuity”及び”continuous”の通常の意味は、しばしば、時間的に連続した(uninterrupted in time)状況を指すが、これらの用語は、空間的に連続した(uninterrupted in space)状況を指すことがある(注5)。たとえば、連続した列(continuous line)は、列の長さが連続する状態を示す。その場合、時間の連続性についての要件はない。

明細書は、”continuity member”が電気的接地の連続性をポスト及びナットを介して延伸させる(the continuity member “extends electrical grounding continuity through the post and the nu[t]”)旨を開示する。さらに、明細書は、インタフェースポート20から、ナット30、連続部材70、ポスト40、及び、導電性接地シールド14まで、連続した接地経路(continuous ground path)を開示する。部材から部材へと延伸するこの「連続した接地経路」の記述は、”continuity”なる用語が、時間的に連続する接触(connection that is uninterrupted over time)ではなく、途切れることのない物理的な経路(unbroken physical route)を意味することと整合する。

PTABの解釈は、ポスト及びナットを介した「常時の(consistent)」又は「連続的な(continuous)」接触を要件としない。PTABの解釈は、追加の時間的限定(additional temporal limitation)を含まない点で、PPC Broadbandが主張する解釈よりも広い。したがって、PTABの解釈は、Phillips基準に基づけば正しくないが、”continuity member”の合理的解釈ではある。

IPRの審理では、BRI基準がクレーム解釈の基準になるので、PTABによる”continuity member”の解釈は正しい。

注5 法廷意見は、ここで示された”continuous”の定義について、”See J.A. 2967 (defining “continuous” as “1. Uninterrupted in time, sequence, substance, or extent” (emphasis added))”と述べるにとどまり、文献名を明記していない。この点、American Heritage Dictionary of the English Language, Fifth Edition (2016)は、”continuous”を、”1. Uninterrupted in time, sequence, substance, or extent.”と定義している。

3.考察

(1)規則改正

USPTOは、過去、IPR, PGR及びCBM-PGRにおけるクレーム解釈基準をBRI基準としていたが、2018年に規則改正を行い、同年11月13日以降に実体審理開始請求書が提出されるIPR, PGR及びCBM-PGRにおけるクレーム解釈基準をPhillips基準とすることとした(37 C.F.R. 42.100(b); 42.200(b); 42.300(b))。

本事件において、法廷意見の見解に従えば、CorningによるIPR開始申請が2018年11月13日以降に提出されていたら、本事件のIPRにはPhillips基準が適用され、結論が違っていた可能性がある。

(2)連邦地裁におけるクレーム解釈及びUSPTOにおけるクレーム解釈

特許侵害事件においては、まず、連邦地裁で特許侵害訴訟が提起され、その後、USPTOで当事者系再審査(EPR: Ex Parte Reexamination)(35 U.S.C. 302-307)又はIPRの開始申請がなされるというケースがある。その場合、同一のクレーム中の同一の用語について、連邦地裁はその用語をPhillips基準に基づき解釈し、USPTOのPTABはその用語をBRI基準に基づき解釈するという事態が生じ得る。その一例がTrans Texas Holdings事件(注6)である。

Trans Texas Holdings事件では、まず、連邦地裁で特許侵害訴訟が提起され(1999年10月12日)、その後、USPTOでEPRの開始申請がなされた(2000年10月6日)。上記特許侵害訴訟のMarkman orderにおいて、連邦地裁は、特許クレーム中の”responsive to the rate of inflation”は”continuous, one-to-one correlation with the inflation rate”を意味すると解釈した。その後、当事者は和解し、連邦地裁は、再訴禁止の効果を伴う請求却下の決定を行った(the district court issued an “Order of Dismissal with Prejudice”)。一方、EPRは続行し、USPTO審判部(BPAI: Board of Patent Appeals and Interferences)(注7)は、EPRにおけるクレーム解釈にはBRI基準が適用されるとした上で、上記”responsive to the rate of inflation”は、”not limited to a continuous, one-to-one relationship but also includes a delayed relationship, in which adjustments are made in one percent increments”を意味すると解釈した。すなわち、BPAIは、上記”responsive to the rate of inflation”について、先行する上記特許侵害訴訟における連邦地裁の解釈とは異なる解釈を行った上で、上記特許クレームを無効と審決した。連邦巡回区控訴裁における控訴審において、権利者Trans Texasは、主に、上記Markman orderが有する排除効(preclusive effect)、すなわち、USPTOは上記Markman orderの解釈に拘束されると主張した。これに対し、連邦巡回区控訴裁は、USPTOは、先行する上記特許侵害訴訟の当事者ではないため、上記Markman orderには拘束されないと判断した。その上で、連邦巡回区控訴裁は、EPRにおけるクレーム解釈において適用されるBRI基準の下で、BPAIの解釈は合理的であるとして、無効審決を支持した。

