特許英語を話そう!Episode 1:優先権ってそんなに重要なんですか?

Episode 1: Is Priority Really That Important?

シーン紹介

東西電機工業株式会社(Tozai Electric Works Co., Ltd.) は、東京都品川区に本社を構える電子部品メーカー。知的財産部では、国内外の出願対応や戦略的ポートフォリオ管理に日々取り組んでいます。

今回の舞台は、知的財産部の会議室。

新製品に関する米国出願を控え、出願書類の確認が進められる中、若手社員の田中が「優先権(priority)」について質問します。

経験豊富な佐藤がその質問に答えつつ、日本弁理士の山本雅子氏と米国弁護士のマイケル・リード氏もリモートで議論に加わります。

登場人物

  • 佐藤 正樹(東西電機工業 知的財産部) - 国内外出願の実務経験が豊富。
  • 田中 結衣(東西電機工業 知的財産部) - 入社3年目。特許実務を勉強中。
  • 山本 雅子(日本弁理士、山本国際特許事務所) - 国内外出願を多数扱う。説明が丁寧。
  • Michael Reed(米国特許弁護士、Reed & Holt LLP) - バージニア州の知財法律事務所所属。

優先権(priority)とは?

優先権(priority)とは、ある特許出願が、先に出願された別の出願とつながっていて、
その別の出願の出願日(優先日)を出願日として扱ってもらうことができる権利です。

この優先日を使えば、それ以降に公開された技術(先行技術)を回避できるため、
特許性(新規性・進歩性)を確保するうえで極めて重要です。

例:

  • 2025年1月1日:日本に特許出願(出願A)
  • 2025年12月30日:米国に特許出願(出願B)、出願Aの優先権を主張
  • → 出願Bは「2025年1月1日出願」として扱われる
  • → たとえば、2025年7月に似た技術が公開されていたとしても、優先権を使えば2025年1月1日に出願したと見なされるため、その似た技術は先行技術とされない

実践ダイアログ:優先権ってそんなに重要なんですか?(Is Priority Really That Important?)

[場所:東西電機工業 本社 知的財産部 会議室]

Tanaka:
Mr. Sato, I have a quick question. I saw in the draft that we’re claiming priority from the Japanese application filed on January 1, 2025. Is priority really that important?
(佐藤さん、少しお聞きしてもいいですか? ドラフトに、2025年1月1日の日本出願から優先権を主張するとありましたけど、優先権ってそんなに重要なんでしょうか?)

Sato:
Yes, very. By claiming priority, we’re basically saying, “We want the U.S. application to be treated as if it was filed on January 1, 2025.”
(はい、とても重要です。優先権を主張するということは、「この米国出願は、1月1日に出願されたものとして扱ってください」と伝えているのと同じなんです。)

Tanaka:
So... even though we’re filing in December?
(でも、出願自体は12月ですよね?)

Sato:
Exactly. Let’s say a similar technology was published in July, 2025. Without priority, that publication could be used against us. But with priority, we go back in time to January 1, 2025 — before that publication.
(その通りです。たとえば、2025年7月に類似する技術が公開されていた場合、優先権を主張していなければ、その公開が私たちに不利に働く可能性があります。しかし、優先権を主張していれば、出願日は2025年1月1日にさかのぼって扱われるため、その公開より前に出願されたことになります。)

Yamamoto:
And as long as the Japanese application properly supports the invention, the priority claim should be valid.
(そして、日本出願で発明がきちんと開示されていれば、優先権は有効です。)

Reed:
Right. From the U.S. side, as long as we file within twelve months and provide a certified copy and English translation, the USPTO will recognize the priority claim.
(そうですね。アメリカ側としては、12か月以内に出願し、日本出願の認証写しとその英訳を提出すれば、USPTOが優先権の主張を認めてくれます。)

Tanaka:
I see. So, claiming priority protects us from later prior art?
(なるほど。優先権を主張すると、あとから出てきた先行技術に対抗できるんですね。)

Sato:
Exactly. It’s one of the key strategies in international filings.
(その通りです。国際的な出願では、優先権を活用することが重要な戦略の一つなんです。)

語注・重要表現

  • claim priority: 優先権を主張する(priorityは無冠詞で使われることが多い)
  • be treated as if it was filed on: ~に出願されたものとして扱われる
  • go back in time: 時間を過去にさかのぼる
  • support the invention: 出願が発明を十分に記載していること
  • file within twelve months: 先の出願から12か月以内に次の出願を行うこと。日本のようなパリ条約加盟国で最初に出願した場合、他のパリ条約加盟国に対してその出願日を優先日として主張するには、12か月以内に出願する必要がある

実践ダイアログの英語音声


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