グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』から学ぶ特許英語 ~information~


グレン・パケット著『科学論文の英語用法百科』を題材に、特許翻訳における適切な英語表現について考えていきます。

第1編 よく誤用される単語と表現 Chapter 68 ~information~

68.1 前置詞ofまたは所有形容詞との併用

68.1.1 正しい用法
–information ofの正しい用法–

information ofという表現には4種類の正しい用法があり、それぞれの用法により書かれた文章が例示されています。

(1) Information of their results was requested.
(2) These data are provided for the information of the reader in Appendix A.
(3) We have information of a volcanic eruption off the coast of northern Russia.
(4) The information of this configuration is a strictly increasing function of ρ.

(1) Information of their results was requested.
ここでのinformationは、act of informingまたはcommunicationのような意味を示していると解説されています。

(2) These data are provided for the information of the reader in Appendix A.
ここでのinformation ofは、(1)と類似しているものの、(1)ではofの目的語が伝わった情報であるのに対し、(2)では情報を受け取る人である点で異なっていると解説されています。また、(2)ではfor the informationがto supplement the knowledgeと同義であるとされています。

(3) We have information of a volcanic eruption off the coast of northern Russia.
ここでのinformationは、knowledgeと同義であるとされています。

(4) The information of this configuration is a strictly increasing function of ρ.
ここでのinformation ofのofは所有という関係を示しており、information ofはinformation possessed byおよびinformation contained inと同意であると解説されています。

–informationと所有形容詞との正しい併用–

(1) Information of their results was requested.
(2) These data are provided for the information of the reader in Appendix A.
(3) We have information of a volcanic eruption off the coast of northern Russia.
(4) The information of this configuration is a strictly increasing function of ρ.

(2)、(4)のofは所有という関係を示しており、それぞれ次のように所有形容詞を用いて書き換えることができるということです。

(2′) These data are provided for the reader’s information in Appendix A.
(4′) The configuration’s information is a strictly increasing function of ρ.

一方、(1)、(3)のofは所有という関係を示していないため、所有形容詞を用いて書き換えることはできない((1)、(3)のofはそれぞれregardingとconcerningに近い意味を表している)と解説されています。

68.1.2 誤った用法
–informationの誤った用法–

information ofの誤用について、次のように解説されており、下記[5]を含むいくつかの誤用例が記載されています。

上で手短に述べたように、ある物事や事件について持っている知識が、単にそれが「存在する」、または「起こった」というよりも詳しい場合には、その知識を描写するためにinformation of…のような表現を使うのは不適切である。(p.390-340)

誤用例[5] These distribution functions contain information of quark-gluon correlations inside the nucleon.
リライト例(5) These distribution functions contain information about quark-gluon correlations inside the nucleon.

そして、ofに変わり得る表現として以下の表現があり、これらが示す関係は近さや直接さについて差があると解説されています。

about
regarding
with respect to
concerning
pertaining to
with respect to
in reference to
in relation to
relating to
in connection /to/with/
pertinent to
relevant to

–「informationが所有されている」という意味を示す表現の誤用–

「informationが所有されている」という表現(「information of」や「所有形容詞+information」)について、次のように解説されており、[8]を含む誤用例が記載されています。

英語においては、ある情報が何か物や現象の性質、ふるまい、状態などを明らかにするというような様子を描写する目的で、その物や現象がその情報を「所有している」という意味を示す表現は不適切である。(p.341)

誤用例[8] The constellation’s information has been gathered for more than ten years.
リライト例(8) Information regarding the constellation has been gathered for more than ten years.

この誤用例は、constellationについての情報ではなく、constellationが含んでいる情報を述べているように思われ、この場合のconstellationとinformationの関係はちょうど、時計とそれが持っている情報との関係に似ていると解説されています(しかし、[8]の書き手が本当に意図しているのは「constellationについての情報」と思われます)。

68.2 複数形

informationは、ほとんどの用法において不可算名詞であるため、複数形になることも不定冠詞anが付くこともありえない、と解説されており、[2]と[3]を含む誤用例が記載されています。

誤用例[2] Let us add to this formula an extra information regarding the internal interaction.
リライト例(2) Let us add to this formula an extra piece of information regarding the internal interaction.
リライト例(2*) Let us add to this formula extra information regarding the internal interaction.

リライト例(2)のように、informationを可算的な意味で使用したい場合は、piece of informationという表現が便利であると解説されています(複数形はpieces of information)。

誤用例[3] We need to study a wide variety of processes to extract a complete set of information.
リライト例(3) We need to study a wide variety of processes to extract a complete set of data.
リライト例(3*) We need to study a wide variety of processes to extract complete information.
リライト例(3**) We need to study a wide variety of processes to extract a set of values representing complete information.

誤用例[3]のように、ある不可算名詞に当たる物事の集まりを「set」と呼ぶことはできないと解説されています。

68.3 knowとの誤った併用

名詞informationは、動詞knowの直接目的語になることはできず、また分詞knownに修飾されることも意味的に不可能である、と解説されています。

誤用例[2] However, these results are all previously known information.
リライト例(2) However, these results are not new.
リライト例(2*) However, these results /contain/represent/provide/ no new information.
リライト例(2**) However, the information provided by these results is not new.
リライト例(2***) However, these results constitute previously existing information.

(※本記事は、判例(英文法だけでなく特許明細書の記載内容など様々な証拠を考慮して判断される)とは相容れない部分がある可能性があります。本記事は、純粋に英文法の側面から見た適切な英語表現を考えていくことを目的としています。)

『科学論文の英語用法百科』について

学術論文における英作文についての解説書シリーズ。現在、「第1編 よく誤用される単語と表現」と「第2編 冠詞用法」が出版されている。

筆者は、9年間にわたって、日本人学者によって書かれた約2,000本の理工学系論文を校閲してきた。その間、「日本人の書く英語」に慣れていく中で、日本人特有の誤りが何度も論文中に繰り返されることに気付いた。誤りの頻度は、その英語についての誤解がかなり広く(場合によってほぼ普遍的に)日本人の間に浸透していることを反映しているだろう。そのような根深く定着している誤りに焦点を当て、誤りの根底にある英語についての誤解をさぐり、解説することがシリーズの基本的な方針になっている。(第1編「序文」より)

第1編 よく誤用される単語と表現

シリーズの第一巻となる本書では、日本人にとって使い方が特に理解しにくい単語や表現を扱っている。

第2編 冠詞用法

冠詞についての誤解が原因となる日本人学者の論文に見られる誤りの多さ、またその誤りに起因する意味上の問題の深刻さがゆえに、当科学英語シリーズにおいて冠詞が優先度の高いテーマとなり、この本を第二編とすることにした。(p.1)


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