プレジデント誌の英語勉強法に関する記事をご紹介します。「大前研一さん!難しいことはわかりませんが、世界に通じる英語の学び方教えて下さい!」(「非ネイティブのための英語勉強法」2020年4/3号)では、タイトル通り、大前研一氏が世界に通じる英語の学び方を解説しています。
大前氏は、まず日本の英語教育の問題点を指摘し、次に英語教育が成功している海外の事例を紹介し、最後にこれらを踏まえた世界に通じる英語の学び方(国際的なビジネスで結果を出すための英語の学び方)を解説しています。
以下、本記事の要点を挙げていきます。
英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能に分解するのは意味がない
現在、大学入学共通テストの英語について、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を測定する英語民間試験を導入することが検討されているといいます。
これについて大前氏は、そもそも言葉というのはコミュニケーションの道具であり、その道具をバラバラに分解して評価しても意味がないとして、上記提言に疑問を呈しています。つまり、しゃべることができれば書くこともできるようになるものであり、また書くことができる人はしゃべることもできなければならないとしています。
また大前氏は、英語民間試験の導入賛否を論じる以前に、日本が世界で最も英語教育がうまくいっていない国の一つであることを文科省は自戒しなければならないと述べています。
実際、TOEICやTOEFLなどの国際的な英語力検定で日本は常に最下位グループであり、TOEICでは韓国に150点以上も差をつけられているのが現状です(日本のTOEIC平均スコア520点(2018年))。
英語力を急速に伸ばした国の原動力は危機感と「英語で学ぶ」こと
日本が上記のような現状から抜け出すためのヒントとして、英語力の国際ランキングが日本よりも高い国々の取り組みが紹介されています。
これらの国に共通するのは、「英語力を高めなければ世界で食っていけない」という切羽詰まった危機感と、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学んで」いることです。
ドイツ(TOEIC平均スコア1位(798点、2018年))
ドイツは、教育行政ではなく企業の主導によって英語力向上に取り組んできたといいます。
きっかけになったこととして、ドイツ企業のアメリカにおけるM&Aの失敗が続いたことが挙げられています。象徴的なのが、1998年にドイツのダイムラー・ベンツがアメリカのクライスラーを買収した「世紀の大合併」といわれるできごとです。これにより「ダイムラー・クライスラー」が誕生しましたが、この新会社が結果的にうまくいかず、2007年にクライスラー部門が売却されました。
失敗要因の一つは、アメリカで英語でマネジメントできる人材が不足していたことであるとして、ドイツ企業では、英語でマネジメントできない人は部長以上にしないというポリシーが浸透していったそうです。
すると、英語ができなければせっかく大企業に入れても出世できないと焦った親世代が、目の色を変えて子供の英語教育に力を入れるようになったということです。
韓国(TOEIC平均スコア673点(2018年))
韓国は、近年国際的な英語力ランキングが急上昇しており、このきっかけになったのが、1997年にアジア通貨危機に見舞われたことだといわれています。IMF(国際通貨基金)の管理下に入った当時、金大中大統領は、「二度とこの"進駐軍"の占領という屈辱を受けないために、英語とインターネットの分野で我々は強くなって経済を世界化しなければならない」と国民に訴えたということです。
この檄が功を奏し、韓国の家庭と大学での英語熱が一気に高まります。名門大学では、世界で活躍できる人材の輩出を目指し、入試の英語レベルを格段に上げる、大学4年間で半年の海外留学を必須にする、英語だけで授業をする学部学科を設置する、などの取り組みが行われました。その効果は、TOEICスコアが世界でトップ10に入ったという結果に表れています。
その他の国々
ドイツと韓国以外の国々(フィンランド、スイス、台湾、インド、フィリピン、ベラルーシ、イスラエル)についても英語などへの国家を挙げた積極的な取り組みが紹介されており、ここでも「危機感」がキーワードになっています。
国際的なビジネスで結果を出すための英語の学び方
大前氏はは、「ビジネスで使う英語は結果を出してナンボ」であるとして、結果を出すための表現を知っておく必要があると述べています。そして、このような表現は座学や普通の英会話の勉強では身につきにくいため、次のような訓練が必要であるとしています。
実際のビジネスの現場で遭遇する状況を一つ一つ想定して、できるようになるまで対処法を繰り返し練習することだ。そうやって英語独特の多様な表現方法というものをカラダに覚え込ませるしかないのだ。結局ネイティブはそうやって生活の知恵を蓄積しているのだから。