グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語~per~

グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。※※

今回は、「per」(p.473-475)について見ていきます。

1.第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 98 ~per~

前置詞perには、よく見られる誤った用法が三種類あります(98.1~98.3)。

98.1 one、each、everyと誤って併用される場合

perは、to each、for each、for everyなどのような意味をもっているため、perにeach、everyまたはoneを付けると、意味的な問題が生じます。これについて、次のように解説されています。

perの用法についての誤解は、「・・・・・・に付き」、「・・・・・・当たり」などの表現が、perとは直接に対応しないことに起因すると思われる。後者が「一人に付き」、「一人当たり」のように用いられるのに対し、ここでの「一」の意味はper自体に含まれている。

そして、perの誤用例とリライト例が計4組紹介されています(そのうちの2組を以下に記載します)。

[1] There is thus an average of four new cells added per each time step.
リライト例(1): There is thus an average of four new cells added /per/every/each/in one/ time step.
[2] Until the critical time Tc, the linear density of the atypical variety is approximately one per 1 mm.
リライト例(2): Until the critical time Tc, the linear density of the atypical variety is approximately one per millimeter.

98.2 不可算名詞と誤って併用される場合

perの目的語は可算名詞でなければいけません。この場合の誤用例とリライト例が計2組紹介されており、以下に1組を記載します。

[1] The entropy per volume is S0.
リライト例(1): The entropy per unit volume is S0.
リライト例(1*): The entropy per volume element is S0.

98.3 perの目的語が誤って冠詞をとる場合

冠詞をperの目的語としてはいけないことについて、次のように解説されています。

形容詞eachとeveryと同様に、perは、ある集団を構成する全てのものを同時に(個別に)指すため、perの目的語は冠詞をとらない。

そして、この場合のperの誤用例とリライト例が紹介されています。

[1] During this operation, the energy of the combined system per /the/a/ sub-system is given by ε - ε0.
リライト例(1): During this operation, the energy of the combined system per sub-system is given by ε - ε0.

[1]では、"/the/a/"を使ったことにより、sub-systemは一つしかないということが含意されていると解説されています。


※本記事は、著者の許可を得て作成しています。
※※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。


2.『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)

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