「判定する」の「判定」は「判定結果」の先行詞とはならない


日本語明細書には、方法クレームなどにおいて「判定」という表現が使用されることがあります。今回は、「判定」にまつわる英語表現の注意点について見ていきます。

例えば、次のような日本語クレームがあるとします。

  コーヒーとエスプレッソのどちらが選択されたかを判定するステップと、
コーヒーが選択されたときに、判定結果をモニタの第1エリアに表示するステップと、
エスプレッソが選択されたときに、判定結果を前記モニタの第2エリアに表示するステップ
を有することを特徴とする方法。

このクレームでは、「判定」が1行目において「判定する」という動詞形で使用され、2、3行目において「判定結果」という名詞形で使用されています。つまり、「判定」が異なるステップにおいて異なる品詞で使用されています。両者とも同じ「判定」という漢字が使用されているため、同じものを意味すると見なされるのが一般的です。しかし、英訳の際は、「判定する」(determine)と「判定結果」(a determination result)が同じものと理解することを読み手に期待するよりも、両者の対応関係をより直接的に表現した方が好ましいといえます。

例えば、1行目の「判定する」を「判定を行う」と修正して「判定」を名詞化し、2、3行目の「判定結果」を「前記判定の結果」とすることにより、すべての「判定」が同じものであることを明確にすることが考えられます。

また、「判定」に関連した注意点として、2、3行目の「コーヒー(またはエスプレッソ)が選択されたときに」の英訳にも工夫が必要です。これをそのまま “when the coffee has been selected” と英訳すると、「表示」はコーヒーが選択された「時点」で行うのか、それともコーヒーが選択されてから多少時間が空いてから行ってもいいのかが曖昧になります。さらに、“when …” は時間を表すのではなく、コーヒーが選択された「場合」を意図している可能性もあり、読み手を混乱させます。このような事態を避けるために、原文を例えば「コーヒー(エスプレッソ)が選択されたことを前記判定の結果が示したときに」と捉え直すことによって「場合」であることを明確にし、これをもとに英文を作成することが考えられます。

ここまで検討したことを考慮して上記原文を修正すると、例えば次のようになります。

  コーヒーとエスプレッソのどちらが選択されたかの判定を行うステップと、
コーヒーが選択されたことを前記判定の結果が示したときに、前記判定の結果をモニタの第1エリアに表示するステップと、
エスプレッソが選択されたことを前記判定の結果が示したときに、前記判定の結果を前記モニタの第2エリアに表示するステップ
を有することを特徴とする方法。

これをもとに英訳した例が次の英文です。

  A method comprising:
performing a determination as to whether coffee or espresso has been selected;
when the determination shows that the coffee has been selected, displaying the determination in a first area of a monitor; and
when the determination shows that the espresso has been selected, displaying the determination in a second area of the monitor.

なお、「コーヒーが選択されたとき」の「とき」は一定の広がりのある時間帯や「場合」を表し、漢字の「時」は点としての時刻を表すことにより、「とき」と「時」を使い分けるという実務があります。

本コラムは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』から一部を抜粋したものです。


カテゴリ: コラム特許翻訳

コメントは受け付けていません。

PAGE TOP