コラム特許翻訳:「短文」化のためのアイデア①:「~しているため」をsinceを使わずに訳す

原文が長くても、訳文は短くしていい

日本語明細書は,1つの文章が非常に長いことで知られています。そして,これを英訳した文章も非常に長くなることが多く,審査官にとって日英翻訳は読みにくいという印象を与えています。以下は,米国特許庁の元審査官がこの問題について記した文章です。

Translators and writers are both guilty of using long sentences. When I see long sentences in a translation, I suspect that the original Japanese text employed long sentences. There is no reason that the English translator cannot use short sentences in the translation. Long sentences are difficult for translators to understand. Long sentences formed by the translator are difficult for the patent examiner and others to understand.※1
【参考日本語訳】
翻訳者及び日本語明細書作成者は,長文を用いないでいただきたい。翻訳文中の長文は,日本語で書かれた原文がそもそも長いと考えられます。しかし,英語翻訳者が短文を用いてはならないという理由はありません。日本語明細書作成者によって書かれた長文は,翻訳者にとって理解しづらいものです。同様に,翻訳者によって書かれた長文は,特許の審査官や他の関係者にとっても理解しづらいものです。

ここで提案されているように,日本語原文が長いからといって,英訳も長文にしなければならないという理由はないと思われるため,日本語の一文が長い場合,この一文を複数の短い英文に分けて英訳する,いわゆる「短文」化することが推奨されます。具体的にどのように「短文」化すべきかについて見ていきます。

「~しているため」をsinceを使わずに訳す

英訳が長くなる原因と思われる日本語表現の1つである「~しているため,…することができる」という表現を「短文」化して英訳する方法について考えます。一般的に,「~しているため」(ほかにも「~であるため」など)の訳としてsince(またはbecause)が使用されます(sinceとbecauseの違いについては後述)。

そして,日本語明細書では「~しているため」の「~」の部分が非常に長くなることがあり,これに伴って英訳であるsince以降の文章も長くなることがあります。以下にこのような例を挙げます。

この続きは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』にてお読みになれます。

 

 

-コラム特許翻訳, ジェームズ・バーロー/特許出願における英語翻訳文をより良いものにするために, 特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル

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