翻訳業界誌『Amelia』の2017年5月号に「機械翻訳の現状レポート」という特集記事が載っていました。
以前から、日本語をソース又はターゲットとした機械翻訳(MT, Machine Translation)は精度に問題があると言われていましたが、この特集によると、現状でもまだ満足のいくMTはできていないようで、ポストエディットと呼ばれる、人間によるレビューがなくてはならないそうです。
現状では、MTは社内用の資料など、高い翻訳品質が求められないものによく使われているとのことです。
ここで言うMTは、翻訳を最初から最後まで機械に任せる(任せたい)という意味でのMTだと思われますが、多くの翻訳者にとって、MTよりは翻訳支援ツール(CAT, Computer Aided Translation, キャット)の方が馴染みがあるかと思います。当社もCATを使うことによって「機械+人間」(p.8)による翻訳をしています。つまり、「辞書を引いたり翻訳メモリ*に当たったりなど機械にできることは機械に任せ、翻訳者は人間にしかできない最終判断や表現のブラッシュアップを行う」(p.4)、「機械と人間が力を合わせて翻訳を仕上げていく」(p.7)という方針を当社も採用しています。
この特集で、遠野和子さんという翻訳者が書かれている『人間にしかできない、状況を判断し意図をくみ取った訳を』(p.8)と題した文章に深く共感しました。文章の中で、人間が機械に負けない点として、次の3点が挙げてられています。
①文脈をつかみ、言葉ではなく意味を訳す
②状況に合わせて文体や表現を選ぶ
③筆者の意図まで読み込み、くみ取った訳文を書く
(p.8)
そして、①~③の結果、「クライアントから「元の日本語より英訳を読んだほうがわかりやすい」と言われたことがありますが、翻訳者として最上の褒め言葉だと嬉しく思いました」(p.8)と書かれています。原文よりも訳文を読んだ方が意味が分かりやすいというのは、まさに当社が目指してきたことです。
特許翻訳において、MTの使用は今後より一般化すると思います。このような状況のなかで、翻訳会社は、MT翻訳のリライト作業を仕事の中心とするリライト会社になり、リライト能力によって他社との「違い」を出していくことが予想されます。