sameの用法には5つのパターンがある


グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、特許翻訳においても誤用が多く見られる「same」(p.525-534)について見ていきます。

第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 111 ~same~

111.1 asと併用される場合

111.1.1 正しい用法

sameがasとともに使用される場合の基本的な文構造として、以下の5つのパターン(i)-(v)が挙げられています。

(i) [表現1] + is the same as + [表現2]

例文:(1) This shade of blue is the same as that (shade of blue).

ここでは、asは前置詞の役割を果たしている(詳細はp.526参照)。

(ii) [表現1] + the same as + [表現2]

例文:(2) This wine tastes almost the same as the expensive one (tastes).

ここでは、asは接続詞の役割を果たしている(詳細はp.526参照)。

(iii) [表現1] + the same [名詞] + as + [表現2]

例文:(4) I read the same book as you (read).

ここでは、asは関係代名詞の役割を果たしている(詳細はp.526参照)。

(iv) [表現] + the same [ケース1] + as + [ケース2]

例文:(8) The theme of this song is the same in the beginning as in the end.

ここでは、asは接続詞の役割を果たしている。

(v) [表現] + [名詞] the same + [ケース1] + as + [ケース2]

例文:(9) I had the same wine today as yesterday.

ここでは、asは接続詞の役割を果たしている。

sameとasの用法が正しい場合には、通常、(i)-(v)のパターンのいずれかになるとされています。

111.1.2 誤った用法

ここでは、sameとasが上記パターン(i)-(v)とは異なる用法で併用されているために、ぎこちなくなっている例文とリライト例が示されています(本書に記載されている6つの誤用例[10]-[15]のうち、[11]を以下に挙げます)。

誤用例[11]: This is the same model as that analyzed by Webber and Stevens.
リライト例(11): This is the model analyzed by Webber and Stevens.
リライト例(11*): This model is the same as that analyzed by Webber and Stevens.
リライト例(11**): This is the same as the model analyzed by Webber and Stevens.
リライト例(11***): This is /precisely/identical to/ the model analyzed by Webber and Stevens.

[11]は、[This] is the same [model] as [that analyzed by Webber and Stevens]という構造になっており、これはパターン(i)([表現1] + is the same as + [表現2])の誤用(つまり、”model”が余計)とされています。

111.1.3 asが抜けている場合

ここでは、asが必要であるにもかかわらず、asが抜けている例文とリライト例が示されています。

誤用例[16]: This is essentially the same plot in Fig. 1.
リライト例(16): This is essentially the same plot as in Fig. 1.
111.1.4 sameとasとの正しい併用

ここでは、sameとasが正しく併用された例が追加的に記載されています(本書に記載されている8つの誤用例[17]-[24]のうち、[17][18][20][23]を以下に挙げます)。

[17] I received the same grade as you. →パターン(iii)
[18] I will be here at the same time as yesterday. →パターン(v)
[20] The way that he looks at you is not the same as the way that he talks to you. →パターン(i)
[23] The pie at this restaurant does not taste the same as it used to. →パターン(ii)

111.2 sameが不必要な場合

ここでは、sameが不必要に使用された誤用例とリライト例が示されています(本書に記載されている17の誤用例[1]-[17]のうち、[5]を以下に挙げます)。

[5] In the present case, this approach shares the same merits as the conventional approach.
リライト例(5): In the present case, this approach has the same merits as the conventional approach.
リライト例(5*): In the present case, this approach shares the merits of the conventional approach.

[5]では、sameとshareとの併用に問題があるとされています。すなわち、shareはpossess the sameという意味を表すため、sameとshareが併用される場合、必ずどちらかが余計であるとされています。

111.3 その他の問題 

111.3.1. similarの同義語として誤用される場合

ここでは、sameがsimilarの代わりに誤って使用された例とリライト例が示されています。

[1] The application of this method is quite the same as that of the method discussed in the previous section.
リライト例(1): The application of this method is quite similar to that of the method discussed in the previous section.

このような誤用について、次のように解説されています。

“quite the same”のような、samenessが程度で測りうるということを含意する表現は、時々使われるが、正確な表現法が必要な場合、特に数学、科学的な文章では、不適切である。そのような場合には、形容詞sameがidenticalの同義語として扱う用法のみがふさわしい。

111.3.2. theが抜けている場合

sameに冠詞theが付かない場合はまれであるとされ、theが付いていない誤用例とリライト例が示されています(本書に記載されている4つの誤用例[2]-[5]のうち、[2]を以下に挙げます)。

[2] These are same basis vectors.
リライト例(2): These are the same basis vectors.

[2]においてtheが必要な理由について、次のように解説されています。

ここでは、”same”を使ったことによって、”basis vectors”がすでに指定されたという意味が示されている。(そうでない場合には、ここでの”same”の使用は非論理的である。)したがって、(名詞が表している物事が唯一に指定されているというのはtheが付くための必要十分条件であるので)この場合には、”basis vectors”は”the”をとる。

 


※本記事は、著者の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)


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