グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語 ~deal with~

グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、「deal with」(p.231-233)について見ていきます。

第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 42 ~deal with~

42.1 誤った用法

まず、deal withの誤った用法について、次のように解説されています。

deal withという表現は、次の誤用例が示しているように、analyze、consider、study、investigate、discussなどが意味的に適切な場合には、それらの代わりに用いない方が望ましい1

1deal withが誤用されている多くの場合、おそらく本来示そうとしているのは、日本語いう「扱う」の意味であろう。ここで留意してほしいのは、通常、「扱う」はdeal withに当たらないということである。

そして、deal withの誤った用法の例が8つ紹介されており、以下にそのうちの4つを記載します。

誤用例[1]: We deal with the situation in which the intersection of these sets is empty.
リライト例(1): We /consider/treat/study/investigate/ the situation in which the intersection of these sets is empty.
誤用例[2]: This system is dealt with as a special case of that considered by Rose.
リライト例(2): This system is treated as a special case of that considered by Rose.
誤用例[3]: When we attempt to deal with such a model, it takes a lot of computational time.
リライト例(3): A great amount of computational time is required to /treat/analyze/ such a model.
誤用例[5]: In the next section we deal with the functional integral approach to tunneling problems.
リライト例(5): In the next section we /discuss/consider/apply/ the functional integral approach to tunneling problems.

42.2 正しい用法

学術的な文章におけるdeal withの正しい用法は、主に次の2つであると解説されています(ただし、「取引・交際する」という本書では扱わない意味もある)。

  (1) 問題、障害などを乗り越えたり、困難を克服したりしようとするニュアンスがあり、"deal with"の目的語となる名詞が問題、障害、困難などとみなされる事柄を表す(この場合のdeal withは、take action with respect to、contend withと意味的に近い)。
  (2) 論文または本などの内容範囲を指定する。

そして、このような正しい用法の例が4つ紹介されており、以下にそのうちの2つを示します。

正しい用法(2): It was shown in Section 2 how to deal with the complication encountered in the case of the complete set of such functions.
正しい用法(4): This book deals with the fundamentals of rings, groups and fields.

 


※本記事は、著者の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)

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