[見出しを丸括弧で囲う用法は英語にはない]
日本語の特許明細書では,次のように実施形態などの見出しを丸括弧で囲うのが一般的です。
(第1実施形態) 本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。 |
これに対して,英文明細書では括弧を使用しないのが一般的です。
First Embodiment The first embodiment will be described with reference to FIGs. 1 and 2. |
これは,英語では丸括弧を見出しにつけるという用法はないことからきていると思われます。丸括弧は英語でparenthesesやcurved (round) bracketsといい(開き括弧と閉じ括弧を合わせて複数形になっている),補足的な説明を加える際に使用されます(placed around extra information※1)。つまり,英語では比較的重要度の低い説明に対して丸括弧を使用するため,実施形態という重要なセクションの見出しに対して丸括弧を使用することは適切な用法ではないと思われます。したがって,筆者は見出しに括弧を使用しない,上記例のような形式を採用しています。なお,実施形態の見出しではなく,実施形態の文章中で補足的な説明をする際に丸括弧を使用することは,もちろん適切な用法です。
[角括弧[ ]を一切使用しない]
日本語の特許明細書では,丸括弧の他に,角括弧[ ]が主に見出しにおいて使用されることがあります。これに対して,英文明細書においては,角括弧(square brackets)を見出しや文章中にかかわらず一切使用しないことが推奨されます。これは,クレームや明細書本文を補正する際に,削除する箇所が5ワード以下の単語である場合などに,この削除箇所を示すために角括弧が使用されることがあるため(例:[[eroor]] ※2),このような補正箇所との混同を避けるためです。
[山括弧<>は不等号記号に似ている]
丸括弧と角括弧に加えて,山括弧<>も日本語の特許明細書で使用されることがあります。山括弧は英語でangle bracketsといい,数学の不等号記号と混同しやすいことから,括弧としては使用しないことが推奨されています。これに倣い,筆者は山括弧を使用しないようにしています。
Angle brackets, bars, and double bars often carry special mathematical significance and should not be used to supplement the usual series shown above.※3
※1 | “parenthesis”. Oxford Advanced Learner’s Dictionary of Current English. Oxford University Press, 9th ed., 2015, p.1118. |
※2 | M.P.E.P. §714IIB. |
※3 | The University of Chicago Press. The Chicago Manual of Style, 14th ed., 1993, p.442.(文中の “the usual series shown above” は,丸括弧や角括弧などの一般的に使われる括弧を示す) |
本コラムは、『特許翻訳者のための米国特許クレーム作成マニュアル』から一部を抜粋したものです。