グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語~different~

グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、「different」(p.259-262)について見ていきます。

1.第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 47 ~different~

47.1 fromとthan 

different fromとdifferent thanはいずれも可能な表現で、different fromは「別個だ」という意味、different thanは「似ていない」という意味をより自然に示し、次の例文はそれぞれ若干異なった意味を表すとされています。

(1) This planet is different from that mentioned by James and Powers.
(2) This planet is different than that mentioned by James and Powers.

(1)は、"this planet"と"that mentioned by James and Powers"が個別の惑星を指しているという意味のみを示しているのに対し、(2)は、それぞれの惑星における状態が異なっているという意味も含んでいると解説されています。

47.2 betweenまたはamongとの誤った併用

一般に、differentと前置詞betweenあるいはamongを併用することはできないとされており、誤用例とリライト例が計4組記載されています(うち2組を以下に記載します)。

誤用例[2] The lifetime is quite different between the two cases.
リライト例(2) The lifetimes in the two cases are quite different.
リライト例(2*) The lifetimes differ significantly for the two cases.
誤用例[3] This value is different among the four models.
リライト例(3) This value is different for each of the four models.
リライト例(3*) This value differs among the four models.

47.3 fromとの誤った併用

different fromは、[形容詞]+[前置詞]の一定形式を構成し、一般に、これを分けない方が望ましいとされています。計5組の誤用例とリライト例のうち、1組を以下に記載します。

誤用例[1] This gives a different spin dependence from the standard one.
リライト例(1) This gives a spin dependence that differs from the standard one.

この問題について、次のように解説されています。

different fromを分離させることによって、一般に、ぎこちなさが生じ、文全体の意味が曖昧になる場合も多い。[1]について考えよう。ここでは、"from"が"spin dependence"に付いているように見えるため、この文は、"spin dependence"が"standard one"から生じるという意味を示していると解釈されうるが、本来の意味は、"spin dependence"が"standard one"と異なるという趣旨を表すことである。

47.4 in contrastとの同義語として誤用される場合

different fromを、次のように日本語の「・・・と違って」の意味として使用するのは誤用とされています。

誤用例[1] Different from the slightly relativistic case, here we cannot ignore the higher-order terms in β.
リライト例(1) In contrast to the slightly relativistic case, here we cannot ignore the higher-order terms in β.

differentは形容詞であるにもかかわらず、[1]では誤って副詞として動詞"cannot ignore"を修飾する目的で用いられていると解説されています。


※本記事は、著者グレン・パケット氏の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


2.『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)

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