今回は,前回「図面に関する英文①」の続きとして,図面の説明に関する,前回より複雑な原文を英訳する際に便利な表現パターンをご紹介します。 |
例えば,次のような日本語原文があるとします。
図2は,キャップ式筆記具のキャップ装着時におけるキャップのシール部材とペン先の密着状態を示す断面図である。 |
キャップ式筆記具にキャップを装着することにより,筆記具のペン先をキャップ内のシール部材に当接させ,ペン先の乾燥を防ぐことが行われています。これを踏まえて,上記原文は,シール部材とペン先の密着度を従来よりも高めることを目的とした発明に関する原文であることとします。
前回の原文において図1が「何の側面図か」が明示されていなかったのと同様に,上記原文では図2が「何の断面図」が明示されていません。したがって,英訳にあたり,まず図2には何の断面図が描かれているのかを確認する必要があります。ここでは,図2の断面図はキャップ式筆記具の断面図であることを確認したとします。
本例の原文のように,「~を示す断面図である」の「~」部分が比較的長いという事態は日本語明細書において多く見られます。このような場合の英訳パターンとして,まず,「何の断面図か」を明示しておき,これに続けてillustratingを使用して上記「~」部分を説明するというものがあります。このパターンを使用して上記原文を英訳した例が次の英文です。
FIG. 2 is a sectional view of the capped writing instrument with its cap on illustrating how close the contact is between a sealant of the cap and the nib of the capped writing instrument. |
この訳例において,最初の下線部 “a sectional view of the capped writing instrument” においてキャップ式筆記具の断面図であることを明示し,2つ目の下線部illustratingを使用して上記「~」部分,つまり「キャップのシール部材とペン先の密着状態」に対応する英文を導入しています(「キャップ装着時における」は “with its cap on” で表現されています)。
なお,illustratingはsectional viewを修飾しており,illustrating前の説明が非常に長くなるとsectional viewとillustratingの間の距離が大きくなり,両者の修飾関係が読み手にとってわかりにくくなることがあります。この場合は,illustratingの代わりに “, the sectional view illustrating” としてillustratingの動作主を明確にすることが考えられます。
このように,「図2は,~を示す断面図である」といった日本語パターンに対して,view ofとillustratingを組み合わせて英訳することにより,「~」部分が非常に長い場合であってもすっきりと読みやすい英文にできることがあります。
本コラムは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』から一部を抜粋したものです。