similarとtoは分離せずに常にsimilar toとした方がいい:『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語~similar~


グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、「similar」(p.538-546)について見ていきます。

第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 113 ~similar~

113.1 序論

まず、similarには3つの基本的な用法があり、それぞれが次の例文で示されています。

(1) Operations A and B are similar.

(2) A and B are similar operations.

(3) The operation A is similar to B.

これらは、ほぼ同じ意味を表しており、いずれにおいてもsimilarはABという名詞を比べるのに用いられています。この用法を踏まえた上で、similarの誤った用法を以下に見ていきます。

113.2 asとの誤った用法

ここでは、similarに最もよく見られる誤用の一つである、similarをasとセットで用いるという誤用が例示されています。similarは、same asと異なり、asとセットで用いることはできないと解説されています。

本書に記載されている4つの誤用例[1]-[4]のうち、[1]を以下に示します。

[1] We proceed in a similar way as described in Ref. 1.
リライト例(1): We proceed in a manner similar to that described in Ref. 1.
リライト例(1*): We follow a procedure similar to that described in Ref. 1.

[1]では、asをto thatに置き換えて”We proceed in a similar way to that described in Ref. 1.”にすることも可能ですが、similarとtoが分離しているために表現としてぎこちなく、similarが名詞を比較しているという役割が明らかではなくなる場合が多いと解説されています。この問題は、リライト例で解決されています。

以上の解説は、次の2つのルールにまとめることができます。
similarとセットにすることができる前置詞はtoしかない。
similar toは分離させるべきではない。

113.3 similar + [名詞] + toという構造が問題を生じさせる場合

上述の2つのルールのうち、「similar toは分離させるべきではない」に反した誤用例が8つ([1]-[8])紹介されており、そのうちの[1][2]を以下に示します。

[1] This is easily shown by the similar method to Eqs. (3.3)-(3.5).
リライト例(1): This is easily shown using a method similar to that applied to Eqs. (3.3)-(3.5).

[1]には、similarとtoが分離しているという問題以外に、少なくとも以下の3つの問題があると指摘されています。

・byの使用が望ましくない(Chapter 29参照)。
・”similar method”にtheを付けることで、”Eqs. (3.3)-(3.5)”に適用した方法に似たものが複数あることは不可能だ、という不適切な意味が含まれてしまう。
・”method”と”Eqs. (3.3)-(3.5)”という異種のものが比較されているため、文意が非論理的になっている。

[2] In a similar way to the calculation for (3.1), we obtain the following.
リライト例(2): With a calculation similar to that /used in deriving/which produced/yielding/ (3.1), we obtain the following.

[2]には、similarとtoが分離しているという問題以外に、wayに関して[1]と同様の問題があると指摘されています。すなわち、”similar way to the calculation”はwayがcalculationであることが含意されているものの、書き手の意図は、現在考えているcalculationのwayと、(3.1)の導出に利用したcalculationのwayが似ているという意味を表すことと思われ、誤用例[2]ではこの意味が示されていない、と解説されています。

113.4 その他の前置詞との誤った併用

113.2で扱ったas以外の前置詞で、similarとセットで使用した誤用例が記載されています。

[1] As is similar with most models describing fingering phenomena, there is some ambiguity in the velocity of propagation.
リライト例(1): As is the case with most models describing fingering phenomena, there is some ambiguity in the velocity of propagation.
[2] This behavior is similar between the two cases.
リライト例(2): This behavior is similar for the two cases.

リライト例(2)の”similar for”はセットになっている訳ではないことに注意が必要です(”For the two cases, this behavior is similar.”と書き換えることができるため)。

113.5 修飾に関する問題

形容詞であるsimilarが、名詞以外のものを修飾している誤用例が記載されています(2つの誤用例[1][2]のうち、[1]を以下に示します)。

[1] Similar to Ref. [2], we ignore the smallest of these terms.
リライト例(1): As in Ref. [2], we ignore the smallest of these terms.

[1]では、similar toがas inのような意味で副詞としてignoreを修飾しており、これは文法的な誤りです。

113.6 異種の物事が比較される場合

similarの役割は物事を比較することであり、その物事は同種でなくてはならないにもかかわらず、異種のものを比べてしまっている誤用例が記載されています(2つの誤用例[1]-[5]のうち、[1]を以下に示します)。

[1] This result is similar to the non-conserved case.
リライト例(1): This result is similar to that in the non-conserved case.

[1]で比較されているのは、resultとcaseであり、これらは明らかに種類が異なる物事です。

113.7 theとの誤った併用

similarで修飾されている名詞に冠詞theを付けることは意味的に間違っていることが、誤用例とともに解説されています(4つの誤用例[1]-[4]のうち、[1]を以下に示します)。

[1] In general, we can proceed the similar calculation up to nth order.
リライト例(1): In general, we can proceed with a similar calculation up to nth order.

[1]では、2つの計算が比較されていますが、theを使ったことによって、この2つの計算と似たもう1つの計算が存在することは不可能だ、という明らかに考えにくい意味が示されています。

また、theとは関係のない問題として、常に自動詞として用いられるproceedが他動詞として用いられている点が指摘されています。

 


※本記事は、著者の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)


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