米国式特許クレームにおける“comprising”(移行部)+“a”(移行部に続く構成要素の冠詞)の解釈について、Faber on Mechanics of Patent Claim Draftingは次のように解説している。
●単数形の“a”を“comprising”とともに使い、他に意味を限定するような表現がない場合、通常単数形と複数形の両方の可能性をカバーする(但し、クレーム、明細書、審査履歴において、単数形に限定する意図がない場合。Harari v. Lee (Fed. Cir. 2011)参照)。
●不定冠詞”a”は、open-endedな移行部である“comprising”の後に使用しても「1つのみ」を意味することもあり、または文脈によって「1または1より多い」を意味することもある。定冠詞”the”や”said“は、それ以前に”a”で導入した要素を示すために使用するが、この場合も”a”に関する上記ルールは変わらず、要素を1つのみに限定することはない。Baldwin Graphic Sys., Inc. v. Siebert Inc.(Fed. Cir. 2008)参照。
●しかし、プリアンブルに続く移行部や、“a”や“an”の前の移行句が“consisting of”や“composed of”などのclosed-endedの場合、“a”や“an”も同様にclosed-endedと解釈される。移行部が“comprising”などのopen-endedな場合は、「1または1より多い」と解釈される。Scanner Tech. Corp. v. ICOS Vision Sys. Corp.(Fed. Cir. 2004)参照。
●開示及び/又はクレームされた実施形態の文脈によっては、裁判所は“comprising”に続く“a”について、唯一の要素または複数の要素のうちの1つのみと解釈し、1つより多い場合を排除する場合がある。Abtox, Inc. v. Exitron Corp.(Fed. Cir. 1997)において、要素の前に“said”が使用されていた。裁判所はこれを要素が1つのみクレームされていることを証明するものとした。筆者の見解では、このような解釈は、“comprising”を使用したクレームを不適切に限定したもので、クレームにおける“a”や“said”の通常の理解に反している。
●Abtoxよりも適切なFederal Circuitの見解例として、Elkay Mfg. Co. v. Ebco Mfg. Co.(Fed. Cir. 1999)がある。ここにおいて、“a”や“an”は“one”を示唆するが、これらの冠詞が使用される文脈によっては(KCJ Corp. v. Kinetic Concepts, Inc.)、“comprising”のようなopen-endedな移行部が使用されている場合に限り(Crystal Semiconductor Corp. v. TriTech Microelectronics Int’l, Inc.)、「1または1より多い」「少なくとも1つ」も意味するとされた。
Robert C. Faber, “Apparatus or Machine Claims,” chap. 3 in Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting, 7th ed., New York: Practising Law Institute, 2017. “§3:11 Singular and Plural Elements.”