特許英語を話そう!Episode 2:Office Actionに書かれた「102条/103条」って何?

Episode 2: What’s This Office Action Saying?

シーン紹介

東西電機工業株式会社の知的財産部。
米国出願に対するOffice Action(拒絶理由通知)が届き、若手社員の田中が初めてそれを読む場面。
通知書には「the claims are rejected under 35 U.S.C. §102」や「under §103」といった記載があり、田中はその法的な表現にピンとこない様子。
知財部の佐藤が基礎から丁寧に解説し、リモートで参加する山本弁理士とリード米国弁護士も補足を加えます。

登場人物

  • 佐藤 正樹(東西電機 知的財産部) - 国内外出願の実務経験が豊富。
  • 田中 結衣(東西電機 知的財産部) - 入社3年目。特許実務を勉強中。
  • 山本 雅子(日本弁理士、山本国際特許事務所) - 国内外出願を多数扱う。
  • Michael Reed(米国特許弁護士、Reed & Holt LLP) - バージニア州の知財法律事務所所属。

Office Actionとは?

Office Action(OA)とは、米国特許商標庁(USPTO)から出願人に送付される通知書で、審査官の審査結果が記載されており、多くの場合、拒絶理由が含まれています。拒絶理由が含まれていることが多いことから、OAを拒絶理由通知と呼ぶことがあります。

OAには大きく分けて次の2種類があります:

  • Non-final Office Action:最初の拒絶理由通知。応答によって補正や主張が可能。
  • Final Office Action:審査官の意見が固まった通知。応答の選択肢が限られる。

拒絶理由としては、以下のような法的根拠が典型です:

  • 35 U.S.C. §102(新規性の欠如):発明の内容がすでに1つの先行文献に開示されている場合に適用されます。審査官は、発明が「すでに存在している」と判断しています。
  • 35 U.S.C. §103(進歩性の欠如):複数の先行文献を組み合わせれば、その発明に容易に到達できたと審査官が判断した場合に適用されます。組み合わせる合理性(動機付け)も問われます。

実践ダイアログ

[場所:東西電機工業 本社 知的財産部 会議室]

Tanaka:
I received the Office Action for our U.S. application, but I’m not sure what it means. It says "the claims are rejected under 35 U.S.C. §102".
(米国出願の拒絶理由通知を受け取ったのですが、クレームが「102条で拒絶」と書いてあって、意味がよくわかりません。)

Sato:
Ah, that’s a common one. Section 102 refers to lack of novelty. It means the Examiner thinks your invention is already disclosed in a single prior art reference.
(よくある拒絶ですね。102条は「新規性がない」という理由です。審査官は、あなたの発明が1つの文献にすでに記載されていると考えているということです。)

Tanaka:
I see. There’s also a rejection under 103. What’s the difference?
(なるほど。あと、103条でも拒絶されているようですが、それはどう違うんですか?)

Sato:
Section 103 is about obviousness. It means the Examiner believes your invention could have been easily figured out by combining multiple prior art references.
(103条は「進歩性がない」、つまり、あなたの発明は複数の文献を組み合わせれば容易に考えつくことができたと審査官が判断した場合に使われます。)

Yamamoto:
Exactly. So, for 102, one reference is enough. For 103, it's usually a combination of two or more.
(その通りです。102条の拒絶は1つの文献だけで足りますが、103条では通常2つ以上の文献の組み合わせが必要です。)

Reed:
Also, keep in mind that for a 103 rejection, the Examiner must explain why a skilled person would be motivated to combine the references.
(それから、103条の拒絶では、審査官が「当業者がなぜその文献を組み合わせようと考えたのか」を説明しなければなりません。)

Tanaka:
That makes sense. I’ll take a closer look at the cited references.
(なるほど。引用された文献をもう一度よく見てみます。)

語注・重要表現

  • Office Action:審査官からの拒絶理由通知
  • Section 102 / §102:米国特許法第102条。新規性欠如による拒絶
  • Section 103 / §103:米国特許法第103条。進歩性欠如(obviousness)による拒絶
  • prior art reference:先行技術文献
  • lack of novelty:新規性の欠如
  • obviousness:進歩性がないこと
  • skilled person:a person having ordinary skill in the art (PHOSITA) の略称的表現。日本語では「当業者(とうぎょうしゃ)」と訳される
    ある技術分野において、平均的な知識と経験を持つ仮想的な技術者を指す
    進歩性(obviousness)の判断において、「当業者であればその発明を容易に思いつくか」が検討される
  • motivated to combine:組み合わせる動機がある(103条拒絶で重要)

実践ダイアログの英語音声


本コンテンツの登場人物・企業・団体・会話内容等はすべて架空のものであり、実在の人物・企業・団体等とは一切関係ありません。
本コンテンツは、特許実務や英語表現の学習を目的として構成されたものであり、実際の特許手続き等に関する判断は、必ず専門の弁理士・弁護士などの助言を受けてください。
無断転載、複製、改変、再配布等を禁じます。


-特許英語を話そう!~会話で身につける実務表現~

© BPT - Beikoku Patent Translation