Trans Texas Holdings事件は、異なるフォーラム(連邦地裁、USPTO)が異なる基準(Phillips基準、BRI基準)に基づき行った同一のクレーム中の同一の用語についての解釈が異なった事件である。米国最高裁は、このような事態が法の想定内であることを後のCuozzo事件で明言した(注8)

これに対して、本事件は、同一のフォーラム(連邦巡回区控訴裁)が異なる基準(Phillips基準、BRI基準)に基づき行った同一のクレーム中の同一の用語についての解釈が異なった事件である。本事件の法廷意見は、紛争解決に関係のないPhillips基準に基づくクレーム解釈に言及する必要はなかったはずであるが、それを行ったことで、本事件は両基準の比較検討に参考になる事例になったと考えられる(注9)

注6 In re Trans Texas Holdings Corp., 498 F.3d 1290 (Fed. Cir. 2007).
注7 リーヒ・スミス米国発明法(AIA: The Leahy–Smith America Invents Act (Public Law 112-29))により、Board of Patent Appeals and Interferences (BPAI)はPatent Trial and Appeal Board (PTAB)に承継された。See 35 U.S.C. 6.
注8 Cuozzo Speed Technologies, LLC v. Lee, 136 S.Ct. 2131, 2146 (2016) (“A district court may find a patent claim to be valid, and the agency may later cancel that claim in its own review. We recognize that that is so. This possibility, however, has long been present in our patent system, which provides different tracks—one in the Patent Office and one in the courts—for the review and adjudication of patent claims. As we have explained above, inter partes review imposes a different burden of proof on the challenger. These different evidentiary burdens mean that the possibility of inconsistent results is inherent to Congress’ regulatory design.”).
注9 厳密にいえば、法廷意見のうち、紛争解決に関係のないPhillips基準に基づくクレーム解釈の部分は、傍論(obiter dictum)であって、先例性を有さないと考えられる。ただ、実務的には、その部分も十分に参考になると考えられる。田中英夫(編)「英米法辞典」東京大学出版会(1991年)参照(「obiter dictum 傍論;ディクタム □裁判官が判決の意見のなかで述べたことのうち、ratio decidendiと関係のない部分。先例としての効力はもたないが、その内容によっては、後の事件で弁護士あるいは裁判官によって引用され、判例法の発展に影響を与えることがある。単に dictum ということもある[。]」).
(3)BRI基準の本事件への適用

法廷意見は、Phillips基準及びBRI基準のいずれに基づく分析においても、外部証拠(辞書)及び内部証拠(明細書)を参照している。しかし、両分析において、参照する証拠の対象及び箇所が異なっている。

まず、外部証拠に関して、法廷意見は、Phillips基準に基づく分析において、The American Heritage College Dictionary (4th ed. 2002)の”continuity”の定義(”1. The state or quality of being continuous. 2. An uninterrupted succession or flow; a coherent whole.”)を引用して、”continuity”が時間的連続性に限定される方向に議論を展開した。一方、法廷意見は、BRI基準に基づく分析において、J.A. 2967の”continuous”の定義(”1. Uninterrupted in time, sequence, substance, or extent””)を引用して、”continuity”が時間的連続性だけでなく、空間的連続性に拡張される方向に議論を展開した。ここにおける法廷意見の外部証拠の引用の仕方は、所望の結論を導くのに都合のよい文献を適宜選択していると筆者には感じられる。

