米国用特許クレームにおいて、wherein節で導入した説明に限定的効果(特許的ウェート)が認められるかについて、各種情報ソースの見解を紹介します。
MPEP
MPEP 2111.04I(https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2111.html)において、"wherein"や"adapted to"、 "adapted for"、 "whereby"などの表現が限定になるかどうかは、個別具体的に判断される(ケースによって限定と認められたり認められなかったりする)と解説されています。
The determination of whether each of these clauses is a limitation in a claim depends on the specific facts of the case.
("these clauses"は、"wherein"、"adapted to"、 "adapted for"、 "whereby"のこと。)
また、wherein節に限定的効果が認められた判例として、Griffin v. Bertina, 285 F.3d 1029, 1034, 62 USPQ2d 1431 (Fed. Cir. 2002)(https://casetext.com/case/griffin-v-bertina)が紹介されています。
Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting
Faber on Mechanics of Patent Claim Draftingでは、wherein節の限定的効果について、一般的に限定的効果が認められないwhereby節との比較で次のように解説されています。
“Wherein” is frequently used in a claim to describe some connection, relationship, result, etc. It should not be considered as a substitute for “whereby,” which is typically used to describe the result of something earlier recited in the claim.*
ここでは、whereby節は、それよりも前に述べられた構造から必然的に起こる機能や作用を表すためのみに使用されるところ(『"whereby"の使い方』)、wherein節をこのようなwhereby節の代替表現と考えるべきではないと述べられています。
そして、上記MPEPでも紹介されたGriffin v. Bertinaについて詳述されています(wherein節には複数ステップの必然的な結果が記載されているにすぎないという主張が退けられた)。
*: Faber, Robert C. "Chapter 3 Apparatus or Machine Claims", "Section 3:26 “Whereby” Clauses". Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting, 7th ed., Practising Law Institute, 2017.
Patent Practice
Patent Practice(Irving Kayton著)には、wherein節の限定的効果について明確に述べた箇所は見当たりませんが、wherein節には次のような役割りがあると解説されています。
...the term "wherein" is a signal that no element is being added but a previously recited element or interrelationship is being modified.*
("wherein"は、新たな要素の追加ではなく、既出要素や関係のさらなる説明であることを示す。)
*Kayton, Irving. Patent Practice, Vol.3, 8th ed. Patent Resources Institute, 2004, p.3.8
米国特許クレーム入門
『米国特許クレーム入門』(木梨貞男著)では、wherein節の限定的効果について次のように解説されています。
Wherein節はクレームの限定事項とみなされます。日本の「~において…を特徴とする」は,そのまま訳すと「characterized in that …」ですが,それ以前の部分(~においての「~」の部分)は先行技術として認めたものとみなされますので,それを避けるため,通常はwherein節にします。*
*木梨貞男. 米国特許クレーム入門. 財団法人発明協会, 2007, p.40.
Patent Terminology~特許用語解説~
Patent Terminology~特許用語解説~の第2回において、wherein節の限定的効果について少し扱っています。
「whereinとwhereby、so thatとsuch thatの使い分けについて」
https://www.youtube.com/watch?v=U3VX-hagG_c
ここでは、上記MPEP 2111.04Iを引用して、同様の解説(wherein節が限定になるかどうかは、個別具体的に判断される)を行っています。