コラム特許翻訳:ハイフン~名詞前の形容詞句をハイフンでつなぐ際の基本ルール~

 

英文において、名詞前の形容詞が複数の語からなる場合※1、それら複数の語をハイフン※2で適切につないで誤解を避けるという手法があります。

形容詞句をハイフンでつなぐ際の基本ルールと例外について、The Chicago Manual of Style※3が推奨するルールを以下にまとめました。

1. 基本ルール(1)~(6)

(1) 一般的に、名詞の前に形容詞句を配置する場合、読み手に誤解を与えないように、形容詞句をハイフンでつなぐ。
例: dog-eat-dog competition

以下のように、ハイフンなしの場合とハイフンありの場合とでは大きな違いがある。
small animal hospital
small-animal hospital

(2) 形容詞句のなかに複数の語からなる名詞句が含まれる場合、名詞句全体をハイフンでつなぐ。
例: time-clock-punching employees

(3) 1つの名詞の前に複数の形容詞句を配置する場合、ハイフンが特に重要となる。
例1: nineteenth-century song-and-dance numbers
例2: state-inspected assisted-living facility

(4) 2つの形容詞句の最後が同一の語である場合、最後の語を2つ目の形容詞句のみに付け、1つ目の形容詞句の最後には「ぶら下がりハイフン」(suspension hyphen)を付ける。
例: middle- and upper-class operagoers

こうすることにより、1つ目が「middle-class」であることを読み手に示すことができる。

ただし、2つの形容詞句の「最初」が同一の語である場合、ぶら下がりハイフンは不適切であり、最初の語を繰り返し使う。
例: left-handed and left-brained executives

(5) 形容詞句が量や時間的長さを表す場合、複数形を表す「s」を削除する。
例1: pregnancy lasts nine months → a nine-month pregnancy
例2: open twenty-four hours a day → a twenty-four-hour-a-day schedule

形容詞句が分数を表す場合、複数形を維持する。
例: a two-thirds majority

(6) 形容詞句が見た目に不格好な場合、文章全体を見直す。
例: The news about the lower-than-expected third-quarter earnings disappointed investors.
→ The news about the third-quarter earnings, which were lower than expected, disappointed investors.
→ Investors were disappointed by the third-quarter earnings, which were lower than expected.

2. 例外(1)~(3)

(1) 形容詞句が動詞(be動詞を含む)のあとにくる場合、形容詞句をハイフンでつながない。
例: a well-trained athlete → an athlete who is well trained (注:... who is well-trainedとしない)

(2) 形容詞句が固有名詞で始まる場合、固有名詞をハイフンでつながない。
例: the Monty Python school of comedy

(3) 2語からなる形容詞句の最初の語が「-ly」で終わる副詞である場合、形容詞句をハイフンでつながない。
例: a sharply worded reprimand
(ただし、a not-so-sharply-worded reprimand)

※1 このような形容詞をphrasal adjectiveやcompound modifierという。
※2 hyphen-minus, Unicode "U+002D"
※3 The University of Chicago Press. The Chicago Manual of Style, 16th ed., 2010, pp.227-228.

-The Chicago Manual of Style~シカゴ・マニュアル~, コラム特許翻訳

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