equalは「量」についてのみ使える:『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語~equal~

グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、「equal」(p.288-293)について見ていきます。

1.第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 55 ~equal~

55.1 意味的な問題

一般に、数学においてequalは「量」(「quantity」)に対してのみ使用することができ、「量」ではないものに対して「同一性」を表す際には、equalではなくidentical、equivalent、coincident、congruent、isomorphicなどを使用するとされています。

本書では、equalが不適切に使用された例とそのリライト例が計32組紹介されており、そのうちの5組を以下に記載します。

誤用例[1] In the case μ = 0, these two theorems are equal.
リライト例(1) In the case μ = 0, these two theorems are equivalent.
誤用例[4] These curves are equal.
リライト例(4) These curves are identical.
リライト例(4*) These curves coincide.
誤用例[10] In the simplest situation, the Φ dependence of the first vibrational state is equal to that of the third.
リライト例(10) In the simplest situation, the Φ dependence of the first vibrational state is identical to that of the third.
誤用例[13] In this paper, we consider the case in which the domain of Σ is greater than or equal to its range.
リライト例(13) In this paper, we consider the case in which the range of Σ is a subset of its domain.
誤用例[27] In most cases of physical interest, these approximations are equal.
リライト例(27) In most cases of physical interest, these approximations are /equivalent/identical/the same.

55.2 文法的な問題

動詞equalは、必ず他動詞であるため(直接目的語をとるため)、動詞equalと直接目的語の間にtoを入れることは文法的な誤りとされています。以下、不適切に使用された例とそのリライト例を2組を記載します。

誤用例[1] x equals to y.
リライト例(1) x is equal to y.
リライト例(1*) x and y are equal.
誤用例[2] A and B equal to C and D, respectively.
リライト例(2) A and B are equal to C and D, respectively.
リライト例(2*) A and B equal C and D, respectively.

 


※本記事は、著者グレン・パケット氏の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


2.『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)

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