グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に※、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※
今回は、「all ofとそれに関連した表現」(p.51-52)について見ていきます。
1.第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 9 ~all ofとそれに関連した表現~
一般に、all of、any (one) of、both of、each (one) of、every one of、many of、some ofなどの表現は、複数のものを集合的に表す語の前にのみ用いることができ(例:both of these、some of them、all of the equations、each of the following)、both of x and yのような表現は間違っているとされています。本書には、そのような誤用例とリライト例が4組紹介されており、そのうちの2組を以下に示します。
誤用例[1] In two dimensions, both of p1 = N and p2 = 1/N are satisfied. リライト例(1) In two dimensions, both p1 = N and p2 = 1/N are satisfied. リライト例(1*) In two dimensions, both of the equalities p1 = N and p2 = 1/N are satisfied. リライト例(1**) In two dimensions, the equalities p1 = N and p2 = 1/N are both satisfied. |
誤用例[3] Even if some of c1, c2 and c3 vanish, this equation cannot be readily solved. リライト例(3) Even if one or more of the quantities c1, c2 and c3 vanish, this equation cannot be readily solved. |
※本記事は、著者グレン・パケット氏の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。
2.『科学論文の英語用法百科』について
学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。
筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)
第1編 よく誤用される単語と表現
シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。
第2編 冠詞用法
冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)