グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に※、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※
今回は、「rest」(p.523-524)について見ていきます。
1.第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 110 ~rest~
名詞restは、the part left overまたはthat remainingという意味で、形容詞として誤用されることがしばしばあります。以下の例では、restをrest ofあるいはremainingに置き換えるべきとされています。
誤用例[1] The rest equations can be solved similarly. リライト例(1) The /rest of the/remaining/ equations can be solved similarly. |
誤用例[2] We list the rest twelve marginal operations below. リライト例(2) We list the remaining twelve marginal operations below. |
(1)では、restが名詞として正しく用いられ、(1)(2)では、remainingが、現在分詞という形容詞の働きをする動詞形になっています。
"rest part(s)"は、意味をなさない句とされており、この誤用は、「残余」「残部」の直訳に起因すると思われます。ここでは誤用例とリライト例が計3組記載されており、そのうちの1組を以下に記載します。
誤用例[3] For the rest part of the paper, we focus on (1). リライト例(3) For the /rest/remainder/ of the paper, we focus on (1). |
※本記事は、著者グレン・パケット氏の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。
2.『科学論文の英語用法百科』について
学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。
筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)
第1編 よく誤用される単語と表現
シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。
第2編 冠詞用法
冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)