日本語明細書には、「~側」という表現が頻出します。「~側」という表現を英訳する際に、"side"という表現がよく使われますが、一方で「~側」に"side"を使うと誤解を招く可能性があるため注意が必要といわれています。
例えば、「Aは、Bの後側に配置されている。」という文章を、"side"を使って"A is positioned on the rear side of B."と訳したとします(または、"A is positioned at the rear side of B.")。この英文では、(1)AがBの後側に配置されているという文字通りの解釈と、(2)AがBの後側の縁周辺にあるという解釈が可能であるように思われます。
どちらの解釈かを明確にする必要がある場合は、(1)の場合は"A is positioned posterior to (behind) B."などとし、(2)の場合は"A is positioned at a rear (back) part of B."などとすることによって、"side"を使わずに表現することが考えられます。
「後側」の他にも、「前側」「上側」「下側」「右側」「左側」「上流側」「下流側」などについても「後側」と同様の考察が当てはまります。
「前側」における(1)(文字通りの解釈)の場合は、"in front of"や"ahead of"などの表現を使うことが考えられます。
「上側」「下側」における(1)の場合は、それぞれ"above"(や"over")、"below"(や"under")などが考えられます。
「右側」「左側」における(1)の場合は、それぞれ"to the right of"、"to the left of"などが考えられます。
「上流側」「下流側」における(1)の場合は、それぞれ"upstream from"(や"upstream relative to"、"further upstream than")、"downstream from"(や"downstream relative to"、"further downstream than")などが考えられます。
これらの位置関係を表現するにあたり、特にクレームにおいては、AとBが離れているのか、それとも接触しているのか、あるいは両方の構成を含めるようにしておきたいのかを考慮した翻訳が必要と思われます。