グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語 ~about~


グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。

第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 2 ~about~

2.1 誤ってapproximatelyの意味を示すために使用される場合

2.1 は本Chapterのなかで特許翻訳に最も関係が深い節と思われます。2.1の冒頭には次のような解説があります。

物や現象を量的に比較したり、何か量や数値について述べたりする場合、「おおよそ」、「ほとんど」、「ほぼ」、「大体」、「約」などという意味を示すためには、一般にaboutよりapproximatelyを用いた方がふさわしい。なぜなら、aboutが示す意味は多様であるので、それを使うことによって表現が曖昧になりうるからである。以下の文はこのような問題を例示している。(p. 6)

この解説の後に、aboutを使用した問題のある例文とそれをリライトした例が記載されています。例えば、“These values are all about 2.0.”が“These values are all approximately equal to 2.0.”とリライトされています。これについて、「“these values”が2.0の両側に分布しているという意味にとることも可能」(p. 7)と解説されています。つまり、2.0が“these values”に含まれないと解釈される可能性があることに留意が必要です。

また、aboutには「~について」という意味もあることから、aboutを使用することにより「これらの値は2.0に関するものだ」(p. 7)と解釈される可能性があることも見落とされがちな点と思われます。

上記解説のように、aboutの代わりにapproximatelyを使用することが推奨されていますが、特許翻訳ではsubstantiallyも頻繁に使用されています。substantiallyとapproximatelyの違いについては、下記Q&Aフォーラムにおいて著者であるパケット氏自身によって解説されています。

Approximately と Substantially

2.2 題目、背景、範囲、対象などを指定する表現で誤用される場合

2.2では、学術的な文章において、aboutを「~について」といった意味で使用することは避けるべきと解説されており(例外あり、2.4参照)、そのような意味でaboutを用いた多くの誤用例をリライトした例が記載されています。

学術論文の場合、aboutを使うことが原因で、文意が不正確になったり、不適切に口語的な印象が与えられたりするため、避けるべきである。A is about Bのような表現は、deals with、treats、investigates、studiesなどを用いる表現とは異なり、AのBについての情報の与え方は計画的、系統的ではないという意味を表す。したがって、通常、このような表現は、対象が学術研究ではないという意味を表す。(p.9)

誤用例: Their paper is about the dynamics of phase separation in homopolymer systems.
リライト例: Their paper investigates/studies/treats/concerns/ the dynamics of phase separation in homopolymer systems. (p.8)

2.3 care aboutという表現

2.3では、care aboutという表現は学術的な文書にはふさわしくないと解説されており、not care aboutを使用した誤用例をignore、not consider、irrelevantなどを使用してリライトした例が記載されています。

誤用例: We do not care about such complicated systems in this study.
リライト例1: We do not consider such complicated systems in this study.
リライト例2: Such complicated systems are beyond the scope of this study. (p.10)

2.4 informationやそれに類似した語と正しく併用される場合

2.4では、aboutを「~について」の意味で使用すべきでないという2.2の原則の例外として、information、details、knowledgeはaboutと組み合わせて使用しても不自然ではないと解説されており、具体例がいくつか記載されています。

aboutの適切な使用例の1つ:
These experiments provide information about the long-range interaction.

より詳しくは、以下を参照。
グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語 ~information~
http://beikokupat.com/blog1/paquette-ipenglish/14412/

(※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。)

『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)


コメントは受け付けていません。

PAGE TOP