米国特許を題材にした国際サスペンス小説『鷲の驕り』(服部真澄)

鷲の驕り: 国際知略サスペンス』(服部真澄著)は、米国特許を題材にした国際サスペンス小説です。

コンピュータ・セキュリティの専門家である日本人主人公が、通産省の諜報部門職員や日系自動車メーカーの技術者らと特命チームを組み、ある極秘プロジェクトに乗り出します。

そのプロジェクトとは、エジソンの再来と言われる米国人発明家エリス・クレイソンの素性を調査して(彼自身が本当は存在しないのではないかという噂を証明して)、日本企業が多額のライセンス料を払わされている彼の特許を無効化できるようにするというものです。

プロジェクトが進行すると、特命チームは、発明家クレイソンが「石」と呼ばれるある鉱物の生成方法に関する秘密特許に深く関わっていることを知り、この特許をめぐる米大手電機メーカーや国防総省、CIA、コンピュータ・ハッカー、イタリアンマフィアなどが関わる国際紛争に巻き込まれていきます。

特許制度・歴史についての解説や会話シーンが頻繁に出てくるため、ストーリーを楽しみながら特許への理解を深めることができるようになっています。例えば、秘密特許やサブマリン特許については、本書の解説でばっちりと理解できました。

特許制度や技術内容が1996年の刊行当時のものになっており、時代を感じる説明箇所も見られますが、ストーリーの面白さがそういった点をカバーしています。

特許関連書類がデータベース化されていなかった当時、秘密特許に関する出願書類が米国特許庁内のある部屋に厳重に保管されていたところ、これがまんまとイタリアンマフィアらによって盗まれるというシーンがあり、そんな手があったかと感心させられます。

本書は、日本人作家による作品でありながら、海外小説の良質な翻訳版を読んでいるような気分にさせられました。特許の勉強とエンターテイメントを同時に経験できる良書であると思います。

-書籍紹介

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