次に、内部証拠に関して、法廷意見は、Phillips基準に基づく分析において、明細書は、発明の根本的な目的(fundamental purpose of the invention)を、接地の連続性を確保し、かつ、それにより、接地の喪失及び電磁シールドの不連続性といった、先行技術における、断続的な接地接触と関連する課題を解決することにあると教示すると認定した。明細書はどの事項が「発明の根本的な目的」かを明示していないので、この認定には疑問をはさむ余地がある。仮に法廷意見によるこの認定が正しいとすれば、”giving a claim term its broadest reasonable interpretation in light of the specification” と規定するBRI基準に基づく分析においても、Phillips基準に基づく分析におけるのと同様、”continuity member”は、この「発明の根本的な目的」に照らして解釈されるべきと筆者は考える。ところが、法廷意見は、BRI基準に基づく分析においては、Phillips基準に基づく分析の中で認定した「発明の根本的な目的」には触れず、明細書が開示する”continuity member”についての20を超える実施例の中から2つを選択して、”continuity”なる用語が、時間的に連続する接触(connection that is uninterrupted over time)ではなく、途切れることのない物理的な経路(unbroken physical route)を意味することがあるとの論理を展開している。ここにおける法廷意見の明細書の引用の仕方も、上記外部証拠の場合と同様、所望の結論を導くのに都合のよい箇所を適宜選択していると筆者には感じられる。

以上の証拠の引用の観点から、法廷意見の論理展開には疑問があると筆者は考える。

もっとも、このような法理論に沿った観点とは異なる観点からみた場合、法廷意見は、Phillips基準に基づく分析において、”continuity member”を、「発明の根本的な目的」に照らして、時間的に連続する接触のある実施例に限定したのに対して、BRI基準に基づく分析において、時間的に連続する接触のある実施例及び空間的に連続する接触のある実施例の両方を含むように解釈した、とみることができる。BRI基準に基づく分析においてなぜ「発明の根本的な目的」が考慮されないのかやはり疑問であるが、あえて善解すれば、法廷意見は、Phillips基準に基づく分析においては「発明の根本的な目的」を重視し、BRI基準ではなるべく多くの実施例がカバーされるようにクレームの用語を解釈した、と言えるかもしれない。

(4)本事件のその後

本事件の法廷意見は、320特許のclaims 8, 16, and 31の拒絶維持審決を破棄し、事件をUSPTOに差戻した。たとえば、320特許のclaim 8は次のとおり規定する。

  8. The coaxial cable connector of claim 7, wherein the continuity member is configured to maintain electrical continuity when the nut is in both the partially tightened position on the interface port and in the fully tightened position on the interface port.

Claim 8は、claim 1に間接的に従属し、ポスト及びナットを介した「常時の(consistent)」又は「連続的な(continuous)」接触を要件としない態様に限定された同軸ケーブル用コネクタを規定する。すなわち、claim 8は、法廷意見によればPhillips基準に基づき解釈されるclaim 1と基本的に同じ発明を規定したものである。

差戻審において、PTABは、再度、同特許のclaims 8, 16, and 31の拒絶維持審決を行った(2016年11月16日付)。

(5)本事件の教訓

明細書作成の観点からは、複数の実施例がある場合、目的及びクレームを可能な限り分けることが本事件の教訓として想定し得る。明細書がそのような記載となっていれば、特定の実施例に関するクレームが生き残る可能性を多少なりとも高めることができる。ただし、320特許に関しては、”continuity member”をポスト及びナットを介した「常時の(consistent)」又は「連続的な(continuous)」接触を要件としない態様をclaim 8等に規定していたが、PTABはこれらのクレームについても特許性を認めなかった。320特許に関しては、結果論であるが、さらなる工夫が必要だったのである。

著者について

小野 康英

米国特許弁護士(*)、日本国弁理士
Westerman Hattori Daniels & Adrian, LLP勤務
(*)コロンビア特別区(DC)、ニューヨーク州(NY)、カリフォルニア州(CA)、米国特許商標庁(USPTO)

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